超高齢化社会のヘルスケア分野に注力 GEヘルスケア・ジャパンの成長戦略NEWS

GEヘルスケア・ジャパンは3月30日、2012年度戦略発表と新製品群を発表した。医療機器だけでなく、超高齢化社会における医療の在り方を変える医療サービスの提供を目指す。

2012年04月10日 09時00分 公開
[翁長 潤,TechTargetジャパン]

医療機器メーカーからヘルスケアカンパニーへ

photo GEヘルスケア・ジャパン 代表取締役社長 兼 CEO 川上 潤氏

 1982年に発足したGEヘルスケア・ジャパンは3月30日、30年目となる2012年度の戦略発表と新製品を発表した。GEヘルスケア・ジャパン 代表取締役社長 兼 CEO 川上 潤氏は「製造から開発、営業・サービスまでの全ての拠点を国内に置き、日本発の製品群を海外に提供してきた」とこれまでを振り返る。同社は従業員333人で発足し、先端医療機器の普及を進めることで従業員2072人まで拡大している。また「“患者のために最善を尽くすことに誇りを持つ”という理念を変えずに、今後の医療の将来像を考え、創っていくことを目指す。単なる医療機器のメーカーから、超高齢化社会における医療の在り方を変える“ヘルスケアカンパニー”になる」と語った。

2012年の新成長戦略

 川上氏は自社を取り巻く状況を外部環境、内部環境の2つに分けて分析した。外部環境では「先行き不透明な政治経済の状況ではあるが、医療分野は2011年後半から回復基調にある。さらに2012年4月の診療報酬の改定や東日本大震災の復興プロジェクトが本格化するなど、外部環境は非常に好転している」と説明する。また、内部環境としては「新製品の投入により、製品やサービスのポートフォリオが拡充しており、多くの受注残があるなど、より高い成長が期待できる」と分析した。加えて、想像力とイノベーションによって医療提供の体制を変える“Healthymagination”戦略を基に、30年目の節目となる2012年は積極的な事業展開を進めるという。同社は今後、以下4つの成長戦略を柱に事業を展開する。

4つの成長戦略

  • Silver to Gold戦略:高齢者のQOL(生活の質)の向上を支援する
  • IJFG(in Japan for Global)製品の展開:日本の持つ強みを世界へ発信する
  • Japan Quality(品質)の追求:世界最高水準の技術を顧客満足度の向上につなげる
  • 持続可能な医療システムの構築:ヘルスケアITを積極的に活用する

 Silver to Gold戦略は、高齢化社会における高齢者のQOLの向上を支援する取り組みだ。慢性疾患などの疾患別ソリューションの提供、画像技術とバイオ・創薬技術を組み合わせた技術革新、より高度なプライマリーケアを可能にする医療従事者の育成、在宅医療の医療サービスの質の向上などを支援する。

 また「グローバルのGEグループの中で、リーン生産方式による生産性や遠隔修理サービスなどが世界一」(川上氏)というGEヘルスケア・ジャパンの強みを、世界へ発信することでIJFG(in Japan for Global)製品の展開を加速させる。医療機器の画像技術だけでなく、モダリティの稼働率の向上や安全性の向上に役立つ分析ソフトウェアなどを提供し、「医療の低被ばく化のオピニオンリーダーになる」(川上氏)

 東日本大震災からの復興を支援し、それを踏まえて「持続可能型の医療システム」を構築する。川上氏は「その構築にITが寄与する役割は大きい」と説明している。

 同社は、CTやMRIなどの導入率が世界一である日本市場は成熟していると捉え、より成長が見込まれる分野に注力する。川上氏は「医療機器の領域を中核にしながら、より患者の役に立つ幅広い事業に取り組む。医療機関だけでなく、患者と直接やりとりするB2C事業まで視野に入れる」と説明する。同社は既にコミュニティーWebサイト「healtymaginatio.jp」を展開するなど、新しいビジネスモデルの確立を進めている。

クラウド型データホスティングサービス「医知の蔵」

 同社は2011年3月にソフトバンクテレコムとクラウド事業での協業を発表している。同社はその協業の1つとしてクラウド型データホスティングサービス「医知の蔵」の本格運用を3月30日開始した。

 医知の蔵は、GEヘルスケア・ジャパンのPCAS(医用画像管理システム)のデータをソフトバンクテレコムのデータセンターに保管するサービス。2011年9月から埼玉県の深谷赤十字病院での試用運用を実施して評価・検証を完了している。

 GEヘルスケア・ジャパンのPACSは、撮影から3〜5年以内の画像データを保管する「短期ストレージ」(STS)と、電子保管した全ての画像データを保管する「長期アーカイバー」の2階層で構成する。医知の蔵では、データセンターに長期アーカイバーを設置する。

photo 医知の蔵のサービス構成イメージ《クリックで拡大》
photo GEヘルスケア・ジャパンの松葉香子氏

 GEヘルスケア・ジャパンのヘルスケアIT本部 IT営業企画マネジャー 松葉香子氏は、医知の蔵には3つの導入メリットがあると説明する。

 1つ目は「処理性能」だ。医知の蔵では従来通り、STSを院内に設置する。すぐに閲覧する必要があるデータは院内のネットワーク経由で迅速な読影や参照が可能になる。2つ目は「サービス導入が容易である」点だ。GEヘルスケア・ジャパンのモダリティやPACSを導入している施設では、既に提供しているIPsec VPNのリモート保守回線「InSite」を用いることで、データセンターとの新しい回線の敷設は不要だ。3つ目は「データバックアップの機能強化」だ。医知の蔵では、500キロ以上離れた国内の2カ所の遠隔地のデータセンターにデータを同期保存することで、データ二重化によるDR(ディザスタリカバリ)を実現できるという。

 また川上氏は「東日本大震災のような災害時のデータ損失リスクの軽減や災害時の診療継続が可能。今後は画像以外のデータをクラウド保管することで、地域の病院や診療所、介護施設とのネットワーク化を進め、地域包括ケアにおける情報共有の基盤となるネットワーク構築も視野に入れている」と説明する。

モダリティの新製品群も提供

 GEヘルスケア・ジャパンは同時にモダリティ各種の新製品を発表した。MRIの新機種として「Discovery MR750w 3.0T」(以下、MR750w 3.0T)と「Optima MR450w 1.5T」(以下、MR450w 1.5T)を発表した。MR750w 3.0Tは同社のMRI製品の最上位機種として日本が開発した製品。木目調のパネルやLED照明を用いて、撮影機構部分の大口径(ワイドボア)を採用し、被験者の検査環境の改善を図った。また、全世界で600台の販売実績を持つ「Optima CT660 FD」の新版を4月に提供する。全身撮影を6秒で完了し、非侵襲的アプリケーションを採用するなど高速化、低被ばく化に対応している。

photo CT装置「BrivoCT385」(左)とフラットパネル回診車「SuperBee」(右)

 さらに、中小規模の病院や診療所を対象にしたCT装置「BrivoCT385」を4月13日に販売開始する。川上氏は「Silver to Gold戦略の製品の1つ。高齢者を始めとする撮影時の静止姿勢が難しい患者に最適な装置」と紹介した。同社によると、BrivoCT385は世界最小設置面積となる16列CTながら、64列CT装置と同等のスライス厚を採用し従来と比べてより広範囲の高速撮影を可能にしたという。その他、血管X線撮影装置「INNOVA GIS」3機種やフラットパネル回診車「SuperBee」などを発売する。

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