IT業界でも2009年4月以降の会計年度から適用される「工事進行基準」。従来のプロジェクト管理とはどう変わるのか? 工事進行基準に対応したプロジェクト管理ツール導入のメリットを考えてみる。
システム開発の現場では、専用ツールやMicrosoft Office Excel(以下、Excel)など、さまざまなツールを利用したプロジェクト管理が行われている。TechTargetジャパンが2008年に実施した「プロジェクト管理ツールの利用状況に関するアンケート」では、「導入済みのプロジェクト管理ツールは何か?」という問いに対して、「Excelを使用している」と回答した読者が全体の67.8%を占め、また「Excelで自前のツールを作成している」という意見も多く見られた。
最近、プロジェクト管理者を悩ませているのが「工事進行基準」への対応だ。工事進行基準は、工事の進ちょく度に応じて売り上げを分散して計上する会計の仕組みである。欧米諸国や日本の建設業界などでは一般的な会計基準だが、IT業界でも2009年4月以降に始まる会計年度から原則として適用される。
これにより、受託ソフトウェアやシステム開発における「収益総額、原価総額、決算日における進ちょく度」について、合理的な見積もりの実施と当期の工事収益および工事原価を財務諸表(損益計算書)に計上する必要が出てきた。
工事進行基準では、決算ごとに見積もり額が企業の会計処理に直接影響を与えることになる。これまで、実現主義(※)によってあいまいな見積もりが定着している場合は、特に気を付けなければならない。
目的物の引き渡しをもって契約の完了と考える、会計上の収益認識方法。これまでIT業界で適用されてきた「工事完了基準」は、この実現主義に基づいている。一方、工事進行基準は、工事の完成度に応じて収益と原価を会計期間ごとに計上する「発生主義」に基づいている。
工事進行基準で求められる「プロジェクト進ちょくの実態に即した売り上げの計上」は、人手によって管理すると煩雑になり、計上金額の精度面においても問題が発生する可能性がある。また、Excelや単純な進ちょく管理、情報共有機能のみを持つツールでは、原価計算や会計処理といった細かい分析を行うのは難しくなる。
できることならば、工事進行基準に対応したプロジェクト管理ツール(以下、PMツール)によって、プロジェクト管理者の負担を減らしながら、プロジェクト進ちょくと整合性の取れた売り上げ計上を実現したいものだ。では、管理者がExcelをベースにして手作業で管理した場合、どのような問題が起こるのだろうか。
工事進行基準を適用したプロジェクト管理は、見積もりの時点で始まっている。なぜならば、工事契約に関する会計基準にて「信頼性を持って『工事収益総額、工事原価総額、決算日における工事進ちょく度』を見積もることができなければならない」と定められているからだ。
また、見積もりの精度を高めるためには「過去の見積もり実績からの工数の標準化、プロジェクト情報の集約と再利用」などが重要となる。集約された過去の健全な類似プロジェクト情報を検索・参照することで、見積もり能力の個人差を埋めることができる。さらに、プロジェクト工数を標準化することで、見積もり精度の安定化を図ることにつながる。
一方、手作業で過去のプロジェクト情報を管理した場合、その情報の再利用は容易ではなく、工数がかさむばかりか、信頼性維持の実現性も低くなる。さらに、プロジェクト進ちょくと整合性が維持された売り上げ計上処理についても、手作業での信頼性維持は困難だといえる。プロジェクトメンバーの作業実績と個々のWBS(Work Breakdown Structure)の進ちょく状況との関連付けをすべて手作業で行うことになり、正確性の保証が困難になるからだ。
工事進行基準に対応したPMツールを利用すると、前述した手作業の管理による問題を解決できる。そもそも「工事進行基準に対応する」とは、どういうことなのか? 今回は、以下の2つの要件を満たしたツールを工事進行基準に対応していると定義した。
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