FinOpsはクラウドコストの最適化を目指す取り組みだ。3つのフェーズを実践することで、無駄なコストが可視化される。FinOpsを既に実践している地域、これから導入が伸びる地域とはどこか。
ITの調達は一部門が一括して行うことが多い。だがクラウドについてはそれが当てはまらず、事業部門が購入を決める場面が増えている。
「企業は説明責任とガバナンスを組織全体に振り分けるのに苦労している」と語るのはApptioのベン・アラード氏(アジア太平洋地域バイスプレジデント)だ。
「この作業には、クラウドサービスとその利用方法の可視性を提供すること、クラウド利用が増加し始めたときにリソースの一括割引をクラウドプロバイダーに求めるタイミングを見極めることなどが含まれる」と同氏は補足する。
こうした課題を解決するためにFinOpsを導入する企業が増えているとアラード氏は言う。
FinOpsとは、事業部門、IT部門、財務部門が一体となってクラウド支出の意思決定を促進する運用モデルだ。FinOps(Financial Operations)は、Finance(財務)とDevOpsから生み出された造語だ。
クラウドサービスプロバイダーも、クラウド財務管理ツールを提供することでFinOpsに着手している。コンサルティング企業はFinOpsのプラクティスを確立し、そのメリットを享受するために必要な文化の変化(コストの最適化にエンジニアを関与させるなど)とガバナンスを推進している。
FinOpsのライフサイクルは3つのフェーズから成る。最初の情報提供フェーズでは、誰が、なぜ、何のためにクラウドサービスを調達したかについての可視性を提供する。これにより、ワークロードの担当者がクラウドサービスのコストと使用状況を認識できるようにする。
2つ目の最適化フェーズには社内ベンチマークが含まれる。このベンチマークによってクラウド利用に各チームがどのように関わっているかを把握できるようになる。ワークロードを適切なサイズにすれば無駄を最小限に抑えられる。ワークロードの一貫性によって使用量割引を享受することも可能だ。
3つ目の運用フェーズでは、部門ごとにクラウドによる経済性を全社で追跡し、クラウドサービスが適切な目的に使われていることを確認する。これによってクラウドの使用量を増やすためのビジネスケースを構築できる。時間とともに増加するクラウドコストを予測して予算化するための適切な可視性も得られる。
クラウドサービスに年間500万ドル以上支出している大企業はFinOpsを採用する可能性が高い。こうした企業はクラウドプロバイダーが提供するFinOpsツールを利用していた。だが、FinOpsの財務面を管理するにはもっと高度なツールが必要なことに気付いた。
複数のパブリッククラウドプロバイダーを利用する企業もFinOpsに足を踏み入れている。「プロバイダーを複数利用すると、クラウドへの支出が比較的高くなる。こうした企業は、FinOpsを利用してクラウド導入に対するアプローチと規律を変える必要がある」
「デジタルネイティブ企業には従来のインフラの負担がない。そのため東南アジアでFinOpsの導入が進むとみている。まだそれほど多くないが、今後数年でかなり大きく変化するだろう」(アラード氏)
FinOps Foundationが公開した「State of FinOps」によると、全世界でFinOpsを実践する企業が最も多いのが北米で、ヨーロッパと中東が続いている。アジアでFinOpsを実践している企業の数は全回答企業の約7.8%だった。
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