ハイブリッドフラッシュアレイ市場で後れを取った大手ベンダーの逆襲ベンチャーは主導権を守れるか?

ここ2、3年に起きたフラッシュストレージの大革命は、ベンチャー企業が中心を担っていた。しかし、この流れが変わり始めたかもしれない。

2013年11月19日 08時00分 公開
[Antony Adshead,Computer Weekly]
Computer Weekly

 ベンチャー企業は、HDDの時代とその技術要件に従って設計された、既存の製品ラインとアーキテクチャによるしがらみを持たない。そこで、市場に参入した新興企業はフラッシュストレージの潜在能力を最大限引き出せるように一から設計し、デスクトップ仮想化やサーバ仮想化の他、高パフォーマンスが求められるトランザクションワークロードの要件を満たせるようなオールフラッシュアレイ製品を続々と打ち出してきた。

Computer Weekly日本語版 2013年11月6日号無料ダウンロード

本記事は、プレミアムコンテンツ「Computer Weekly日本語版 2013年11月6日号」(PDF)掲載記事の抄訳版です。本記事の全文は、同プレミアムコンテンツで読むことができます。

なお、同コンテンツのEPUB版およびKindle(MOBI)版も提供しています。


 同様に、ハイブリッドフラッシュアレイの開発においても、ベンチャー企業がイノベーションを起こしている。この新しい製品ジャンルは、既存の大手ベンダーが足を踏み入れることができなかった市場の空隙を埋めた。ベンチャー企業は、フラッシュが持つ高速アクセスと低遅延性を生かすように一から設計されたハードウェアと、HDDが持つ大容量性を融合させ、ソフトウェアインテリジェンス(自動階層化およびデータ重複排除)を使って、各データを最適なメディアに保存するハイブリッドフラッシュアレイを実現している。

 ハイブリッドフラッシュアレイは、フラッシュと従来のディスクテクノロジーを組み合わせて、メディアのパフォーマンスとコストプロファイルを基にデータを振り分けて保存するという、実に理にかなったアプローチだ。しかし奇妙なことに、大手ベンダー6社(EMC、HP、NetApp、IBM、Hitachi Data Systems、Dell)の腰は重く、このジャンルに進出してこない。

 この記事では、ハイブリッドフラッシュストレージ分野で草分け的存在のベンチャー企業の主要製品を紹介する。また、6大ベンダーの全体的な動向にも触れる。大手ベンダーは無反応といえる状態だが、ベンチャー企業から技術的優位性を奪還する潮目の変化を示す動きが2つほどある。

ハイブリッドフラッシュアレイ市場 - ベンチャー企業

Nimble Storage

 Nimble Storageは米Data Domainの元社員が立ち上げたベンチャー企業で、2010年にステルスモードを解除した。

 NimbleのiSCSIフラッシュアレイには、CS200シリーズとCS400シリーズの2つの主要製品ラインがある。これらは、SATA HDDが持つ大容量性と、マルチレベルセル(MLC)フラッシュキャッシュを融合させた製品だ。圧縮とデータの重複排除を使ってデータの保存容量を最大限まで高めつつ、フラッシュキャッシュによりアクセス速度を向上している。

 例えば、CS200のエントリーレベルのモデルは物理容量が合計8Tバイト(76Tバイトまで拡張可能)で、160Gバイトのフラッシュドライブを搭載している。このモデルから、物理容量が36Tバイト(249Tバイトまで拡張可能)で2400Gバイトのフラッシュドライブを搭載した最上位モデルのCS460まで、性能と容量が異なるモデルを幾つか用意している。

 Nimbleは、顧客が容量、サーバ(コンピュート)機能、キャッシュを拡張可能にすることを目指しており、2012年8月のNimble OS 2.0リリース以降、Nimbleのハードウェアはスケールアウト型のアーキテクチャで連結可能になっている。

Tintri

 2011年にステルスモードを解除したTintriは、VMwareユーザー向けのハイブリッドフラッシュ/HDD機器を製造している。Tintriも重複排除と階層化を使ってフラッシュとSATA HDDにデータを適宜振り分け、SSD(ソリッドステートドライブ)ストレージへの非常に高いI/Oヒット率を実現している。

 デュアルコントローラーのTintri VMstoreは、iSCSI(1ギガビットおよび10ギガビットイーサネットポート)アレイで、3Uフォームファクタに300GバイトのMLCドライブ8基と3TバイトのSATA HDD8基を搭載し、この2種類のドライブ間でデータの重複排除と圧縮を行う。

 Tintriは仮想マシン環境を対象にしている。そのため、ボリューム、LUN、RAIDグループを廃し、I/O要求を仮想ディスクに直接マップする。この、仮想マシンとの緊密な統合により、VMstoreは仮想ディスクごとにI/O性能を制御できる。

Tegile Systems

 Tegileは、DRAMキャッシュ、MLCおよびSLCストレージ層、Tegileが採用したSAS HDD ZFSベースのOSを組み合わせ、データの重複排除、圧縮、RAID機能向上、Mass(Metadata Accelerated Storage System)というパフォーマンス向上機能を備えている。Massを使うことで、データ全体ではなく、メタデータヘッダのみを利用してデータを処理できる。このメタデータヘッダは、キャッシュまたはSSD層に保持される。

 こうした賢い仕組みによって、Tagileは6大ベンダーの一部のアレイ製品の費用の10%ほどで、エンタープライズレベルの容量と性能を提供できるとしている。

 TegileのZebi HAシリーズは、600Gバイトのフラッシュと合計物理容量22Tバイト(重複排除と圧縮で最大5倍に拡張可能)のHDDを搭載したエントリーレベルのHA2100から、4400Gバイトのフラッシュと物理容量44Tバイト(これも重複排除と圧縮で最大5倍に拡張可能)のHDDを搭載した最上位モデルのHA2800まで取りそろえている。

 Tegileのアレイは、iSCSI、ファイバーチャネル、NAS接続に対応している。

NexGen Storage

 最近、PCIeフラッシュストレージの草分けであるFusion-ioに買収され、「ioControl」にブランド変更されたNexGen Storageは、2011年にFusion-ioのPCIeフラッシュカード、RAM、SAS HDDをx86サーバプラットフォームに搭載したn5ハイブリッドフラッシュアレイを発表して、ステルスモードを脱した。

 他のハイブリッドフラッシュベンダーと同様に、自動階層化機能とデータ重複排除を使って、SSDとHDD間でデータを移動している。

 NexGen Storageの特徴は、OSでいわゆる性能QoS(Quality of Service)を使用し、必要とする性能に従ってユーザーがデータをプロビジョニングできる点だ。

 n5アレイは、最大1460GバイトのSSDと16T~60TバイトのHDDを搭載したn5-50から、最大4800GバイトのSSDと48T~192TバイトのHDDを搭載したn5-150まで、3モデルで展開されている。ioControlアレイは、10GbEおよび1GbEポートを備えたiSCSIアレイだ。

Nutanix

 Nutanixは、VMware対応の各ノードにIntelのプロセッサとPCIe SSDおよび従来の形式のSSDを搭載し、さながら1つの筐体にデータセンターを閉じ込めた「Nutanix Complete Cluster」(現「Nutanix Virtual Computing Platform」)を携えて、2011年にステルスモードを脱した。この製品では、同社のコントローラーソフトウェア「Scale Out Converged Storage」を使って、任意のノードに他のノードを追加してスケールアウトできる。

 これはNX-2000という製品シリーズだったが、2012年に機能強化したNX-3000ハードウェアプラットフォームを発表した。NX-3000では、各ノードにIntel Sandy Bridgeプロセッサーと128Gバイトまたは256GバイトのRAMを搭載している。また、KVMおよびMicrosoft Hyper-Vハイパーバイザーにも対応した。

 ストレージは、400GバイトのPCIe SSD、300GバイトのSATA SSD、5TバイトのSATA HDDで構成される。4ノードの“スターターキット”(2Uサイズの19インチシャーシをフォームファクタとし、1つの「ブロック」を構成)は、仮想サーバなら約400台、仮想デスクトップなら約900~1200台をサポートできる。

 クラスタではNutanix Distributed File System(NDFS)を使用して、GbEを使って接続した全ノードにデータを分散して格納する。NDFSは、データのストライピングやレプリケーションの他、SSDとSATAストレージ間の自動階層化などの高度な機能も管理する。

ハイブリッドフラッシュアレイ市場 - 6大ベンダー

続きはComputer Weekly日本語版 2013年11月6日号にて

本記事は抄訳版です。全文は、以下でダウンロード(無料)できます。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 株式会社ネットワールド

すぐ役立つ&初めてでも安心 「NetAppの教科書」決定版

データ環境の急変は、企業のストレージ課題を複雑化させている。性能や拡張性、データ保護、分散環境の一元管理、コスト最適化など、自社の課題に合わせた製品・サービスをどう見つければよいのか。それに役立つ製品ガイドを紹介したい。

技術文書・技術解説 エフサステクノロジーズ株式会社

フラッシュアレイ選びのヒント:最小限のダウンタイムでデータ移行できる製品は

フラッシュアレイ導入を検討する際、既存のリモートストレージデバイスからのデータインポートは気になる点の1つだ。そこで本資料では、最小限のダウンタイムでデータ移行できるフラッシュアレイ/ハイブリッドアレイ製品を紹介する。

製品資料 エフサステクノロジーズ株式会社

初級解説:中小規模向け「フルSSD」&「ハイブリッドストレージ」の実力

近年、企業に蓄積されるデータが爆発的に増加しており、新たなストレージシステムへのニーズが高まっている。そこで、中小規模のニーズをカバーする、フルSSDおよびSSD/HDDハイブリッドのシンプルなブロックストレージを紹介する。

製品資料 エフサステクノロジーズ株式会社

解説:SAN専用オールフラッシュアレイ、99.9999%の高可用性を支える技術とは?

近年のSANストレージには、データの保護と可用性を確保することが求められている。そこで登場したのが、SAN専用のオールフラッシュアレイだ。本資料では、99.9999%を超える高可用性を実現する同ストレージの実力を紹介する。

製品資料 エフサステクノロジーズ株式会社

ストレージ専用OSでどれだけ変わる? データの高速処理や保護に見逃せない違い

ビジネスの成否を左右する要素として、データの重要性がかつてないほど高まっている。これに伴い、データ基盤としてのストレージの役割も一層注目されている。本資料では、多様かつ高度なニーズに応え得るストレージ製品の特徴を紹介する。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ
ネットワークの問題は「帯域幅を増やせば解決する」と考えてはいないだろうか。こうした誤解をしているIT担当者は珍しくない。ネットワークを快適に利用するために、持つべき視点とは。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...