若者のセキュリティ職離れ――考え直すべきは学生か、企業の人事担当か深刻化する企業のセキュリティ人材難(3/3 ページ)

2016年01月27日 12時00分 公開
[Sean MartinTechTarget]
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採用担当者は自社にとって適切なチームを編成せよ


 多くの場合、特定のセキュリティ職で実務経験を積んだ人材を求める企業は、追加のフィルターを用意する。企業のセキュリティ業務にとって、幅広い業界で習得したスキルは関連性が非常に高い可能性もある。しかし、そのようなスキルは、人事部や採用担当者が求めているものとは異なる表現で、履歴書に記載しているかもしれない。それなのに、その履歴書に記載している役割で核となる能力が、求めている能力とほぼ一致することを採用担当者が認識していないこともある。

 例えば、多くの業界で、データ分析、リスク探索、異常検知、重大な危機の予測、突発的な問題への迅速な対応を行う役職がある。そのスキルは、一部のセキュリティ職にとって関連性が特に高く重要だ。 「橋が崩壊する原因を調査している人は、ネットワークが停止する理由を特定するのに必要なスキルや思考法を習得している可能性がある」(ヘール氏)

 企業が雇用候補者に対するフィルターを取り払えば、企業は求める人材を見つけることができるはずだ。これは技術的な能力だけにとどまらない。対外的な交渉能力も学位や経験と同じくらい重要だ。「ビジネス部門とのコミュニケーションも取れる人材を雇用するべきだ。企業に極めて大きな価値をもたらすにもかかわらず、コミュニケーション能力を見過ごしている企業が多い」(アレクサンダー氏)

 アレクサンダー氏によれば、文書や口頭でのコミュニケーション、問題解決、指導能力は、セキュリティ職における潜在的な能力を持った採用候補者を探す上で重要なスキルだという。さらに、モスキテス氏は、クリエイティブな思考、問題解決能力、適応能力などを、採用候補者が自社の社風に合っているかもスキルの一覧に加えた。

 また、ヘール氏も、セキュリティの専門家が備えるべきスキルを次のように説明する。「セキュリティの分野に参入する新人は、見通しの悪さや苦境に対する覚悟が必要だ。この分野では、長時間に及ぶ退屈な作業がある一方で、予期せぬ大混乱に陥ることがある。つまり、イベント駆動型の仕事といえる」

社員と長期的な関係を築く

 企業は優秀な人材を確保したら、その人材を最大限に活用するのがベストだ。そのためには確保した人材が不満をためないようにする必要がある。「セキュリティの専門職には1年間で2度の昇給を行っている。また、予想以上に作業が大変だった場合は、埋め合わせとして、その週のうちに休暇を与えている」(モスキテス氏)

 企業はセキュリティ専門職の人材に刺激を与えてモチベーションを高く保つ必要もある。アレクサンダー氏は次のようにいう。「企業は、役割を明確に定義して、仕事上の責任を明確にしなければならない。それから、従業員には希望を持って業務に取り組める機会を用意し、キャリアパスや高いレベルの職務に就くための目標をクリアする方法について継続的なアドバイスを行う必要もある」

 セキュリティの専門職に対して継続的に教育を行うことも重要だ。「従業員に投資し、教育に投資することが大切だ。ただし、技術的なトレーニングだけを重視するのは望ましくない。コミュニケーション、プログラム管理、リーダー論など、セキュリティの専門職が学ぶべきスキルは他にも数多く存在する。ここで紹介したのはほんの数例にすぎない」(アレクサンダー氏)

 競合他社が最高の人材を雇用している激しい競争の中で、これまでと同じやり方でセキュリティの人材を確保しようとする企業は、立場が苦しくなるだろう。最終的に決め手となるのは教育体制だ。採用担当者は、求めるセキュリティのスキルについて応募者に伝え、応募者もそのスキルが自分にあるかどうか判断する必要がある。そのためには、セキュリティ業界が教育機関の指導者を教育しなければならない。そうすることで、指導者が将来のセキュリティの専門家に対して何を教えるべきかが分かるようになる。また、企業は人事部も教育する必要がある。人事部を教育すれば、セキュリティ部署が本当に必要としているものを理解し、採用で不必要なフィルターを適用しなくなるはずだ。

 加えて、セキュリティの幹部職は自主的に学習する必要がある。その目的は、応募者の過去の役職や経歴がセキュリティに直結していなくても、先入観にとらわれることなく、役割に合ったスキルを持つ候補者を探せるようになることにある。そして、幸運にもいい人材を確保できたら、その従業員を教育して、自社につなぎとめておかなければならない。十分な教育と情報提供を行っているコミュニティーは最終的に強力なものになるだろう。

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