痕跡の確保から復旧まで
ランサムウェア被害対策ガイドラインはどのように更新すべきか
ランサムウェア攻撃の増加により、ランサムウェア対策ガイドラインを最新のバージョンにする必要性が出てきた。ガイドラインはどのような要素を取り入れて更新すべきだろうか。
ランサムウェアに感染した場合、感染前のバックアップからデータを復元するだけでは不十分だ。包括的なランサムウェア対策のガイドラインを立てておくことは、情報セキュリティプログラムにとっての重要事項だ。新しい感染時対策ガイドラインの策定には、新しい脆弱(ぜいじゃく)性が識別されたときに情報セキュリティプログラムを更新するフィードバックループを考慮する必要がある。
ランサムウェア攻撃の影響は、ガイドラインの改善により軽減できる可能性がある。
併せて読みたいお薦め記事
泣き寝入りしないランサムウェア対策
「ランサムウェアにはバックアップ」で本当によいのか
この記事では、ランサムウェア対策ガイドラインと、感染時の企業の適切な対応について説明する。
ランサムウェア感染時ガイドラインの作り方
ランサムウェアの攻撃方法は、エンドポイントコンピュータのデータ暗号化だけではなくなった。クラウドサービスのサーバ、アプリケーション、データまでをも暗号化して、身代金の要求をする場合もある。詳細な事例は感染するシステムによって異なる。しかし包括的なランサムウェア感染時の対策ガイドラインをあらかじめ準備しておくことで、それぞれのシステムへの攻撃の影響を軽減できる。
感染時の対策ガイドラインは、バックアップ計画、事業継続計画(BCP)、災害復旧計画を組み合わせて相互に補完する必要がある。感染直後の対応と感染からの復旧にはこれら3つの計画の全てが必要となる場合もある。
ランサムウェア感染時の標準的な対策ガイドラインには、記録しておくべき感染の痕跡、エスカレーション方法の詳細、連絡先情報、根本原因の分析、感染データレポート、将来の感染を防止するためのセキュリティ管理、法的機関への連絡タイミングなどの事項が記載されている。このガイドラインに記載された内容が実際の感染に対して十分でない場合、または、さらに詳細な項目を追加する必要がある場合は、企業固有の感染時対策のガイドラインに追加記載すればよい。
ランサムウェア感染時対応計画を策定する際に、ランサムウェア感染や破壊的攻撃からの復旧に関するNIST(アメリカ国立標準技術研究所)のガイダンスが参考になる場合がある。事案ごとに、対策の文書化、実際に起こった場合の対応、事後のフォローアップは異なり、それぞれに独自の課題がある。優れたランサムウェア感染時のガイドラインは事案ごとの差異を網羅する。ガイドライン策定の際は、以下のような諸状況に考慮する必要がある。
- 痕跡の確保:ランサムウェアに感染した際は痕跡が見つかるが、それは時間が経過すると消滅する可能性がある。ランサムウェアが関与している場合、痕跡には暗号化を解除できる暗号鍵が含まれている可能性がある。ただし暗号鍵が見つかる可能性があるのは、この暗号鍵が削除される前に調査が開始された場合に限られる。感染直後に検出できた場合は、暗号化を停止することさえ可能な場合がある。
- 徹底的な調査:ランサムウェアが弱い暗号化を使用している場合は、セキュリティベンダーや研究者によって公開されている解読ソリューションを使用して解除できる場合がある。
- 法的機関への連絡:対応担当者は、影響の大きい事案やデータ漏えいの場合、法的機関に届け出ることができる。法的機関の専門家は、攻撃に関わった犯罪組織やその組織の前歴に基づいて身代金を支払う際のガイダンスを提供できる。
ランサムウェアへの企業の対応
ガイドラインに記載される、感染時の最初のステップは、感染の範囲と影響度を特定することだ。ガイドラインに従って対応することで、感染の範囲と影響度に応じて複数の対策を同時に実施できるようにする。
ガイドライン策定作業と実際の感染時対策に加えて、ガイドラインの検証作業も必要だ。検証作業は、ランサムウェア感染時の対応を検証することに焦点を当てた机上の検証作業により、既存のツールが感染時対応に十分か、追加のツールが必要かどうかを確認するために実施する。検証作業の頻度は、企業によって年次、四半期ごと、月次など適宜定めればよい。作業には、技術スタッフ、コミュニケーションチーム、法務部門などの関係者全てを含める必要がある。
企業は、ランサムウェア攻撃から復旧する際のバックアップの利用方法と、セキュリティツールに脅威に対する防御機能や回復機能が備わっているかどうかを確認した方がよい。既にある正常時のバックアップを使用して、ランサムウェアに感染したテストシステムが復元可能であることを確認できる。システムによっては、最新バージョンのファイルのみ、または、直近の数バージョンしか保存していないものもあるため、データとシステムの復元と、全ての重要なシステムへのアクセスをテストすることをお勧めする。
一部のエンドポイントセキュリティツールには、ランサムウェアの機能を検出してブロックする機能も追加している。サイバー保険に加入している場合は、ランサムウェア感染も保険の対象になっているかどうか確認しておくとよい。
感染防御と感染時対策のそれぞれに、どのくらい費用をかけるかのトレードオフを見直すことは、情報セキュリティの向上につながる。ランサムウェア感染時対策にかかるコストは、身代金を差し引いても、企業にとって重大かつ破壊的な規模になる可能性がある。そのため攻撃を受ける前に損失コストを評価し、ガイドラインに反映することがますます重要になる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[NTTPCコミュニケーションズ株式会社] 「回線速度不足」だけが原因ではない? Web会議の遅延を解決する方法とは -
製品資料
[東京エレクトロン デバイス株式会社] 工場の可用性向上に重要な「7つの領域」と対策 OTセキュリティ強化の基礎知識 -
製品資料
[リコージャパン株式会社] 問い合わせ対応で本来の業務が進まない、総務や情シスの負担をどう減らす? -
製品資料
[リコージャパン株式会社] 自社データから高精度な回答を生成、簡単に生成AIチャットボットを構築する方法 -
技術文書・技術解説
[アトラシアン株式会社] IT運用や従業員サポートは生成AIでどう変わる? 使い方や導入の流れは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
全社標準Copilotに絶望? MS Copilotで問い合わせ6割減できた企業は何が違った
-
2
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
3
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
-
4
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
5
身代金支払いは逆効果 情シスのためのランサムウェア対策ガイド2026
-
6
多要素認証導入済みでもランサムウェア被害に 復旧費用は平均2億7000万円
-
7
DXを阻む「動くだけ」のレガシーシステムに決別するための生成AI活用術
-
8
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
9
「ITインフラとデータ保護・バックアップ対策」に関するアンケート
-
10
自社を守る「SCS評価制度」活用法 7割の企業が取引先起点の情報漏えいに直面
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
2
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
3
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
4
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
5
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
「スクラム」と「カンバン」の違いとは? アジャイル型開発手法を徹底比較
-
8
AI時代に成功するための「ナレッジマネジメント」ベストプラクティス
-
9
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー