基調講演に先立ち、あいさつに立った日本アイ・ビー・エム 専務執行役員 ソフトウェア事業担当 三浦 浩氏は、「“全方位コラボレーション”をキャッチフレーズにする通り、Lotusはさまざまな場面において多彩なツールを活用した生産性の向上、業務改革を推進するツール群の確立を目指している。今後、『Lotus Notes/Domoino 8』や『Lotus Sametime』『IBM Mashup Center』などのツール連携によって、エンタープライズ環境とその外側で起こっているWeb 2.0のムーブメントをスムーズにつなげるものにしたい」と述べる。
Lotusブランドは、データベースの「DB2」やソフトウェア開発の「Rational」、アプリケーションサーバの「WebSphere」、統合運用管理の「Tivoli」といった同社のソフトウェア5事業の中でも最も古い歴史を持つ。一方で、Lotusはユーザーとのインタフェースをつかさどるツールであるため、時代を先取りして研究開発を続けているという。
「20世紀末には既に100万を超えていたLotusユーザーは、現在その数倍に増加している。今後はポータルやWebとの融合を通じて、ユーザーのワークライフバランスを大きく改善する技術になっていくだろう」と三浦氏は語り、今後の発展にも自信を見せる。
そして、基調講演では、日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業 Lotus事業部 事業部長の澤田千尋氏が登壇。「個と個のつながりを強化する3つの要素、『Communication』『Coordination』『Collaboration』でLotusは長年製品を提供してきた」と語る。
2008年1月にフロリダで開催された「Lotusphere2008」でも、2010年までに数多くの製品をリリースしていくロードマップを発表しているが、澤田氏はそれら注目される新製品の状況についてあらためて報告した。まず、「Lotus Sametime 8.0」の紹介では、「Lotus Sametime Entry」が既にNotes 8に組み込まれ、チャットや在席管理の基本機能が利用可能になっている。また、VoIPによる電話機能の融合を狙い「Sametime Standard」では音声チャットやWeb会議を提供。「Sametime Advanced」ではチャットルームなどの新機能が加わるという。さらには、複数のPBX網をつなぐハブとなる「Sametime Unified Telephony」の製品発表も予定している。
さらに、7月2日に発表した「IBM Mashup Center」は、Lotus Notes/Dominoに次ぐ第二のエンドユーザーコンピューティングとして大きな期待が寄せられているという。従来のIT部門が維持管理する全社的アプリケーションとは異なり、IT部門の支援なしにユーザー自身がアプリケーションを作るエンタープライズシステムとなる。
「IBM Mashup Center」はウィジェットを組み合わせる「Lotus Mashups」と、Web・部門・個人のあらゆるデータを再利用する「InfoSphere MashupHub」で構成《クリックで拡大》2008年の夏以降出荷されるNotes 8.0.2ではクライアントのパフォーマンスを向上させ、Domino 8.5によるWebアプリケーションではUIをよりインターネット的に改善するという。なお、Notes 8からOpenOffice.orgのサブセットを「IBM Office Productivity Tool」として標準搭載したが、「Lotus Symphony」ではOpenOffice.orgの有償サポートを日本でも開始する。上限2万ユーザーを条件に、年間357万5000円(税別)の固定料金で利用できるというこのサービスでは、仮に2万人で利用した場合、1人年間180円というコストパフォーマンスが売りとなる。
また、Notes関連では「Atlantic」と呼ばれるプロジェクトも進行中で、「SAP ERP」とLotus Notes/Dominoとの組み合わせをカスタマイズなしに利用できるアプリケーション製品が、2008年中に出荷される計画だという。
加えて、サーバOSやLotus Notes/Dominoを搭載した小型のアプライアンス製品「Lotus Foundations」も出番を待っている。これは50〜100ユーザーといった中小規模ユーザー向けの製品となる。
最後に澤田氏は、「日本のCEOが変革を目指すためには、既存インフラを有効に活用することがカギになる。これまで培ったLotus Notes/Dominoの情報基盤を今後どのように利用し、新たなコラボレーションツールをいかに取り入れていくかが重要になる」と語り、基調講演を終了した。

LotusDay 2008の初日では、「Lotus Notes/Dominoが果たした役割と今後の展望〜ユーザー利用事例から考える今後のシステム課題を探る」と題し、ノーツコンソーシアムのメンバー代表と日本アイ・ビー・エムのゲストコメンテーターによるパネルディスカッションが行われた。今回は初めての試みとして、会場の参加者からサーバ管理者、ユーザー、ベンダーを取り混ぜた10人に協力を願い、Lotus Sametimeを利用したアンケート投票で参加する方法も取り入れられた。
モデレーター役を務める大塚商会の丸山義夫氏からの「Lotus Notes/Domino 8の売りは何?」という問いかけに対し、10人の参加者は、「コンポジットアプリケーション」(6人)、「Lotus Sametime連携」(2人)、「Lotus Domino Web Access(DWA)がよい」(1人)、「何もない」(1人)、「メールのリコール機能」(0人)という回答を返した。
これを受け、日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業 ロータス事業部の森島秀明氏は、「新しいLotus Notes/Dominoを良く理解していただいているようだ。UIが細かい積み重ねで大きく向上している点にも注目してもらいたい」と述べ、Lotus SametimeによるNotesとIP電話の連携で簡単に社内通話が可能になった点や、チャット相手とのファイル転送が容易になったことも強調した。
同じく、日本アイ・ビー・エムの技術理事を務める関 孝則氏は、「90年代から基幹連携や企業の業務メニューの代用として数々のチャレンジが行われてきたが、Notesは個性が強く、それらとなじまなかったという印象が強かったかもしれない。しかしNotes 8ではインターネット技術によるオープン化など使いやすさを実現し、外の世界と親密につながっていくための大きな転換点に立っている」と強調した。
一方、ユーザーの立場としてパネルに参加したTDKの千代和久氏は、「まだ、イマイチという印象」との辛口コメントをぶつける。「当社はR6のサポート切れの問題もありNotes 8への移行を検討しているが、Windows Vistaでの利用に関して幾つか不安がある。また、経営者の心に響くよう、バージョン移行するメリットをもっと明確にしてほしい」と要望した。OSの問題のほか、コンポジットアプリケーションがBasic版(Lotus Notes 8 Basic)では利用できないことや、Lotus SametimeがNotes 8ではチャットしか使えないことなども不満点として指摘していた。
次に、「Lotus Sametimeに最も必要な機能とは?」との問いに対し、参加者の回答は、「ボイスチャットやネットミーティング」(5人)、「チャット」(2人)、「教育ツール」(2人)、「在席確認」(1人)となった。これを見た丸山氏は、「標準装備しているサービスの方があまり人気がないようだ」とチクリ。一方、千代氏は「TDKは海外拠点との会議が多いのだが、専用のテレビ会議システムを利用するより、Lotus Sametimeを使った方が遠隔地とのコミュニケーションのハードルは低くなる」と評価する。
関氏も「Lotus Sametimeが誕生したのが2000年。当初は役員秘書の方々が使い出し、その便利さから一気に広まった。メールよりインフォーマルで使え、電話で依頼事を伝えるより簡単な感じが良かったようだ」と振り返る。大部屋でのコミュニケーションが遠隔地でも実現できる点がLotus Sametimeのメリットなのだという。
そして話題は、モバイルでのLotus Sametime利用へ。ウィルコムの図子純也氏は「多くのNotesユーザーからモバイル環境でのLotus Sametime利用やDBアクセスなどの希望が寄せられている。スマートフォンユーザーはMicrosoft Exchange Serverのユーザーが多く、DWAでのリクエストはまだ少ないのが現状だが、UMPC(ウルトラモバイルPC)に最も期待しているのはNotesユーザーだ」と明かす。
その流れで示された「Notesを利用したいモバイル環境は?」の問いには、「携帯電話」(4人)、「スマートフォン」(3人)、「UMPC」(2人)、「ノートPC」(1人)というまちまちの反応だった。
パネラーの1人、日軽情報システムの北垣 保氏は、「当社でも携帯電話での運用を検証しているが、添付ファイルを見たい、GUIを何とかしてほしいといったユーザーの要望にどうやって応えるかが問題だ。その点、UMPCはほぼPCと同環境なので、選択肢としては有力」と期待する。
その後、パネル上ではOS問題が取り上げられ、Windows VistaとWindows XPの混在状況における、Notesのバージョン対応の難しさに話題が移った。森島氏は「選択肢を増やしてユーザーの自由度を確保することはベンダーとしての務め」としながら、「Vista移行によるマイクロソフトへのロックインに対抗するため、2003年ごろからLinuxやMac OSに対応する動きも始まっている。Notes 8がEclipseベースに変わったのもその大きな理由」と発言。「NotesかExchangeか?」といった選択ではなく、社内にあるすべてのアプリケーションのセキュリティやクライアントコントロールをどうすべきかという大きな基本思想にかかわるものだと強調した。
また、モデレーター丸山氏からの、「いまだR4やR5のユーザーも多い。サポートのルールというものはあるのか」という問いに、森島氏は「基本的には、メジャーバージョンアップの2世代前までとしているが、インストール状況によって変わる場合もある」とあいまいな答えにとどめる。
北垣氏からは、「当社はR5のため、既にサポートが切れてから4年が経過しているが、現在も十分使えている。Notesは作法さえ押さえていれば十分使いものになるツールといえる」という意見も出された。とはいえ、同氏は現在のバージョンを使い続けるためのサービスがあればうれしいとも本音を漏らす。
だが、「Dominoのバージョンサポートに関して」というアンケートには、「やはり情報システムとしてはメーカーサポートが欲しい」(6人)、「サポートは必須である」(2人)と、多くがサポートの必要性を感じており、「サポートなしでもいい」(2人)は少数派だった。
一方、バージョンアップにおける費用対効果に関して、千代氏は「OS対応や保守だけで費用を正当化することは難しい。運用でカバーしていた機能が標準で盛り込まれたり、便利な付属機能が加わったりするなど、今後の可能性を加味して費用対効果を考えるようにしている」と話す。丸山氏も「エンドユーザーの欲しい機能があるかどうかが、今後のLotus Notes/Domino 8が普及するキーワードになるだろう」と指摘する。
それに対して森島氏は、「ユーザーのニーズを、メーカーが製品にすべて盛り込むことには疑問がある。補完的な機能開発はパートナー企業に委ねることが、IT業界として健全な発展の姿ではないか」という考えを示す。さらに、サポート期間の延長に対しては「新しい技術の進展よりも現状技術の維持を優先することが正しい選択なのかどうか」(森島氏)と疑問を呈する。
次のアンケートでは、Lotus Notes/Domino 8で話題となる「Active Directory(AD)やLDAP対応は必須か」といった質問が出された。予想通り、「必須だと思う」(9人)に対し、「Dominoディレクトリで十分」(1人)と明確な結果となった。
TDKの千代氏も、グローバルでも最もメンテナンスが行き届いているNotesをコアなディレクトリにしたいというニーズがあるとした上で、「派遣社員や契約社員が増加した現在、その方々がコアディレクトリに登録されていないと、入退出管理やDHCPによるIPアドレス取得の場合に問題になるのだが、Notes利用はユーザーライセンス契約が前提となるので登録できない。LDAPユーザーとしてのみ利用できる仕組みがあれば便利なのだが」と訴える。
丸山氏も大塚商会というパートナーの立場から、「ほとんどの顧客がADを導入している現状を考えると、Dominoディレクトリとの二重管理が運用面で負担となるだろう」と懸念を示す。
Notes 8.5以降では何を優先させるのかについて、森島氏は「LDAP対応か、Web回りのUIを改善するか、それをβ版公開で洗い出そうとしている。現在のところ、ディレクトリ対応よりもDWA対応への希望が多い」と明かす。また、海外ではLinux対応への要求が強く、日本のようにWindowsにおけるADでクライアントをすべてコントロールするという考え自体が古くなりつつあるという。
そして最後に、「Notesは好きか嫌いか」という根本的な質問が投げられ、参加者からは「好き」(8人)、「嫌い」(0人)、「どちらでもない」(1人)、「分からない」(1人)という結果が示された。
それを受けて関氏は、「Notesが好きという意見が多いのは、恐らく『Notes的なもの』を日本人が好むからではないか。企業内の情報化推進にはアプリケーション開発環境が必須となるが、それをボトムアップでも可能にしたことが日本でNotesが評価された理由であり、海外ではあまり見られない傾向だ。そういう意味では日本人とNotesの相性は良い。今後もNotesのボトムアッププロセスが日本の企業を強くするといえるだろう」と語り、パネルディスカッションは閉幕した。