2009年08月06日 08時00分 UPDATE
特集/連載

中小企業のインフラ導入の切り札 ホスティング利用ガイド【前編】簡単なようで意外と難しい、ホスティングサービスの選び方

ホスティングサービスは中堅・中小企業の重要なITインフラであることは言うまでもない。自社のニーズに合致し、かつ費用対効果に優れたサービスを確実に選ぶには?

[池田冬彦]

 専任のシステム管理者や情報システム部門を持つことが厳しい中堅・中小企業にとって、ホスティングサービスを利用してメールサーバやWebサーバをアウトソーシングすることは、もはや常識といえるだろう。

 しかし、一口にホスティングサービスといっても、サービス内容や料金は千差万別であり、自社にぴったりなサービスを探すのは意外と難しいものだ。現在、ホスティングサービスを契約している企業も、今利用しているサービスがベストなものかどうかを検討する価値はある。今回は、ホスティングサービス選びの基本的なトピックスから見ていくことにしよう。

コロケーションとどう違う?

 ホスティングサービスとは、事業者のデータセンター内にサーバマシンを設置し、所定の月額料金、または年額料金でハードウェア/ソフトウェアリソースのレンタルを行うサービスのことである。コロケーションサービスとの大きな違いは、単にデータセンター内にサーバを設置する「場所」を提供したりサーバ機器をレンタルするだけではなく、データのバックアップやOSのメンテナンス、ハードウェアの死活管理など、サーバの管理も事業者が行う「マネージドサービス」として提供されていることだ。

 ホスティングサービスは、1契約者に1台のサーバを割り当てる「専用サーバ」サービスと、1台のサーバに複数の契約者を割り当てる「共用サーバ」サービスの2つに分けられる。専用サーバは比較的アクセス数の多いECサイトを構築したり、自社内のサーバルームで運用していたファイルサーバやメールサーバなどを丸ごとアウトソーシングする場合などに利用される。しかし、メールの利用が主で、Webサーバへの負荷もさほど大きなものでなければ、共用サーバで十分だろう。

 共用サーバプランにするか専用サーバプランにするかは、Webサーバのページビュー(PV)数やWeb、メールの月間データ転送量、サーバの主たる用途などに応じて決定する。とはいえ、専用サーバと共用サーバとの料金差は大きい。そこで、最初は共用サーバプランで様子を見て、運用が厳しいようであればプランを変更するという手もある。あらかじめよく相談した上で決定すべきだろう。なお、専用サーバには、比較的手軽に利用できる「VPS(仮想専用サーバ)」と、1台のサーバを自由に使える「専用サーバ」の2つがある。

図1 共用サーバ、VPS、専用サーバの違い。VPSはメールやWebサーバ領域、アドオンソフトやWebアプリケーションの領域を仮想的に独立させて運用するため、共用サーバよりパフォーマンスが高く安定したシステム稼働ができる

どのクラスのサービスを選ぶかを見積もる

 実際、ホスティングサービスの種類は、月額数百円程度の低価格なものから中堅・中小企業向け、さらにはエンタープライズ向けのサービスまでさまざまであり、どのサービスが最適なのかを判断し、コストパフォーマンスの高いサービスを的確に選ぶことは至難の業だ。かといって、オーバースペックなサービスを選んでしまうと月額コストが無駄に発生するし、逆に予算をケチり過ぎてスペックが足りないと業務に支障が出てしまう恐れがある。

 サービスを選ぶ際に最低限必要なことは、「どの程度のパフォーマンスを必要とするのか」を見積もることである。具体的には、

  1. 使用ディスク容量
  2. 月間データ転送量

の概算がサイト規模となる。1の使用ディスク容量は、社員1人当たりのメールボックスのサイズ×アカウント数と、Webコンテンツを保存するのに必要なディスクサイズ(+α)の合計である。また、2はメールサーバを介してやりとりしたメールの送受信量と、Webへのアクセスにおけるデータ送受信量の合計値だ。

 例えば、社員数が20人、必要なのは10数ページほどの情報系のWebページとブログといった小規模なオフィスの場合、社員1人当たりのメールボックスを100Mバイトに設定しても、3Gバイトもあれば足りてしまうだろう。

 また、データ転送量はメールの利用頻度、Webサイトの規模やPVなどで決まってくるが、平均して1日400〜600PV程度のアクセスであれば、月間の転送量は数Gバイトで済むはずだ。この程度なら、個人向けの安価なサービスでも十分運用できる規模といえる。

 逆に、社員数が100人の企業の場合を考えてみよう。自社Webサイトへのアクセスが1日1000PV程度であればデータ転送量はさほど多くないようにも思えるが、添付ファイルを含むメール数が多い場合にはそれなりのデータ転送量となってしまい、必要なディスクサイズも増える。メールボックスに必要なディスクサイズは1人当たり50Mバイトとしても5Gバイト以上は必要であり、月間転送量も数十Gバイトクラスになることが予想される。このクラスは、共用サーバプランではやや厳しい。VPSが現実的なクラスであり、条件によっては専用サーバプランも選択肢に入ってくるはずだ。

 このように、ホスティングのシステム規模を見積もり、十分なディスク容量とパフォーマンスを発揮できるサービスを選ぶことが必要だ。もちろん、社員数が少なくてもECサイトをメインに運用する場合はサイト規模は大きくなる。逆に社員数が多くても、Webへのアクセス数やメール通数が少ない場合などは、より小さな規模で運用できることもある。

 なお、月間のデータ転送量に応じて課金を行っているサービスもあり、設定した値を上回ると追加料金を取られることもあるので注意したい。もし、どの程度の規模がいいのか分からない場合は、事業者に相談してコンサルティングを受けるのも手だ。一般的な事業者では、共用/VPS/専用サーバのそれぞれに、規模に応じた2、3種類のグレードを用意しているケースが多い。

 利用の状況にもよるが、おおむねWebサーバの月間転送量が40Gバイトを超える、あるいはメールアカウント数が200を超えるような規模の場合は、共用サーバプランでは厳しいといえる。VPS/専用サーバプランか専用サーバプランが現実的な選択となるだろう。

NTTコミュニケーションズの「OCNホスティング」サービスにおける「VPS/仮想サーバ(メール&ウェブPro2)」および「専用サーバ(Privateサーバ)」の各サービス/プランを選ぶ際の推奨値。他事業者でも同様に、プランを選ぶ際の推奨値を設定しているところが多い
プランの種類 メール&ウェブPro2(VPS) Privateサーバ(専用サーバ)
L1プラン L2プラン L3プラン
Webサイトの瞬間的な処理能力(※1) 200PV/分まで 400PV/分まで 800PV/分まで 1600PV/分まで
HP、メールのデータ転送量 40Gバイト/月 80Gバイト/月 160Gバイト/月 320Gバイト/月
メールアドレス数(※2) 300アドレスまで 500アドレスまで 1000アドレスまで 3000アドレスまで
メール送信数(※3) 150通/分まで 200通/分まで 250通/分まで 450通/分まで
(※1)1ページが10Kバイト×10ファイルの場合。HTTPSの場合のPV数は3分の1〜5分の1に低下
(※2)利用形態や頻度によって利用できる数が異なる。OCNホスティングサービスの実績で見た平均的な値で試算
(※3)100Kバイトのメールの場合。実際に送信可能な数値については利用状況により異なる

サービス内容をしっかりとチェックする

 ホスティングサービスの基本機能としては、メールサーバとWebサーバの2つが大きな柱だ。メールサーバについては、最近のほとんどのサービスではPOP/IMAPの双方に対応しており、Webメールにも対応しているものも多い。このあたりは、あまり気にする必要はないだろう。

 ただし、ウイルスメール対策機能やスパムフィルタについては、十分にチェックすべきだろう。特にスパムフィルタは、大手セキュリティベンダー製品を使っているサービスから、OSSベースのフリーウェアを入れているだけというサービスまでピンキリである。スパムフィルタ機能が弱いとスパムが十分にフィルタリングされず、ユーザーのメールクライアント側で対応する必要があるので厄介だ。できれば事前に具体的にどのようなツールを使っているのかを確認するといい。

 また、SSLを利用する予定がある場合は注意が必要だ。SSLを利用するには公的認証局が発行した「サーバ証明書」が必要だが、低価格なプランでは、事業者が取得した「共用のサーバ証明書」しか利用できない場合がある。この証明書は、ほかのユーザーと共用するため、データの暗号化はできるが自社のドメイン名の実在証明としては利用できない。

 すなわち、証明書のドメイン名と自社ドメイン名が異なるため、Webアクセスしたときに「接続の安全性が確認できない」といった証明書エラーが表示されてしまうため、ユーザーに再アクセスしてもらえない可能性がある。SSL暗号化メールを利用するなど、単にデータを暗号化したい場合は有効だが、入力フォームの利用やECサイトなどの構築は、必ず自前のサーバ証明書が利用できるサービスを選ぶ必要がある。

図2 共用サービスは、全ユーザー共通のサーバ証明書しか利用できない場合もある。共用のサーバ証明書ではサイト訪問者のWebブラウザにこのようなエラーが表示される

 このほか、ブログやコミュニティーサイトの開設も検討しているなら、「Movable Type」や「WordPress」、コミュニティーサイトを構築するための「XOOPS」といったCMSに対応した環境が必要だ。具体的には、PerlやPython、PHP4/5といった、動的にHTMLデータを生成するためのスクリプト言語環境のほか、データベースソフトであるMySQLPostgreSQLが利用できるかどうか、また利用可能なデータベース数も要チェックである。

 さらには、コマースサイトを立ち上げるのであれば「EC-CUBE」や「osCommerce」「Zen Cart」といったECサイト構築システムに対応している必要がある。当初から一定の規模のECサイトを構築する予定があるのなら、これらのシステムが事前にインストールされたサービスを選ぶのが手っ取り早いだろう。

サービス品質やSLAの対応、サポート力も評価対象

 ある程度サービスが絞り込めてきたら、その事業者のサービスの品質もチェックしよう。小規模かつ低価格な個人向けサービスの場合は、SLA(サービス品質保証制度)を定めていないものがほとんどだが、さすがにメールサーバに障害が発生すると業務そのものが止まってしまう可能性がある。

 このあたりの品質を正確に判断することは難しいが、少なくともビジネスユースであれば、何らかの形でSLAを定めたものを選びたいところだ。また、採用候補とする事業者のWebサイトを巡回して、障害の発生状況やFAQの充実度などもしっかりとチェックしたい。

図3 採用候補のサービスが見つかったら、カスタマーサポートなどのページを入念にチェック。具体的なサポート内容やQ&A情報、技術情報の充実度などもチェックしておく。画面はラピッドサイトの例《クリックで拡大》

 また、サーバの環境設定などができる社員がいない企業では、サポート体制も要チェックだ。サービスによってはメールでのサポートのみというところもあるが、これではトラブルが発生した場合、迅速に問題が解決できない恐れがある。かならず電話での対応窓口を設けているサービスを選んでおこう。

 後編では、代表的なホスティングサービスをピックアップし、そのサービス内容や利用方法について紹介していく。

ホスティングサービス選びのポイント

  • メールやWebサーバの基本機能(POP/IMAP、Webメールなど)が充実しているか
  • ウイルスチェック/スパムフィルタ機能の性能は十分か
  • SSL対応サイトを構築する場合、自社のサーバ証明書が利用できるか
  • CMSやショッピングカートなどを利用するための環境が整っているか
  • SLAの設定はあるか
  • サポートの充実度も要チェック。電話サポートに対応しているか


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