米各州が制定した人工知能(AI)規制法を、10年間停止する連邦政府案が提出され、議論を呼んでいる。制定に対して、それぞれの関係者がどのような考えを抱いているのかを紹介する。
さまざまな国や地域が人工知能(AI)技術の規制の制定を進める中、米国では州単位でのAI規制法を制定する動きが活発化している。一方で米政府は、州議会によるAI規制を10年間禁止する法案が成立するかどうかの瀬戸際にある。法案に関する動向と、その是非を整理する。
米国では、コロラド州やカリフォルニア州をはじめとした一部の州が、独自のAI規制法を制定している。一方、米大統領ドナルド・トランプ氏は、AI技術の安全性に関する大統領令「14110」を撤回するなど、AI技術規制の緩和を進めてきた。同大統領を中心とする共和党は、米国の州や自治体によるAI規制の立案と制定を10年間禁止する条項を含む法案「One Big Beautiful Bill」を下院に提出した。2025年5月22日(現地時間)、法案は可決された。
米国のAIベンダーは、欧州連合(EU)の「AI法」(Artificial Intelligence Act)をはじめとした海外のAI規制に加えて、州ごとのAI規制を順守する必要がある。2025年5月、米下院エネルギー、商業委員会の商業、製造、貿易小委員会の公聴会で、共和党の下院議員、デビッド・ジョイス氏は、AIベンダーが置かれた状態について「米国の世界的なリーダーシップを危うくする可能性がある」と指摘した。
ジョイス氏によると、米国では複数のAI関連法案が提出されている。その定義や要件、執行手段、適用範囲は各法案によって異なり、企業に混乱を生んでいるという。2025年1~5月の間に1000件を超えるAI関連法案が提出されたという報告が存在する。
ただし、ジョイス議員は「AI技術に関する規制が不要だと主張しているわけではない」と強調した。その上で、「商業、製造、貿易小委員会は、AI技術の成長を阻害することなく、明確で一貫性を持つ国家的な枠組みを構築することに焦点を当てている」と小委員会の意義を評価した。
ジョイス氏は、2025年5月に成立した、本人の同意なく公開された性的な画像の削除を企業に義務付ける「TAKE IT DOWN法」を例に挙げた。この法律は、既存の法律の問題を補うために、特定の被害に的を絞った法律の好例だ」と述べた。
一方、民主党はAI規制を10年間禁止する法案を、「大手AIベンダーにおもねるもの」だという理由で反対する姿勢を見せている。民主党下院議員のロリー・トレーハン氏は、AI規制を10年間禁止する法案の制定に強く反対した。同氏は、「州ごとにAI規制法が乱立することは、イノベーションやビジネス、消費者にとって望ましくない」と一定の理解を示しつつ、次のように批判した。「共和党は、米国民のプライバシーを守るという議会の義務を、深刻な問題を起こしている当の企業に委ねるようなものだ」
米国商工会議所のシニアバイスプレジデント、ショーン・ヘザー氏は、「EUのような予防的な姿勢に追随するのではなく、AI技術がもたらす機会に目を向けるべきだ」と証言した。
ヘザー氏は、「欧州は過度な規制によって、主要なデジタル分野の成長が遅れている」と指摘した。続けて、「EUのAI法は米国の大手AIベンダーを標的にしており、同様の動きを他国や米国の州で許してはならない」と述べた。
一方、信頼できるAI技術の構築に関する枠組みを提供する研究機関、AI Now Instituteの共同事務局長アンバ・カク氏は、米連邦議会を「10年以上にわたって、大手AIベンダーの規制に失敗し続けてきた」と批判した。AI技術を用いて事実とは異なる映像や音声、写真を合成する「ディープフェイク」といった、TAKE IT DOWN法の対象分野については、「連邦議会よりも州議会が先行して対処に動いてきた」と指摘した。
カク氏は、「雇用、医療、教育といった分野において、AI技術の影響を受ける個人に説明責任を求める州法は、米国の消費者に機動的な保護を提供している」と言い添えた。
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