今すぐできるIaaSコストお手軽節約術IaaSとSaaSのコスト最適化【前編】

パブリッククラウドを利用する際の最優先事項はコスト管理だ。IaaSの場合は今すぐできる簡単な方法から着手しよう。その後考慮すべきさらなる節約のヒントも紹介する。

2019年04月26日 08時00分 公開
[Rich GibbonsComputer Weekly]

 IaaS市場の首位を走るのは「Amazon Web Services」(AWS)で、これに僅差で2位につけるのが「Microsoft Azure」だ。SaaS市場はIaaS市場よりも成熟していて、参入企業数ははるかに多い。著名なSaaSにはMicrosoftの「Office 365」、Googleの「G Suite」、Salesforce製品、「Adobe Creative Cloud」などがある。

 IaaSもSaaSも企業に潜在的メリットを幅広く提供し、アジリティーの強化、初期費用や運用コスト(OPEX:Operating Expenditure)の削減、市場投入にかかる時間の短縮、優れた実験台、技術面での柔軟性などを実現する。だが新たなリスクが生じることも確かだ。こうしたリスクの多くを軽減するのに適任なのがIT資産管理の専門家だ。

最優先はコスト管理

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 IaaSの大きな魅力は、始めるのがとても容易なことだ。ポータルにログインすれば仮想世界が思いのままになる。

 IaaSの大きなリスクは、始めるのがとても容易なことだ。従業員がIaaSを使い始めても、監視がほとんどまたは全く行われない可能性がある。

 リソースをオンプレミスで使うこととクラウドで使うことは根本的に異なる。オンプレミスならばサーバハードウェアとソフトウェアライセンスは購入済みなので、基本的には稼働を続けることが適切だと考えられる。使うほど投資利益率(ROI)は高くなる。

 オンプレミスでWindowsベースの仮想化環境を構築する際に大きな懸念となるのは、VMの運用数に対してライセンス数が不足することだ。そのため大半の企業はWindows Server Datacenterのライセンスを適切に取得し、無制限のVMを動かす権限を付与することになる。

 Microsoft AzureやAWSなどのサービスの主なセールスポイントは従量制の料金システムだ。物理ハードウェア(および必要なソフトウェアライセンス)を事前に購入しても、使用率が非常に低くなることもある。従量課金制であれば、その時点で必要なVMを作成するだけだ。これは便利に思える。だが、パブリッククラウドプロバイダーにとって「使用中」とは「スイッチオン」を意味することに注意しなければならない。電源が入った状態のまま使われていないVMは、お金を無駄遣いしていることになる。

 一例を考えてみる。日数が31日の月の総時間数は744時間になる。つまり最大744時間分課金される可能性がある。テストや開発が目的の場合、クラウドリソースが絶えず必要になることはないため、停止するだけでも大きな節約になる可能性がある。週末にVMを停止すれば192時間も節約できる(土日が8日の場合)。

 次に「勤務時間」を定め、その時間以外はVMを停止する。これにより稼働時間は大幅に短くなる。勤務時間を朝7時から夜7時に設定すればVMをさらに276時間停止でき(平日が23日の場合)、総計468時間の削減が可能になる。1時間当たり3ポンド課金されるとしたら、1カ月に1404ポンド(約20万3850円)の節約になる。逆に、停止しなければ1404ポンドが無駄になる。

 IaaSのコスト管理にはこれ以外にも多くの要素がある。以下に、これ以外の方法を3つ示す。

  • プロビジョニング

クラウドリソースが過剰にプロビジョニングされていないかどうかを監視する。VMでもコア数が48個のものと16個のものではコストに大きな違いがある。

  • リソースの構成

費用が発生しているリソースが本当に使われているかどうか、または簡易的で安価な構成に変更可能かどうかを検討する。

  • 課金方法

IaaSのデフォルトの課金方法になっていることが多い従量課金は、柔軟性が非常に高いものの、必ずしもコストパフォーマンスが最も高い選択肢ではない。リザーブドインスタンス(予約インスタンス)を提供しているクラウドプロバイダーは多く、長期にわたるクラウドワークロードのコスト節約が可能になる。リザーブドインスタンスを最適に利用するには、コストに関するレポートと分析を詳細に行う必要がある。

 パブリッククラウドのガバナンスは口で言うほど簡単ではない。以下に、知っておくべき極めて重要な3つの点を紹介する。

  • どのクラウドを使用中か
  • どのリソースを作成しているか
  • それらのリソースを作成できるのは誰か

 これらを確認したら、全関係者と新しいガイダンスについて協議し、ガイダンスを順守するように関係者のチームと連携することが必要だ。

 「人、プロセス、ツール」はIT資産管理で頻繁に使われる格言だが、パブリッククラウドも例外ではない。パブリッククラウド管理の「人」と「プロセス」については、また別の詳細が含まれる可能性はあるものの、恐らくオンプレミスの管理とかなり似ている。ただし「ツール」がパブリッククラウド管理とオンプレミス管理で異なることは、ほぼ間違いない。

後編(Computer Weekly日本語版 5月8日号掲載予定)では、IaaSよりも厄介なSaaSのコスト節約方法を検討する。

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