「Apple Pay」 vs.「Android Pay」のモバイル決済バトルが本格化、その影響とは?GoogleがAppleに対抗

米Googleが発表した「Android Pay」は、顧客体験の向上を目指したモバイル決済プラットフォームである。デジタル決済の普及に期待が高まる一方で、企業のCIOやIT部門はどのように向き合うべきだろうか。

2015年06月05日 15時00分 公開
[Francesca SalesTechTarget]
米Googleによる「Android Pay」の公式サイト《クリックで拡大》

 スマートフォンを財布代わりにショッピングをする人が増えている。そうした背景を受けて、米Googleは先日、米Appleの決済サービス「Apple Pay」に対抗するモバイル決済プラットフォームを発表した。流通・小売業だけにとどまらず、企業のCIOはこの技術に注目すべきである、とIT専門家らは話す。


 Googleは、米サンフランシスコで開催の開発者向けカンファレンス「Google I/O 2015」において、新たなモバイル決済プラットフォーム「Android Pay」の詳細を明らかにした。開発者向けに公開されている。Googleはクレジットカード会社とその加盟店、決済処理企業と連携しており、Android Payを利用したアプリの構築が可能となっている。利用者は同サービスを使って店舗内あるいはアプリ内で支払いをすることができる。Android Payには小売店のロイヤリティープログラムを組み込める。利用者には決済時に特典が付与され、小売店は顧客の情報をより詳しく収集可能になる。

 Android Payの目的はクレジットカードに取って代わることではない、と調査会社の米451 Researchで上級モバイルアナリストを務めるラウル・キャスタノン-マルチネス氏は話す。「Googleの狙いは、より良いユーザーエクスペリエンスを提供することだ。小売店がクレジットカード情報を持たないことで、トラブルの減少とセキュリティの向上につながる」

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 GoogleやAppleをはじめとしたIT企業によるこうした取り組み、つまり決済プロセスをより簡単かつセキュアにし、不正利用や盗難のリスクを減らすことで、消費者は大きな恩恵を享受することができる。ただ、顧客の期待が高まる一方で、これは企業とCIOにとって大きなプレッシャーになるだろう、と調査会社の米Forrester Researchで主席アナリストを務めるジェフェリー・ハモンド氏は指摘する。

 「消費者はデジタル決済へとシフトしており、デジタル決済に対応した企業と店舗を好むようになる。顧客はその便利さから、こうした支払い方法への対応をすぐに求め始めるだろう」(ハモンド氏)

小売業界でCIOが担うべき役割とは

 その最も大きなプレッシャーを受けるのが小売業界のCIOであり、ビジネスパートナーとの密接な協力が必要になる、とForrester Researchの主席アナリストであるフランク・ジレット氏は話す。

 小売業界のCMO(最高マーケティング責任者)は、顧客の決済プロセスをできるだけシームレスにしたいと考えている。ジレット氏によると、顧客の大半がモバイル端末での支払いはクレジットカードを財布の中から探し出すよりも簡単に感じるという。ジレット氏は“カードダンス”と呼ぶこうした不便を取り除くもう1つのメリットを次のように説明する。「デジタル決済の手法によって、顧客の確認と特典の提供をより簡単かつ頻繁に行えるようになる。今日の手法ではロイヤリティーカードが別途必要になり、カードダンスを繰り返し踊ることになる」

 こうした仕組みを導入する際には、トレーニングや業務プロセスの改善を含め、全体の調整をビジネス部門が主導することになるが、IT部門による支援も必要だとジレット氏は話す。CIOはまた、CMOとも協力する必要があるかもしれない。IT部門が管理するシステムである企業のロイヤリティープログラムに部分的に関与しているからだ。

 さらに、CFO(最高財務責任者)は決済カードの不正利用やデータ流出の削減に注目している。モバイル決済システムは、チップと暗証番号を利用するテクノロジーと連動することで、こうした問題を解決するソリューションになり得る。CIOは、こうしたテクノロジーに対応した新たな決済端末の導入を支援するだけでなく、決済端末から会計ネットワーク、社内システムに至るまでエンドツーエンドでセキュリティを管理および監視することにも責任を負うことになる。

全てのCIOは新たな決済方法を検討すべき

 これは小売企業だけに限った話ではない。企業がデジタル決済をうまく活用するためには、IT部門はデジタルに詳しいパートナーと密接に協力する必要がある、とForresterのハモンド氏はアドバイスする。

 「CIOは、顧客行動の見える化をしたり、カスタマージャーニーマップを作成したりしているようなデジタル部門と協力すべきだ」と同氏は述べた。つまり、企業の顧客接点となる全てのチャネルを横断して顧客体験を文書化するプロセスである。

 そのパートナーは、企業のマーケティングチームと連携する社外のデジタルエージェンシーである場合もあるとハモンド氏は付け加えた。

 Android Payをはじめとするモバイル決済ソリューションはまだ実験段階にある、とForresterで小売および決済担当アナリストを務めるスチャリタ・マルプル氏は忠告する。「経営層がモバイル決済の導入を検討しているのであれば、IT部門はそれを実現する方法を見つけるか、そうすべきではない正当な理由を考えるかである」

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