iPhoneは「仕事にも使える」かもしれないが、Appleが端末全体の暗号化機能を追加しない限り、大企業による採用は難しいだろう。
AppleのiPhone 3Gのテレビコマーシャルの1つに、「仕事にも使えます」というナレーションでコンシューマーに語り掛ける場面があった。
確かにその通りだ。新iPhoneで利用可能になったExchange ActiveSyncにより、ユーザーは電子メール、予定表、アドレス帳にアクセスできるようになった。これはまさに、多くのコンシューマーが必要としている機能である。一部のITマネジャーも同じように感じているかもしれない。端末の物理的技術、優れたブラウザ、そして新たに搭載されたExchange Serverとの同期機能により、iPhoneが業務でも利用できるようになったと考えているCIOも少なくない。
しかしセキュリティ要求が高い多くの企業によると、iPhoneのセキュリティは不十分だという。特に、端末全体の暗号化機能を備えないことが最大の難点だ。
ニューヨークに本社を置く金融機関Liquidnetでグローバルセキュリティ責任者を務めるアル・バーグ氏は「Appleが本気でiPhoneを企業市場に進出させるつもりなら、この問題に対処する必要がある」と指摘する。Liquidnetは、資産運用企業向けのオンライン証券取引サービスを専門とする企業。バーグ氏によると、同社の顧客は匿名性を望んでいるが、暗号化機能がなければ、同氏は匿名性を保証することができないという。
「実はわたしもiPhoneのファンだが、Appleがオンデバイスの暗号化機能をiPhoneに組み込まなかったことは問題だ。確かに端末を紛失した場合には、リモートでデータを消去できるようにはなっている。しかし、端末の紛失から報告されるまでの間のタイムラグが問題であり、データを消去しても安心はできない」とバーグ氏は話す。
AppleがiPhone向けにリリースしたSDK(ソフトウェア開発キット)を利用すれば、サードパーティーの開発者は個々のアプリケーションを暗号化することはできるが、端末全体を暗号化するツールは作成できない。
Current Analysisの主席アナリスト、キャサリン・ウェルドン氏によると、AppleがiPhoneで端末全体の暗号化を可能にしなかった理由が分からないという。
「Appleは今でも基本的にコンシューマービジネスに注力しているが、いずれSDKをアップデートし、企業での業務利用にも対応できるようにするだろう」とウェルドン氏は語る。
それまでの間、Appleはコンシューマーに向けた宣伝として、「iPhoneは仕事にも使える」というメッセージを送り続けるだろう。
「わたしにとって、Appleの問題はそこだ」と話すのは、コンサルティング会社J. Gold Associatesのジャック・ゴールド社長だ。「ActiveSyncを使ってExchange Serverと同期できるだけで十分だとAppleは考えているようだ。確かにそれは不可欠な機能の1つだ。電子メールとの接続機能がなくても構わないというユーザーはほとんどいない。しかしその次の段階として、セキュリティとアクセスも重要だ」
なお、この問題に関してAppleに何度もコメントを求めたが、返答はなかった。
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