Raspberry Piが10周年を迎えた。Raspberry Piの誕生から現在の誰も予想しなかった展開まで、Raspberry Piの歩みを創業者のコメントを交えて振り返る。
2012年3月に「Raspberry Pi Model B」がリリースされた。Raspberry Piは当初の低コスト教育用コンピュータから真に柔軟な汎用(はんよう)コンピュータへと拡大した。
Raspberry Pi財団のエベン・アプトン氏(創業者、CEO)は、1980年代の家庭用コンピュータで育ち、Acorn Computersの教育用コンピュータ「BBC Micro Model B」(以下、BBC Model B)の後継になるものを再現したいと考えていた。BBC Model Bは電源を入れるとBASICのインタープリタが起動する。「Raspberry Piの初期プロトタイプはBBC Model Bによく似ており、Pythonで起動するようになっていた」(アプトン氏)
2012年のリリース当時、Raspberry Piは今よりもはるかにシンプルで、ソフトウェアは付属していなかった。Raspberry Piを購入したユーザーは、PCまたは「Mac」でRaspberry Pi用の「Linux」ディストリビューション(訳注)をダウンロードし、そのOSイメージファイルをmicroSDメモリーカードに書き込む必要があった。このmicroSDでRaspberry Piを起動する。
訳注:利用可能なOSは複数あるが、代表的なものは「Debian GNU/Linux」ベースの「Raspbian」(現「Raspberry Pi OS」)。
「人々は当初、Raspberry Piを風変わりなLinuxコンピュータにすぎないと思っていた」(アプトン氏)
Raspberry Piの成功について、アプトン氏は次のように述べている。「利益を出すつもりはなかった。だが、利益が生まれてRaspberry Pi財団の支えとなり、可能な慈善活動が増えている」
最も誇りに思っていることについて、アプトン氏は「ケンブリッジ大学コンピュータサイエンス学部の学生用アプリケーションを増やしたかった。母校のために何かをできたことを誇りに思っている」と答えた。ケンブリッジ大学でコンピュータサイエンスを学ぶためのアプリケーションは200から1500に増えたと同氏は補足する。
Raspberry Piは誰も可能だとは考えなかった分野でも使われている。その一例が米ロスアラモスにあるスーパーコンピュータ施設だ。
「私たちは子供たちにRaspberry Piを与えることを考えていた。だが、それが大規模になると人々は非常に変わったことを始める。スーパーコンピュータを構築するためにRaspberry Piを使うなど考もしなかった」(アプトン氏)
もう一つは、「Raspberry Pi Zero」とカメラをベースとする超小型衛星の構築例だ。この超小型衛星は国際宇宙ステーションから軌道に投入された。
Raspberry Piは拡張されている。本格的なマイクロコンピュータシステムである「Raspberry Pi 400」(キーボード一体型)、低価格のRaspberry Pi Zero、マイクロコントローラーの「Raspberry Pi Pico」もある。アプトン氏はブログ記事で、Raspberry Pi Picoを自社製マイクロコントローラー「RP2040」(訳注:Armベースチップ)を搭載する初の製品だと紹介し、既に約150万台のRaspberry Pi Picoを販売したと補足している。
同じブログ記事にアプトン氏は次のように書いている。「ユーザー独自の電子プロジェクトや電子製品に何千ものRP2040が使われている。世界的な半導体不足で多くのマイクロコントローラーが入手困難になるにつれ、一度に数万個購入したいという声も聞こえ始めている」
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