生保会社の挑戦「遠隔データコピーで実現する災害対策」ディザスタリカバリ導入事例:HP StorageWorks

ディザスタリカバリは、製品やサービスを導入すればすぐ実現できるというものではない。まずは、システム基盤や運用管理プロセスがきちんと整備されているか、しっかり確認する必要がある。

2008年09月05日 08時00分 公開
[谷川耕一]

 日本で初めて変額商品専門の保険会社として営業を開始した東京海上日動フィナンシャル生命。東京海上グループの一員として、顧客との長期にわたる関係が前提となる保険商品を展開しているため、同社は常に顧客との信頼関係構築に注力しているという。そのため、顧客との接点になるWebサイトの信頼性を確保することも、顧客の信用を得るためには重要になる。つまり、ITシステムの信頼性を確保し、安定的な運用を継続することは、同社のビジネスにとって必須要件なのだ。

混沌としていたITインフラをシンプルに

photo 東京海上日動フィナンシャル生命保険 情報システム部 部長 平山茂人氏

 平山茂人氏が同社の情報システム部担当になったのは、2005年4月。当時、社内システムのサーバ群はオフィス内の一角にあるマシンルームに設置されていた。そこでは30台ほどのサーバが稼働していたが、実に混沌(こんとん)とした状況だったという。それまで、その時々でベストと考えられた構成のサーバを逐次追加してきたため、OSやハードウェアに統一性がなく、SolarisやWindows NT Server、Windows 2000 Server/Server 2003などのサーバが混在していたのだ。

 「この状況で何らかのトラブルが発生したら、一体どうなるのか分からない状態でした。例えば、顧客向けWebサイトのサーバが壊れてしまったら、マシンの調達から復旧まで、下手をすると2~3カ月はかかってしまうような状況だったと思います」(平山氏)

 そこで平山氏は、ITインフラを新たに整備することで事業継続性を確保すべきだと当時の経営層に訴えた。現状のリスクの大きさをしっかりと伝えた結果、経営層の理解を得ることができ、早速ITインフラ整備のプロジェクトを始動した。まずはメールサーバやファイルサーバ、Webサーバ、アプリケーションサーバといった、情報系システムのサーバ群を整備の対象にした。

 少ない人数でITインフラを効率よく運用するには、どうすればいいのか。平山氏がまず初めに考えたのは、IT環境をとにかくシンプルにすることだったという。

 従来はオープンシステムの良さを享受するために、それぞれのハードウェアやOSのいいところを組み合わせ、ベストオブブリードの環境を構築しようとしてきた。その結果、さまざまなハードウェアやOSが混在する状況となり、個々には最適化されていても全体としては非効率な環境となっていたのだ。この状況を改善するために平山氏が最初に取り組んだのが、ベンダーとプラットフォームを統一することだった。

 「最初に実施したのは、ベンダーを絞り込むことでした。それによりOSとハードウェアを統一しようと考えました。複数ベンダーの製品を運用していると、ベンダーコントロールだけで情報システム部は疲弊してしまいます」(平山氏)

 統一するサーバOSにはWindows Server 2003を選び、ハードウェアは将来的にも拡張できるブレードサーバを中心に構成することとした。これらの環境をハードウェアからOSに至るまでワンストップでサポートできるベンダーとして選ばれたのが、 日本ヒューレット・パッカード(以下、HP)だった。

 このベンダー選択の背景には、これまでのプロジェクトでの経験に基づくHPのコンサルタントやエンジニアに対する信頼感があった。同社と同じく東京海上グループの一員である東京海上日動火災保険において、これまでもHPの製品やサービスは部分的に採用されていたのだ。それらの経験を通じて、HPは十分なサポート力を持つだけでなく、同社のシステムの駄目な部分についてもプロフェッショナルとしてしっかりとした意見をくれる、良質なプロジェクトメンバーをそろえたベンダーだと平山氏は感じていたのである。

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