デスクトップ仮想化導入のガイドライン【第5回】
デスクトップ仮想化導入で準備すべき技術的なポイント
デスクトップ仮想化プロジェクトを進めるに当たり、サーバ、ストレージ、セキュリティなど、技術的に準備・検討しておかなければならないポイントを解説する。
今回は、デスクトップ仮想化プロジェクトを始めるに当たって、技術的に準備、理解しておきたい各コンポーネントについて取り上げ、ポイントを解説する。仮想化方式については、既に第4回「5つの仮想化方式を一覧表で比較 ~デスクトップ仮想化導入で準備すべきこととは」で解説したので割愛する。
認証システム
多くのデスクトップ仮想化ソリューションはWindowsシステムを前提に考えられているため、Microsoft Active Directory(AD)を用いたドメイン環境で稼働する。従って、ADによる認証システムを準備しておく必要がある。ここは、従来のPC環境であっても仮想デスクトップ環境であっても変わらない部分だ。また、リモートアクセスを行うユーザーについては、AD認証と他の認証を組み合わせる二要素認証を適用するのが一般的だ。アクセス元が信頼できるネットワークからアクセスしているかどうかによって、認証レベルを変えて運用するということだ。
各仮想化方式の理解と運用上の特徴
デスクトップ仮想化方式とは、OSやアプリケーションを仮想化する方式だ。第4回「5つの仮想化方式を一覧表で比較 ~デスクトップ仮想化導入で準備すべきこととは」で各方式の特徴とユーザーへの適用例をまとめたのでそちらを参照いただきたい。
ユーザーデータとプロファイル
デスクトップを仮想化することによって、データセンターでデスクトップ/アプリケーションが動作するため、ユーザーデータやプロファイルデータも同様にデータセンター側に移行することになる。これらユーザーデータやプロファイルデータは、データセンターのファイルサーバ、プロファイルサーバ上に集約して管理される。必ずしも集約する必要はないが、効率的なデータマネジメントや、データプロファイルの(移動性による)柔軟な運用を考えると、集約するのが妥当であり一般的だ。
ユーザーデータの移行に関しては、データが既存PCのローカルにある場合は、PCのローカルからファイルサーバ上へ転送しておく必要がある。また、ユーザープロファイルについても、集約管理し移動ユーザープロファイルを利用することになる。デスクトップ環境がプロファイルサーバからプロファイルをダウンロードする仕組みだ。
ただし、ユーザーが仮想デスクトップや物理PCも含め、複数の異なるデスクトップ環境を利用する場合は、この移動ユーザープロファイルに不整合が生じることがあるため、整合性をとるためのソリューションも検討いただきたい。
エンドポイントデバイスとクライアントモジュール
エンドポイントデバイスは、デスクトップ/アプリケーションの表示しか行わないため、ハイスペックなものである必要はない。
例えば、既に解説したが、古くなったスペックの低いPCに、制限を掛けてシンクライアントとして再利用する運用も可能だ。また、画面表示のためのクライアントモジュールは、各ベンダーから多くのデバイスプラットフォームに対応したものが無償で提供されている。多数のWindows端末に配布する際は、GPO(Group Policy Object)を利用すれば一括インストールができる。モバイルデバイスへのインストールは、端末からアプリケーションがダウンロードできるストアを介してできるようになっている。また、シンクライアントとして販売される端末のほとんどは、既にデスクトップ仮想化ベンダーのクライアントモジュールがインストールされているので、あらためてインストールする必要はほとんどない。
エンドポイントデバイスにおける周辺機器の制御
業務内容やユーザーの働き方によっては、エンドポイントデバイスに接続された周辺機器を仮想デスクトップから利用できるようにする必要がある。例えば、プリンタ、USBメモリ、スキャナ、Webカメラ、マイクなどである。また、これらの利用可否は、利用シナリオに応じて設定可能だ。どんなユーザーが、どんな端末から、どんなネットワークを経由してアクセスしてくるのか、その際にどんな周辺機器を利用許可するのかを整理しておく。よくあるのは、社内からアクセスした場合はプリンタへの出力は可能だが、営業や在宅勤務自宅が許されれる従業員がリモートからアクセスした場合には、プリンタの利用を制限するケースだ。
サーバ、ストレージ、ネットワーク
サーバ、ストレージ、ネットワークの構成は仮想化方式によって準備検討するポイントが異なる。ここでは、最も重要なサーバ共有型とVDI(Virtual Desktop Infrastructure)を想定してポイントをまとめる。
サーバ
既に述べた通り、サーバ共有型とVDI構成では、サーバ共有型の方がCPU当たりのユーザー集約度が高い。また、いずれの方式においてもユーザーがどのようなアプリケーションを利用して、どのような処理を行うかによっても集約度は大きく異なる。
従って、デスクトップの利用の仕方に関する基準もなしにサーバをサイジングすることはできない。パフォーマンスの問題が出るときは、こういった利用に関する棚卸しと設計手順が誤っているケースが多いので注意いただきたい。
その上で、基準となる値を検証によって確認することが必要である。また、さまざまな検証結果を見ると、サーバに搭載されるソケットの数が増えれば増えるど、ユーザーの集約度が少しずつ落ちる傾向がある。よって、どのようなCPUモデルを利用するのかについてもあらかじめ決めて検証するのが望ましい。
メモリについては、サーバ共有型の場合、OS、RSDが利用するメモリサイズに加え、各ユーザーセッションが消費するメモリ量をベースに最低必要量を算出する。ユーザーセッション当たりの消費メモリ量も、利用するアプリケーションやその使い方に依存するので、実測に基づくべきである。
VDIについては、利用するOSが推奨するメモリ量を全てのユーザーに割り当てるのが基本である。メモリ量を節約するために、メモリ共有やオーバーコミットなどもハイパーバイザーの機能で利用可能だが、実績は多くない。もし、この機能を利用する場合は、さまざまなシナリオで検証することが必須である。
ストレージ
デスクトップ仮想化を行うと、大規模ストレージ環境になることが多いため、I/Oパフォーマンスの確保や障害切り分けが難しくなる。そのため、ストレージネットワークは、サービスネットワーク/管理ネットワークとは分離しておくことをお勧めする。
また、(特にVDI構成の場合)仮想デスクトップのパフォーマンスを考える上で、IOPSの見積もりが重要なので、ディスクスピードやスピンドル数などの条件によってどれくらいのIOPSが出るかを知っておく必要がある。
さらに、VDIのイメージが配置される領域のRAIDレベルは、可用性と読み取りパフォーマンスの観点からRAID 1やRAID 10が推奨されている。一方、RAID 5やRAID 6といった構成は、コストパフォーマンスは高いもののパリティ計算のペナルティが大きいため、推奨されないのが一般的だ。昨今ではI/Oが集中する領域にはSSDを配置したり、ストレージ機能にあるキャッシュを利用したりして、うまくボトルネックを解消することも多い。ストレージが持っている機能も活用したい。
ネットワーク
ネットワークについては上述した通り、パフォーマンス問題を避け、複雑性を排除する意味で、できる限り用途別に分離することを推奨する。デスクトップ仮想化ではクライアント環境を含めてデータセンターに集約するため、システム全体の複雑性が増すからだ。分離するネットワークは、コストとの兼ね合いだが、サービスネットワーク、ストレージネットワーク、管理用のネットワークに分けたい。また、ネットワークブートによって実装されるケースは、各デスクトップ環境がネットワークブートをする仕組みであるため、同時起動数の制御や電源管理機能を使って、ネットワーク帯域を消費しきらないよう調整することも必要だ。
そして、エンドポイントデバイスへデスクトップ/アプリケーションを配信するネットワークは、外部ネットワークになることが想定される。ここの通信は必ずSSL化することを忘れてはならない。
ウイルス対策ソフト
デスクトップ仮想化によって、情報漏えいのリスクは抑えられるが、OS、アプリケーションが動作することに変わりはないため、ウイルス対策も検討しておく必要がある。
仮想環境において、ウイルスをチェックする方式は主に2パターンある。
(1)PCと同様に、各仮想デスクトップイメージにエージェントをインストールしてチェックする方式
(2)エージェントのインストールが不要で、チェックの処理を専用サーバに転送して任せる方式
いずれにしても、集約されて稼働する仮想デスクトップが一斉にチェックをすれば負荷が掛かり過ぎてパフォーマンスに影響が出る。その対策として、(1)については、チェックに関わる処理のタイミングを分散してパフォーマンスを確保する調整をする必要がある。(2)については、そもそも仮想デスクトップ自身でチェックを行わないため、仮想デスクトップのパフォーマンスに影響は出ない仕組みになっている。これらの仕組みを理解して運用に入ってほしい。
運用監視
デスクトップ仮想化によって、従来のクライアントシステムはデータセンター内で稼働する。それだけではなく、その数が非常に大きな数であるということを認識しなければならない。各システムの要素間での相互作用が増え、問題が生じた際の根本原因の見極めが難しくなる恐れがある。
そこで、より細かく問題を発見するための監視ができるかどうかが重要だ。まずは、デスクトップ仮想化のアーキテクチャを踏まえること、次に、起動やユーザーからの接続などを含むシーケンスの、どこでボトルネックや問題が生じているかを把握できるようにしておくことが重要だ。
さらにポイントなのは、デスクトップ仮想化は、ネットワークを介してユーザーのエンドポイントデバイスとやりとりする仕組みであることから、データセンターとユーザー間のネットワーク状況、エンドポイントデバイスの状況が把握できることも重要だ。デスクトップやアプリケーションの操作性は、このソリューションが提供する価値を最大化するために非常に重要である。そのため、このようにエンドポイントまでを含めた状況把握と、事前の問題検知ができるような運用監視体制が求められる。
バックアップ/リストア
デスクトップを仮想化した場合のバックアップ/リストアの範囲を考えてみよう。従来のPC環境でバックアップ/リストアされていたのは、ファイルサーバ上のユーザーデータのみという運用が一般的だ。
この観点では、各仮想デスクトップのOS部分のバックアップ/リストアまでは行う必要はないという考え方が一般的だ。ただ、折角、仮想化するのだからOSごとに面倒を見られないかという考え方もある。この辺りは運用上、決めておかなければならない点だ。
バックアップ/リストアを取得する際に重要なのは、仮想デスクトップが、マスターイメージと差分イメージをひも付けけることで構成されており、単一イメージファイルとして扱えない場合があるということだ。その仕組みは製品によって異なるため、細かな技術を理解した上で適切なバックアップ方法を確立しておく必要がある(※1)。ちなみに、小規模であればハイパーバイザーの機能でバックアップを取得することもできる。
※1 バックアップ/リストアをストレージレベルで行うのか、エージェント型で行うのか、ハイパーバイザーによるエクスポート/インポートという形で行うのかなど。
Proof of Conceptを実施する
ここで紹介するポイントは、上記で解説してきた技術的なポイントとは少し異なる。連載当初から度々解説しているように、このソリューションは単なるアプリケーションやツールではない。個々の企業がそれぞれのビジネスのやり方を変え、企業課題を一掃していくための仕組みである。従って、この仕組みを導入することによって、本当にビジネスを変えられるのか、課題がしっかりと解決するのかということを見極める必要がある。
つまりProof of Concept(以下、PoC)が必要となる。その実証なしに、このソリューションに投資することは難しいはずだ。また、PoCを実施することで、運用していく上で事前の想定と異なる点、問題になりそうな点などの洗い出しにもなる。さらに、システムの設計に必要な情報の収集、さまざまなノウハウの蓄積にもつながる。
本稿では、デスクトップ仮想化プロジェクトを進めるに当たり、技術的に準備・検討しておかなければならないポイントを解説した。次回は、なぜデスクトップ仮想化が、ビジネスのモバイル化を進めるに当たって重要な役割と位置付けとなるのかについて解説する。
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デスクトップ仮想化導入のガイドライン
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