米調査が示すモバイルBI活用3つの課題BI、分析、データ管理の専門家が回答

モバイルBIのビジネスケース確立において、セキュリティが大きな障壁であることに変わりはない。だが米調査会社TDWIの調査によると、課題はそれだけにとどまらずさらに大きな課題もあることが分かった。

2012年03月16日 09時00分 公開
[Nicole Laskowski,TechTarget]

 米調査会社The Data Warehousing Institute(TDWI)がまとめた報告書「モバイルビジネスインテリジェンスと分析:モバイル労働力への考察」によると、回答者415人のうち41%が、モバイルビジネスインテリジェンス(BI)のビジネスケースを確立する上での障壁としてセキュリティを挙げた。だがセキュリティよりもさらに大きな障壁として、「確実な投資回収率の算定」(44%)、「経験、リソース、研修の欠如」(44%)を挙げている。回答は2011年8月にTDWIの募集に応じたBI、分析、データ管理の専門家541人の中から募った。なお、全員が全ての質問に回答しているわけではない。

 報告書を執筆したTDWIのBI調査ディレクター、デビッド・ストダー氏によれば、企業はモバイルBIのセキュリティに不安を持っているが、不安はそれだけにとどまらない。ダッシュボード開発、パフォーマンス条件、データガバナンスも検討課題になるという。

ダッシュボード開発

 調査では回答者の65%が、スマートフォンやタブレット端末にBIと分析を導入すれば、対顧客販売やサービス、サポートの向上につながるとの期待を示した。だが対顧客販売やサービス、サポートの担当者が現在これを実行しているとの回答は11%にとどまった。

 ストダー氏は「既にBIを相当程度拡大させている組織では、モバイル化も進んでいることがわれわれの調査で判明した。つまりこうした企業では、さらなる拡大の手段としてモバイルに目を向けている」と話す。

 BIのリーチを広げるということは、出先あるいは営業所にいるかもしれない従業員の手にデータを預けるということだ。そしてそこから基本的な疑問が浮上する。

 ストダー氏が指摘する通り、ダッシュボードは従業員が情報にアクセスするために必要な手段になった。だがモバイル端末では、ダッシュボードを端末に移行できるか、それとも新しいダッシュボードを開発すべきかを企業が判断しなければならない。後者のアプローチを採った場合、デスクトップPCとモバイル端末の間の可視化を同期させる方法について検討する必要も生じる。

 「組織は別の問題を悪化させることのないよう、これに目を向けなければならない。すなわちダッシュボードが多過ぎることが問題になる組織もあるはずだ。それによる混乱を生じさせないためにはある程度の管理が必要になる」とストダー氏。

 データを役立つものにするためには、ユーザーが理解できる形で基準と主要なパフォーマンス指標を提示し、分かりやすい言葉で説明し、さらにはユーザーの参加を促すことが必須だと同氏は言い、「モバイル端末で成功するのはそうしたアプリケーションだ」と述べている。

パフォーマンス条件

 同氏の調査では、回答者の49%が「モバイル端末の導入を決めた場合、BIと分析ツールの研修を必要とするユーザーが増える」との見方を示した。こうしたユーザーがモバイルBIを最大限に活用するために必要な研修に掛かるコストを想定していない企業も多いかもしれない。

 ツールと研修の他に、モバイルBIでは質の高い最新のデータにアクセスできることが前提となる。しかし同時に、追加的技術をどうサポートするかの計画についても検討を要する。具体的には、パフォーマンス条件とデータ可用性に関する対応が挙げられる。

 ストダー氏の調査では、「モバイル端末が加われば、データウェアハウス(DWH)へのアクセスが必要になるユーザーが増える」との回答が53%、「そうしたユーザーはさらに更新頻度の高いデータを必要とする」は46%に上った。

 「モバイルユーザーが世界各国に出張する可能性がある場合──大企業ではあり得ることだ──いきなりデータを週7日、1日24時間利用できるようにしなければならない」と同氏は指摘する。

 それまでは時間外にシステムをダウンさせることができていたかもしれないが、モバイルBIではそれができる可能性がどんどん小さくなり、「DWHなどのシステムに対するパフォーマンスと可用性のプレッシャーは飛躍的に高まる」と同氏は言う。

セキュリティとガバナンス

 回答者はモバイルBIと分析を導入するためのビジネスケースを確立する上で、データセキュリティを3番目に大きな障壁として挙げた。

 「ここ最近、組織は規制とコンプライアンスポリシーに沿ったデータ管理について強い不安を持っている」(ストダー氏)

 こうした規制への違反が見つかれば罰金を払わされ、違反の事実が公表されることもある。従業員が使っているのがタブレット端末かPCかにかかわらず、適用されるのは同じルールだが、タブレットの場合、データベース上、転送中、端末上などあらゆるレベルのセキュリティを検討する必要があることから、事はやや複雑になる。

 「多くの組織ではあらゆる段階においてセキュリティが掛けられている。だが問題は、そうしたセキュリティレベルを全て連係させ、ギャップがないようにすることだ」(ストダー氏)

 もう1つの問題はデータガバナンスだ。同氏によれば、データガバナンスの欠如が原因で相当の警戒や懸念が生じているといい、データの正確性および一貫性の管理、誰がどのデータを使うかの統制、およびそれをどう監査可能かつ責任を持てる状態にするかの統制に関し、「ほとんどの組織は極めて未熟」だという。

 「ソースからモバイル端末のユーザーに至るまで、セキュリティに対処する技術はあるかもしれないが、問題は単なる技術にとどまらない。必要なのはポリシーを見極めることだ」と同氏は話している。

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