マイクロソフトでは自社内のDWH開発においてウォーターフォール型の開発を採用していないという。刻々と変化するデータを自在に扱うために同社はどのような開発体制を取っているのか。
日本マイクロソフトは2011年12月12日、「Microsoft BI/DWH Day 2011」を開催した。同イベントではリリース目前の「SQL Server 2012」(関連記事:マイクロソフトのビッグデータ対応、明かされたSQL Server 2012の新機能)をはじめとする、ビッグデータ対応のためのビジネスインテリジェンス(BI)、データウェアハウス(DWH)ソリューションの詳細説明やデモが行われた。中でも興味深かったのが、同社のマーケティング担当者が登壇したマイクロソフト社内におけるDWHの構築手法を紹介するセッションだ。本稿ではその内容を前後編でリポートする。
日本マイクロソフト セントラルマーケティング本部 マーケティングアナリストグループ マーケティングアナリティクスリードの保坂隆太氏は、「ビッグデータ時代のデータウェアハウス─マイクロソフトにおけるアジャイルな取り組み」と題したセッションで、マイクロソフト社内でどういった考え方、組織体制でDWHを構築・運用しているかを語った。保坂氏はIT部門の担当者ではなく、マーケティング部門の一担当者である。マイクロソフトでは近年、マーケティング部門が積極的にDWHの構想に携わっているというが、その目的を保坂氏は「実際のビジネスの現場のデータ活用をドライブしていくため」と語る。
DWHは開発部門とユーザー部門が存在する、いわゆるウォーターフォール型で開発されるケースが一般的だ。しかし、細かく要件定義し順序立てて開発したDWHであるのに、ユーザー部門からは「今欲しいデータがない」「使いにくい」「パフォーマンスが悪い」「投資に見合った貢献をしていない」といったクレームが挙がるという課題に悩まされる企業は少なくない。なぜこのような課題に直面してしまうのか。保坂氏はビッグデータ時代における「流動性」「品質」「重み」というデータの3つの特徴を示した上で、「データが日々変わっていることに原因がある」と主張する。
例えば企業において、CRMなどのシステムを1つ構築し、テーブルの構成を定義したとする。ところがその中を流れているデータの形は、その時期やビジネス状況、もしくは組織構造によってどんどん変わっていく。
「マイクロソフトの例でいえば、導入しているCRMアプリケーションのデータを細かく精査したところ、各システムの使い方に20以上のバリエーションがあることが分かった。このようにデータが流動的で、ビジネス部門にとってのデータの品質や重みが日々刻々と変化する今、ウォーターフォール型のDWH開発では市場の変化に対応していくだけの柔軟性を確保できない。ビジネス部門からは通り一辺倒なことしかできないようなデータに見えてしまう。これはマイクロソフトも直面していた大きな課題だ」
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