iPhoneの暗号化はセキュリティを重視する企業にとって必須iPhoneはセキュリティが不十分?

iPhoneは「仕事にも使える」かもしれないが、Appleが端末全体の暗号化機能を追加しない限り、大企業による採用は難しいだろう。

2008年09月19日 07時30分 公開
[Shamus McGillicuddy,TechTarget]

 AppleのiPhone 3Gのテレビコマーシャルの1つに、「仕事にも使えます」というナレーションでコンシューマーに語り掛ける場面があった。

 確かにその通りだ。新iPhoneで利用可能になったExchange ActiveSyncにより、ユーザーは電子メール、予定表、アドレス帳にアクセスできるようになった。これはまさに、多くのコンシューマーが必要としている機能である。一部のITマネジャーも同じように感じているかもしれない。端末の物理的技術、優れたブラウザ、そして新たに搭載されたExchange Serverとの同期機能により、iPhoneが業務でも利用できるようになったと考えているCIOも少なくない。

 しかしセキュリティ要求が高い多くの企業によると、iPhoneのセキュリティは不十分だという。特に、端末全体の暗号化機能を備えないことが最大の難点だ。

 ニューヨークに本社を置く金融機関Liquidnetでグローバルセキュリティ責任者を務めるアル・バーグ氏は「Appleが本気でiPhoneを企業市場に進出させるつもりなら、この問題に対処する必要がある」と指摘する。Liquidnetは、資産運用企業向けのオンライン証券取引サービスを専門とする企業。バーグ氏によると、同社の顧客は匿名性を望んでいるが、暗号化機能がなければ、同氏は匿名性を保証することができないという。

 「実はわたしもiPhoneのファンだが、Appleがオンデバイスの暗号化機能をiPhoneに組み込まなかったことは問題だ。確かに端末を紛失した場合には、リモートでデータを消去できるようにはなっている。しかし、端末の紛失から報告されるまでの間のタイムラグが問題であり、データを消去しても安心はできない」とバーグ氏は話す。

 AppleがiPhone向けにリリースしたSDK(ソフトウェア開発キット)を利用すれば、サードパーティーの開発者は個々のアプリケーションを暗号化することはできるが、端末全体を暗号化するツールは作成できない。

 Current Analysisの主席アナリスト、キャサリン・ウェルドン氏によると、AppleがiPhoneで端末全体の暗号化を可能にしなかった理由が分からないという。

 「Appleは今でも基本的にコンシューマービジネスに注力しているが、いずれSDKをアップデートし、企業での業務利用にも対応できるようにするだろう」とウェルドン氏は語る。

 それまでの間、Appleはコンシューマーに向けた宣伝として、「iPhoneは仕事にも使える」というメッセージを送り続けるだろう。

 「わたしにとって、Appleの問題はそこだ」と話すのは、コンサルティング会社J. Gold Associatesのジャック・ゴールド社長だ。「ActiveSyncを使ってExchange Serverと同期できるだけで十分だとAppleは考えているようだ。確かにそれは不可欠な機能の1つだ。電子メールとの接続機能がなくても構わないというユーザーはほとんどいない。しかしその次の段階として、セキュリティとアクセスも重要だ」

 なお、この問題に関してAppleに何度もコメントを求めたが、返答はなかった。

会員登録(無料)が必要です

関連ホワイトペーパー

iPhone | Apple | 暗号化


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

事例 Jamf Japan 合同会社

BYOD時代のIT統制強化術、事例で学ぶ安全なAppleデバイス管理

ソフトバンクロボティクスでは、働き方の変化や海外拠点の増加に対応する中で、ゼロトラストセキュリティを前提としたグローバルレベルのIT統制が必要となった。Appleデバイスを業務利用する同社は、どのようなアプローチを採用したのか。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

iPhoneやAndroidスマホを「ノートPC」に変える方法

スマートフォンの進化により、「ノートPCとの2台持ち」の必要性は薄れつつある。スマートフォンをノートPCとして使うための便利な方法を解説する。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

「在宅ワークに飽きた」を解消する“激推しガジェット”はこれだ

テレワークの普及に伴い、スムーズな仕事を実現するだけではなく、ギークの知的好奇心さえも満たすガジェットが充実している。ギークが他のギークに“激推し”したくなるガジェットを紹介しよう。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

「Galaxy S24」が予感させる“AIスマホ時代の始まり”

AI(人工知能)技術の活用が広がる中で、スマートフォンの利用はどう変わろうとしているのか。Samsung Electronicsが発表したスマートフォン新シリーズ「Galaxy S24」を例にして、“AIスマホ”の特徴を紹介する。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

iOSを危険にさらす新手口 ユーザーを脅かす「機内モード」の“わな”とは?

ネットワークからデバイスを遮断する「機内モード」。それを悪用する攻撃が見つかった。「iOS」搭載デバイスを狙うその手口と危険性とは。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news103.jpg

「AR」でMetaに勝てる? SnapのCEO、エヴァン・シュピーゲル氏はこう語った
SnapのCEO、エヴァン・シュピーゲル氏が最近、動画インタビューに立て続けに登場している...

news085.jpg

SEOに欠かせない「インデックス」について徹底解説【初心者必見】
今回は、SEOにおける「インデックス」について、わかりやすく解説します。

news090.jpg

マーケ担当者はなぜ「広報」を誤解するのか?
「マーケティング」と「広報」活動は似て非なるもの。この連載では2つの業務を兼務する人...