「SSLさえ使っていれば安全」は大きな誤解最後に侵入テストを行ったのはいつ?

本当に危険なのは、データが転送された後でWebサーバやアプリケーションの脆弱性を突かれてしまうことだ。そのための対策は万全だろうか?

2008年01月16日 04時45分 公開
[Kevin Beaver,TechTarget]

 Secure Sockets Layer(SSL)をめぐる誤解はあまり指摘されていないが、実はWebセキュリティに対するわれわれの見方をゆがめている。一般的に、Webサイトや電子商取引アプリケーションがどれだけ安全かを考える場合、「SSLが使われていればWebサイトとそのデータはいたって安全」ということになってしまっている。

 Webサイトのプライバシー/セキュリティポリシーの一部として、「このWebサイトは128ビット暗号化で保護されています」といった文を堂々と載せているのも見掛ける。Webセキュリティに真剣に取り組んでいる「証明」として、認証機関へのグラフィカルリンクまで置かれていることもある。

 コンピュータの使い方を紹介するラジオ番組で、ホストがSSLについて話すのも耳にする。Web上でのデータ保護についての一般的なアドバイスは、ブラウザに表示されるSSLの鍵アイコンを確認しながら操作することで、そうすればきちんと安全を確保できるという。

 業界の強力なマーケティングの結果として、またもや消費者とビジネスユーザーは思い込みを持ってしまっているように見えるのはわたしだけだろうか。それは、通信中のデータが暗号化され、接続先のWebサイトの真正性が確認されていれば、オンライン上の安全確保は万全だというものだ。

 気掛かりなのはそれだけではない。興味深いことに、開発者やDBA(データベース管理者)、そのほかのWebセキュリティに携わっている人々からも同様の話をよく聞く。「われわれはSSLを採用している。それがわれわれのサイトとデータのセキュリティ対策だ。また、コンプライアンスを確保してトラブルを避けるための対策でもある」というのが彼らの言い分だ。

 SSLが使われているからWebサイトは安全だというのは、ファイアウォールさえあればネットワークをインターネットから保護できるという古い俗説と似たり寄ったりだ。事はそれほど単純ではない。

 SSLを使うことで、転送中のデータ保護と認証の悪用防止が可能になるとは言える。WebサイトにSSLを導入すれば、フィッシング攻撃や、悪意あるユーザーによるARPポイズニングやトラフィック傍受の心配はほぼなくなる。こうしたメリットがWebセキュリティの向上につながることは確かだ。しかし、こうしたメリットが得られるからといって、Webサイトの安全確保や機密情報の適切な保護が徹底されていることには決してならない。

 本当に危険なのは、データが転送された後でWebサーバ、アプリケーション、データベースの脆弱性や弱点を突かれてしまうことだ。それらの例としては以下のようなものがある。

 皮肉にも、これらはすべて安全なはずのSSLトンネルを使って攻撃に悪用される恐れがある。

 あなたの会社が「SSLでセキュリティを確保している」とWebサイトで主張している場合や、あなたがビジネスでWeb関連のセキュリティをSSLに全面的に依存している会社と付き合いがある場合は、詳しいチェックを始めるのが賢明だろう。「最後に侵入テストやソースコード分析を行ったのはいつか」などといった厳しい質問をぶつけてみるとよい。

 なお、SSL自体は意図された機能を果たしている。新しいExtended Validation Certificates(EV証明書)により、Webユーザーはサイトの真正性をより厳密に確認できるようになっている。だが、それはまた別の問題だ。本当に脆弱性の影響を受けるのは、転送中のデータではなく静止状態のデータだ。データは静止状態にある時間がほぼ100%を占め、一般にこの状態が最もアクセスしやすい。

 技術的な管理が甘かったり、アプリケーションの作り方が粗雑だったり、ビジネスプロセスに欠陥があったりといった問題を抱えている場合、「SSLを使っていればWebセキュリティは万全」と誤解したままでいると必要な対策が一向に進まない。業界の宣伝文句をうのみにするのは禁物だ。まずはSSLが何に有効なのかを念頭に置かなければならない。

本稿筆者のケビン・ビーバー氏は、米アトランタにあるPrinciple Logicを経営する独立系情報セキュリティコンサルタントで、執筆、講演も手掛ける。情報セキュリティに関する6冊の著書および共著書がある。例えば、「Hacking For Dummies」、「Hacking Wireless Networks For Dummies」(以上Wiley刊)、「The Practical Guide to HIPAA Privacy and Security Compliance」(Auerbach刊)など。また、IT担当者が外出先でもセキュリティを学習できるオーディオプログラムセット「Security on Wheels」も制作、提供している。

関連ホワイトペーパー

SSL | サーバ | 脆弱性 | セキュリティ対策


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€驛「譎擾スク蜴・�。驛「�ァ�ス�、驛「譎冗樟�ス�ス驛「譎「�ス�シ驛「譏懶スサ�」�ス�ス

市場調査・トレンド ゼットスケーラー株式会社

AIの悪用でフィッシング攻撃が巧妙化、今後の予測と防御方法を解説

今や誰もが入手可能となったフィッシングツール。そこにAIの悪用が加わり、フィッシング攻撃はますます巧妙化している。本資料では、20億件以上のフィッシングトランザクションから、フィッシング攻撃の動向や防御方法を解説する。

技術文書・技術解説 ServiceNow Japan合同会社

限られた人材でインシデントや脆弱性への対応を迅速化、その鍵となるのは?

セキュリティ対策チームの57%が人材不足の影響を受けているといわれる昨今、インシデントや脆弱性への対応の遅れが、多くの企業で問題視されている。その対策として有効なのが「自動化」だが、どのように採り入れればよいのだろうか。

製品資料 LRM株式会社

開封率から報告率重視へ、重要な指標をカバーする標的型攻撃メール訓練とは

年々増加する標的型攻撃メール。この対策として標的型攻撃メール訓練を実施している企業は多い。こうした訓練では一般に開封率で効果を測るが、実は開封率だけでは訓練の効果を十分に評価できない。評価となるポイントは報告率だ。

製品資料 LRM株式会社

新入社員の情報セキュリティ教育、伝えるべき内容と伝え方のポイントは?

従業員の情報セキュリティ教育は、サイバー攻撃や人的ミスによる情報漏えいから自社を守るためにも必要不可欠な取り組みだ。新入社員の教育を想定し、伝えるべき内容や伝える際のポイントを解説する。

製品資料 LRM株式会社

2024年発生のインシデントを解説、組織全体でのセキュリティ意識向上が不可欠に

2024年の情報漏えい事故の傾向では、攻撃者による大規模攻撃の他、社員や業務委託先のミス・内部犯行によるケースも多く見られた。インシデント別の要因と対策とともに、今後特に重要になるセキュリティ意識向上のポイントを解説する。

驛「譎冗函�趣スヲ驛「謨鳴€驛「譎「�ス�シ驛「�ァ�ス�ウ驛「譎「�ス�ウ驛「譎「�ソ�ス�趣スヲ驛「譎「�ソ�スPR

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

繧「繧ッ繧サ繧ケ繝ゥ繝ウ繧ュ繝ウ繧ー

2025/05/09 UPDATE

  1. 縺ゥ繧後□縺代〒縺阪※縺�k�溘€€縺セ縺輔°縺ョ縲後ョ繝シ繧ソ豬∝�縲阪r髦イ縺絶€�11蛟九�隕∫せ窶�
  2. 繝ゥ繝ウ繧オ繝�繧ヲ繧ァ繧「髮�屮Black Basta縺ョ莨夊ゥア縺梧オ∝�縲€譏弱i縺九↓縺ェ縺」縺滓判謦�€��窶懈悽髻ウ窶�
  3. 菫。鬆シ縺励※縺�◆Web繧オ繧、繝医′縺セ縺輔°縺ョ諢滓沒貅撰シ溘€€縲梧ーエ鬟イ縺ソ蝣エ蝙区判謦�€阪�謇句哨縺ィ縺ッ
  4. 縲窟pp Store縲阪d縲隈oogle Play縲阪〒窶懷些髯コ縺ェ繧「繝励Μ窶昴r隕区・オ繧√k譁ケ豕�
  5. 縲瑚コォ莉」驥代r謾ッ謇輔≧縲堺サ・螟悶�繝ゥ繝ウ繧オ繝�繧ヲ繧ァ繧「蟇セ遲悶�譛ャ蠖薙↓縺ゅk縺ョ縺具シ�
  6. 繧シ繝ュ繝医Λ繧ケ繝医�騾イ蛹也ウサ�溘€€縲後ぞ繝ュ繧ケ繧ソ繝ウ繝�ぅ繝ウ繧ー迚ケ讓ゥ縲搾シ�ZSP�峨→縺ッ菴輔°
  7. Apple繧偵□縺セ縺吮€應ク肴ュ」縺ェiPhone菫ョ逅�€昴�謇句哨縺ィ蜊ア髯コ諤ァ
  8. 繝ゥ繝ウ繧オ繝�繧ヲ繧ァ繧「縺ョ蜊頑焚莉・荳翫′窶懊≠縺ョ萓オ蜈・邨瑚キッ窶昴r謔ェ逕ィ窶補€戊ヲ矩℃縺斐&繧後◆繝ェ繧ケ繧ッ縺ィ縺ッ��
  9. 莠育ョ励d莠コ謇倶ク崎カウ縺ァ繧りォヲ繧√↑縺�€窟I繝ェ繧ケ繧ッ邂。逅�€阪€€2螟ァ繝輔Ξ繝シ繝�繝ッ繝シ繧ッ縺ョ豢サ逕ィ豕輔���
  10. 蟆主�貂医∩縺ョ縲郡ASE縲崎ヲ狗峩縺励b�溘€€繝阪ャ繝医Ρ繝シ繧ッ繧サ繧ュ繝・繝ェ繝�ぅ縺ョ窶�3螟ァ蜍募髄窶�

「SSLさえ使っていれば安全」は大きな誤解:最後に侵入テストを行ったのはいつ? - TechTargetジャパン セキュリティ 髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€鬮ォ�ェ陋滂ソス�ス�コ�ス�ス

TechTarget驛「�ァ�ス�ク驛「譎「�ス�」驛「譏懶スサ�」�趣スヲ 髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€鬮ォ�ェ陋滂ソス�ス�コ�ス�ス

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。