2022年06月03日 08時00分 公開
特集/連載

Raspberry Pi OSのデフォルトアカウントが廃止された納得の理由副作用に注意

Raspberry Pi OSのデフォルトアカウントである「pi」が廃止された。このわずかな修正の影響は大きい。デフォルトアカウント廃止の理由と副作用を説明する。

[Alex Scroxton,Computer Weekly]

 Raspberry Pi Foundationは、小さいが影響力は大きいアップデートを「Raspberry Pi OS」に行った。ブルートフォース攻撃に使われる可能性をなくすため、このアップデートによってデフォルトアカウントが取り除かれたのだ。

 ブルートフォース攻撃とは、簡単に言えば試行錯誤を繰り返すサイバー攻撃だ。驚くことに、この手口は依然として有効だ。数秒で見破られるような脆弱(ぜいじゃく)なパスワードを使うユーザーが非常に多いからだ。デフォルトのユーザー名が使われていたら、さらに簡単になる。

 これまでRaspberry Pi OSには、「pi」というデフォルトアカウントが用意されていた。だがRaspberry Pi Foundationのサイモン・ロング氏(シニアプリンシパルソフトウェアエンジニア)によると、一見無害に思えるこの機能が攻撃者による侵害を容易にしているという。

アップデートの影響

 「これはそれほど大きな弱点ではない。有効なユーザー名が分かっているだけではそれほどハッキングの役には立たない。パスワードを把握する必要があるし、そもそも何らかのリモートアクセスが可能でなければならない」

 「とはいえ、ブルートフォース攻撃がやや簡単になる可能性は否めない。これを受け、インターネットに接続する全ての機器に対してデフォルトアカウントを用意することを禁じる法案が提出された国もある」

 アップデートしたRaspberry Pi OSイメージではpiユーザーが廃止され、初回起動時にユーザーを作成しなければならない。

 この変更によって、piユーザーの存在を前提とするドキュメントやプログラムで幾つか問題が発生する可能性があることをロング氏は認める。だが、これはほとんどのOSが機能する仕組みに沿ったものであるため、「現時点で行うには妥当な変更だ」とRaspberry Pi Foundationは考えている。

 Raspberry Pi OSにログインするにはユーザーアカウントが必要だ。これまではデフォルトのpiユーザーでログインできたので、セットアップウィザードの使用はオプションだった。だが今回の変更によってpiユーザーがなくなるため、セットアップウィザードはオプションではなくなる。それ以外はほとんど変わらない。全く推奨できないが、ユーザー名とパスワードに「pi」と「raspberry」を設定することも可能だ。

 同時に、Raspberry Pi FoundationはBluetooth機器とRaspberry Piのペアリング方法も変更した。初めて「Wayland」の実行も実験的に有効化した。Waylandは、「UNIX」用ウィンドウシステムのデファクトスタンダードである「X Window System」の後継実装の一つだ。これらの変更の詳細は、Raspberry Pi Foundationのサイト(https://www.raspberrypi.com/news/raspberry-pi-bullseye-update-april-2022/)で確認できる。

 BulletproofのCEOオリバー・ピンソン=ロクスバーグ氏は、この小さな変更は正しい方向に進む重要な一歩だと説明する。Bulletproofが実施した調査を引用し、Raspberry Pi OSのデフォルトアカウントは攻撃者が頻繁に利用するアカウントのトップ10に入っていると指摘する。

 「Raspberry Pi OSを実行する機器は、インターネット上に20万台以上存在する。攻撃者にとって魅力的な標的だ。デフォルトアカウントの廃止はRaspberry Piにとって適切な措置だ。これによってRaspberry Pi機器全体でセキュリティ対策の最低限の標準が設けられ、システムを危険にさらしてきた脆弱性が解消される」

 「残念だがデフォルトアカウントの存在は、Raspberry Piに限られない、はるかに大きな問題だ。デフォルトアカウントを使い続けるユーザーは非常に多く、攻撃者が悪用できる土壌を生み出している」

 「当社のデータは、全Web活動の70%がbotによるトラフィックであることを示している。自動的な攻撃手法を利用するハッカーが増える中、デフォルトアカウントがハッキングを素早く連鎖させる『合鍵』として使われている」

 英国では「Product Security and Telecoms Infrastructure Bill」によってメーカーや小売業者にさまざまな規制が課され、最終的にはデフォルトアカウントをプログラミングできなくなる。この法案は現時点(原文公開時点)では庶民院の第三読会前の報告審議に進んでいる。

 この法案はスマートフォン、スマートTV、ゲーム機、監視カメラ、コネクテッドアラーム、スマート玩具、乳幼児監視機器、スマートホームハブ、「Amazon Alexa」などの音声アシスタント、コネクテッドアプライアンスなど、インターネットにアクセスできる全ての機器に適用される予定だ。スマート電球、スマート温度計、ウェアラブルフィットネスバンドなど、他の機器には接続できてもそれ自体は直接インターネットにアクセスしない製品も対象になるだろう。

 規制に従わない場合は1000万ポンド(約16億1700万円)または全世界の売上高の4%を最高額とする罰金が科せられ、違反が続く場合は日額最高2万ポンド(323万5000円)の罰金も科される。

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