「CASB」(Cloud Access Security Broker)製品の失敗しない選び方 4つのポイント今理解すべき「CASB」の実力【第4回】(1/2 ページ)

自社のニーズに合った「CASB」(Cloud Access Security Broker)製品を選定するには、何に注意すればよいのか。選定をうまく進めるためのポイントを紹介する。

2018年02月15日 05時00分 公開
[三島千恵ネットワンシステムズ]
画像 CASBの選定ポイントをチェック

 第3回の「クラウドセキュリティの“本命” 『CASB』が備える4大機能とは」まで3回にわたって、「CASB」(Cloud Access Security Broker)の生まれた背景や機能を紹介してきました。最終回の今回は、実際にCASB製品の導入を検討する場合に、製品選定で注目すべきポイントについて解説します。

 「クラウドサービスのコントロールポイント」という役割を担うCASB製品は、自らもクラウドサービスとして提供されることが一般的です。本稿では提供形態によらず「CASB製品」と呼ぶことにします。CASB製品の選定時に注目すべきポイントは、主に以下の4点です。

  1. 選択可能な導入構成
  2. 運用性向上の工夫
  3. 新サービスや仕様変更への追従体勢
  4. CASBベンダーのセキュリティ対策

選定ポイント1:選択可能な導入構成

 CASB製品には主に3種類の導入構成があり、どの導入構成を選択できるのかはCASB製品によって異なります。CASB製品が提供できる機能の大枠は、導入構成によって決まります。目的や環境に応じて、選択すべき導入構成は変わります。選択可能な導入構成を把握することが、CASB製品選定の第一歩と言ってよいでしょう。

  • ログ収集・解析構成
    • エンドユーザーとクラウドサービスとの間の通信経路外にCASB製品を配置し、社内LAN内のファイアウォールやWebプロキシのアクセスログを収集
    • 製品によってはオプションとしてエージェントを用意し、通信時にオンプレミスのファイアウォールやWebプロキシを通過しないデバイスのアクセスログを収集
  • API(アプリケーションプログラミングインタフェース)連携構成
    • エンドユーザーとクラウドサービスとの間の通信経路外にCASB製品を配置し、クラウドサービスとAPI連携
  • プロキシ構成
    • エンドユーザーとクラウドサービスとの間の通信経路内に、プロキシとしてCASB製品を配置
    • 製品によってはオプションとしてエージェントを用意し、エンドユーザーの通信をCASB製品のプロキシ経由になるように制御

 導入目的が「シャドーIT」のセキュリティ対策なのか、「サンクションIT」のセキュリティ対策なのかによって、適切な導入構成は異なります。第1回「クラウドセキュリティの“熱い”キーワード『CASB』とは何か? 誕生の理由は?」で紹介した通り、企業のIT部門が認知しておらず従業員が個別に利用しているクラウドサービスがシャドーIT、企業が利用を許可しているクラウドサービスがサンクションITです。

シャドーITのセキュリティ対策に適した導入構成

 シャドーITのセキュリティ対策が目的である場合、適切なCASB製品の導入構成は「ログ収集・解析構成」と「プロキシ構成」の2通りです(表1)。企業にとってシャドーITの主な懸念は、社内に存在する機密情報の持ち出しです。そのためシャドーITのセキュリティ対策を目的とするのであれば、CASB製品の主な監視対象は社内のエンドユーザーになります。ログ収集・解析構成とプロキシ構成のCASB製品は、いずれも社内LANとクラウドサービスとの間の通信を監視、制御するのに適しています。

表1 シャドーITのセキュリティ対策に適したCASB製品の導入構成
構成 ログ収集・解析構成 プロキシ構成
概要 ・通信経路にあるファイアウォールやWebプロキシのアクセスログを収集、解析 ・通信経路内で通信を直接検査、制御
メリット ・導入が容易
・通信に影響なし
・単体でアクセス制御が可能
・可視化、脅威からの防御、コンプライアンス、データセキュリティ機能を全て提供可能(注2)
デメリット ・単体ではアクセス制御が不可能
・可視化、脅威からの防御機能のみ提供可能(注1)
・導入が困難(注3)
・通信に影響あり(注4)
※注1:通信内容を検査できないため。
※注2:通信内容を検査できるため。
※注3:エンドユーザーのデバイスに、SSL通信解析用のSSLルート証明書を導入する必要がある。
※注4:遅延が発生したり、CASB製品障害時に通信が途切れたりする可能性がある。

 保有する情報資産の重要度やシャドーITに対する姿勢によって、企業がシャドーITに対して取るべきアクションは異なります。どのようなアクションを取るべきかによって、適切なCASB製品の導入構成は変わります。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       1|2 次のページへ

新着ホワイトペーパー

市場調査・トレンド ゼットスケーラー株式会社

AIの悪用でフィッシング攻撃が巧妙化、今後の予測と防御方法を解説

今や誰もが入手可能となったフィッシングツール。そこにAIの悪用が加わり、フィッシング攻撃はますます巧妙化している。本資料では、20億件以上のフィッシングトランザクションから、フィッシング攻撃の動向や防御方法を解説する。

技術文書・技術解説 ServiceNow Japan合同会社

限られた人材でインシデントや脆弱性への対応を迅速化、その鍵となるのは?

セキュリティ対策チームの57%が人材不足の影響を受けているといわれる昨今、インシデントや脆弱性への対応の遅れが、多くの企業で問題視されている。その対策として有効なのが「自動化」だが、どのように採り入れればよいのだろうか。

製品資料 LRM株式会社

開封率から報告率重視へ、重要な指標をカバーする標的型攻撃メール訓練とは

年々増加する標的型攻撃メール。この対策として標的型攻撃メール訓練を実施している企業は多い。こうした訓練では一般に開封率で効果を測るが、実は開封率だけでは訓練の効果を十分に評価できない。評価となるポイントは報告率だ。

製品資料 LRM株式会社

新入社員の情報セキュリティ教育、伝えるべき内容と伝え方のポイントは?

従業員の情報セキュリティ教育は、サイバー攻撃や人的ミスによる情報漏えいから自社を守るためにも必要不可欠な取り組みだ。新入社員の教育を想定し、伝えるべき内容や伝える際のポイントを解説する。

製品資料 LRM株式会社

2024年発生のインシデントを解説、組織全体でのセキュリティ意識向上が不可欠に

2024年の情報漏えい事故の傾向では、攻撃者による大規模攻撃の他、社員や業務委託先のミス・内部犯行によるケースも多く見られた。インシデント別の要因と対策とともに、今後特に重要になるセキュリティ意識向上のポイントを解説する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。