ここ2、3年に起きたフラッシュストレージの大革命は、ベンチャー企業が中心を担っていた。しかし、この流れが変わり始めたかもしれない。
ベンチャー企業は、HDDの時代とその技術要件に従って設計された、既存の製品ラインとアーキテクチャによるしがらみを持たない。そこで、市場に参入した新興企業はフラッシュストレージの潜在能力を最大限引き出せるように一から設計し、デスクトップ仮想化やサーバ仮想化の他、高パフォーマンスが求められるトランザクションワークロードの要件を満たせるようなオールフラッシュアレイ製品を続々と打ち出してきた。
本記事は、プレミアムコンテンツ「Computer Weekly日本語版 2013年11月6日号」(PDF)掲載記事の抄訳版です。本記事の全文は、同プレミアムコンテンツで読むことができます。
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同様に、ハイブリッドフラッシュアレイの開発においても、ベンチャー企業がイノベーションを起こしている。この新しい製品ジャンルは、既存の大手ベンダーが足を踏み入れることができなかった市場の空隙を埋めた。ベンチャー企業は、フラッシュが持つ高速アクセスと低遅延性を生かすように一から設計されたハードウェアと、HDDが持つ大容量性を融合させ、ソフトウェアインテリジェンス(自動階層化およびデータ重複排除)を使って、各データを最適なメディアに保存するハイブリッドフラッシュアレイを実現している。
ハイブリッドフラッシュアレイは、フラッシュと従来のディスクテクノロジーを組み合わせて、メディアのパフォーマンスとコストプロファイルを基にデータを振り分けて保存するという、実に理にかなったアプローチだ。しかし奇妙なことに、大手ベンダー6社(EMC、HP、NetApp、IBM、Hitachi Data Systems、Dell)の腰は重く、このジャンルに進出してこない。
この記事では、ハイブリッドフラッシュストレージ分野で草分け的存在のベンチャー企業の主要製品を紹介する。また、6大ベンダーの全体的な動向にも触れる。大手ベンダーは無反応といえる状態だが、ベンチャー企業から技術的優位性を奪還する潮目の変化を示す動きが2つほどある。
Nimble Storageは米Data Domainの元社員が立ち上げたベンチャー企業で、2010年にステルスモードを解除した。
NimbleのiSCSIフラッシュアレイには、CS200シリーズとCS400シリーズの2つの主要製品ラインがある。これらは、SATA HDDが持つ大容量性と、マルチレベルセル(MLC)フラッシュキャッシュを融合させた製品だ。圧縮とデータの重複排除を使ってデータの保存容量を最大限まで高めつつ、フラッシュキャッシュによりアクセス速度を向上している。
例えば、CS200のエントリーレベルのモデルは物理容量が合計8Tバイト(76Tバイトまで拡張可能)で、160Gバイトのフラッシュドライブを搭載している。このモデルから、物理容量が36Tバイト(249Tバイトまで拡張可能)で2400Gバイトのフラッシュドライブを搭載した最上位モデルのCS460まで、性能と容量が異なるモデルを幾つか用意している。
Nimbleは、顧客が容量、サーバ(コンピュート)機能、キャッシュを拡張可能にすることを目指しており、2012年8月のNimble OS 2.0リリース以降、Nimbleのハードウェアはスケールアウト型のアーキテクチャで連結可能になっている。
2011年にステルスモードを解除したTintriは、VMwareユーザー向けのハイブリッドフラッシュ/HDD機器を製造している。Tintriも重複排除と階層化を使ってフラッシュとSATA HDDにデータを適宜振り分け、SSD(ソリッドステートドライブ)ストレージへの非常に高いI/Oヒット率を実現している。
デュアルコントローラーのTintri VMstoreは、iSCSI(1ギガビットおよび10ギガビットイーサネットポート)アレイで、3Uフォームファクタに300GバイトのMLCドライブ8基と3TバイトのSATA HDD8基を搭載し、この2種類のドライブ間でデータの重複排除と圧縮を行う。
Tintriは仮想マシン環境を対象にしている。そのため、ボリューム、LUN、RAIDグループを廃し、I/O要求を仮想ディスクに直接マップする。この、仮想マシンとの緊密な統合により、VMstoreは仮想ディスクごとにI/O性能を制御できる。
Tegileは、DRAMキャッシュ、MLCおよびSLCストレージ層、Tegileが採用したSAS HDD ZFSベースのOSを組み合わせ、データの重複排除、圧縮、RAID機能向上、Mass(Metadata Accelerated Storage System)というパフォーマンス向上機能を備えている。Massを使うことで、データ全体ではなく、メタデータヘッダのみを利用してデータを処理できる。このメタデータヘッダは、キャッシュまたはSSD層に保持される。
こうした賢い仕組みによって、Tagileは6大ベンダーの一部のアレイ製品の費用の10%ほどで、エンタープライズレベルの容量と性能を提供できるとしている。
TegileのZebi HAシリーズは、600Gバイトのフラッシュと合計物理容量22Tバイト(重複排除と圧縮で最大5倍に拡張可能)のHDDを搭載したエントリーレベルのHA2100から、4400Gバイトのフラッシュと物理容量44Tバイト(これも重複排除と圧縮で最大5倍に拡張可能)のHDDを搭載した最上位モデルのHA2800まで取りそろえている。
Tegileのアレイは、iSCSI、ファイバーチャネル、NAS接続に対応している。
最近、PCIeフラッシュストレージの草分けであるFusion-ioに買収され、「ioControl」にブランド変更されたNexGen Storageは、2011年にFusion-ioのPCIeフラッシュカード、RAM、SAS HDDをx86サーバプラットフォームに搭載したn5ハイブリッドフラッシュアレイを発表して、ステルスモードを脱した。
他のハイブリッドフラッシュベンダーと同様に、自動階層化機能とデータ重複排除を使って、SSDとHDD間でデータを移動している。
NexGen Storageの特徴は、OSでいわゆる性能QoS(Quality of Service)を使用し、必要とする性能に従ってユーザーがデータをプロビジョニングできる点だ。
n5アレイは、最大1460GバイトのSSDと16T〜60TバイトのHDDを搭載したn5-50から、最大4800GバイトのSSDと48T〜192TバイトのHDDを搭載したn5-150まで、3モデルで展開されている。ioControlアレイは、10GbEおよび1GbEポートを備えたiSCSIアレイだ。
Nutanixは、VMware対応の各ノードにIntelのプロセッサとPCIe SSDおよび従来の形式のSSDを搭載し、さながら1つの筐体にデータセンターを閉じ込めた「Nutanix Complete Cluster」(現「Nutanix Virtual Computing Platform」)を携えて、2011年にステルスモードを脱した。この製品では、同社のコントローラーソフトウェア「Scale Out Converged Storage」を使って、任意のノードに他のノードを追加してスケールアウトできる。
これはNX-2000という製品シリーズだったが、2012年に機能強化したNX-3000ハードウェアプラットフォームを発表した。NX-3000では、各ノードにIntel Sandy Bridgeプロセッサーと128Gバイトまたは256GバイトのRAMを搭載している。また、KVMおよびMicrosoft Hyper-Vハイパーバイザーにも対応した。
ストレージは、400GバイトのPCIe SSD、300GバイトのSATA SSD、5TバイトのSATA HDDで構成される。4ノードの“スターターキット”(2Uサイズの19インチシャーシをフォームファクタとし、1つの「ブロック」を構成)は、仮想サーバなら約400台、仮想デスクトップなら約900〜1200台をサポートできる。
クラスタではNutanix Distributed File System(NDFS)を使用して、GbEを使って接続した全ノードにデータを分散して格納する。NDFSは、データのストライピングやレプリケーションの他、SSDとSATAストレージ間の自動階層化などの高度な機能も管理する。
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