複雑なシステムのレスポンスをどう確保するか――支援製品に期待アプリケーションパフォーマンス管理に関する読者調査リポート

ほとんどの業務をITシステムが支えている今、そのパフォーマンスは経営に多大な影響を与える。仮想化、クラウドで複雑化したシステムを安定運用するための新たなアプローチを多くの企業が求めているようだ。

2013年04月19日 08時00分 公開
[内野宏信,TechTargetジャパン]

 TechTargetジャパンは2013年2月19日から2013年4月8日まで、読者会員を対象に「アプリケーションパフォーマンス管理に関する読者調査」を実施した。調査結果から、アプリケーションパフォーマンス管理(以下APM)の実施状況や、管理製品導入時の課題などが明らかになった。本稿ではその一部を紹介する(全ての結果を記載したリポートは、文末のリンクから会員限定でダウンロード可能)。

調査概要

目的:読者会員の企業におけるAPM製品の導入状況を調査するため

方法:Webによるアンケート

調査対象:TechTargetジャパン会員

調査期間:2013年2月19日(火)〜2013年4月8日(月)

総回答数:112件

 ※回答の比率(%)は小数点第1位を四捨五入し表示しているため、比率の合計が100.0%にならない場合があります。


複雑なシステムでもパフォーマンスの問題原因を迅速に特定できるAPM

 近年、仮想化技術の浸透により、1台の物理サーバ上で複数の仮想サーバが稼働しているなど、多くの企業においてシステム構成が複雑化している。パブリッククラウドの導入企業も増え、パフォーマンスに影響を与える要素を自社のデータセンター外に抱えているケースも増えた。このため各システム構成要素を個別に監視し、その結果を積み上げてパフォーマンス低下の原因を分析するサイロ型の監視だけでは、システムの安定運用と迅速な復旧が難しくなっている。

 こうした中、エンドユーザーの視点という従来とは逆のアプローチでシステムを監視することで、複雑なシステムでもパフォーマンス低下の原因を迅速に特定できるとして注目を集めているのがAPM製品だ。

 特にパフォーマンスの重要な指標となるシステムのレスポンスタイムは、ビジネスの遂行に多大な影響を及ぼす。Eコマースなどエンドユーザーが消費者の場合、レスポンスの悪化は機会損失や信頼失墜に直結する。今回の調査では、そうした認識の浸透とAPMに対する期待がうかがえる結果となった。

44.1%がAPM製品の重要性を認識

 APM製品の導入状況を聞いたところ、12.6%が「導入済み」と回答。31.5%は「導入を検討中」と答え、約半数の計44.1%がAPMの重要性を認識している傾向が明らかになった。

ALT 図1 「APM製品の導入状況」 N=111

 

 「APMの取り組みにおいて最も重視するポイント」としても、「エンドユーザーの実体感レスポンス」が53.2%と過半を占めた。安定した業務遂行、自社の信頼性担保など、システム運用がビジネスに与える影響の大きさに対して、多くの企業が認識を深めつつあるようだ。

ALT 図2 「APMで最も重視するポイント」 N=111

53.2%が「レスポンスの遅延や障害の問題原因を特定できない」

 「APMの取り組みにおける課題」としては、「レスポンスの遅延や障害の問題原因を特定できない」が53.2%でトップ。「レスポンス低下の予兆がつかめない」が45.9%と続き、システムのパフォーマンス担保が難しくなっている現状を裏付ける結果に。

ALT 図3 「APMの課題」 N=111《クリックで拡大》

 製品の導入企業と検討中の企業に聞いた「APM製品で重視する機能」では、導入済みの企業は「アプリケーションの性能監視」が78.6%と突出して高い値を記録し、システムの稼働状態やエンドユーザーに提供できているサービスレベルを重視している傾向が明らかになった。

ALT 図4 「APM製品で重視する機能」 導入している企業=14社 検討中の企業=34社《クリックで拡大》

 導入検討中の企業は「パフォーマンス低下の問題原因分析」(61.8%)、「アプリケーション実行環境の性能監視」(47.1%)、「エンドユーザー体感レスポンス監視」(44.1%)と続き、パフォーマンスが低下した際の迅速な原因分析、復旧に不安を感じている傾向が見て取れる。

クラウド上で稼働するアプリケーションのパフォーマンス担保も課題に

 一方、「APM製品の管理対象と、今後管理したい対象」について聞いたところ、導入済みの企業が管理対象としているのは「業務系アプリ」がトップ(64.3%)。今後、管理したい対象としては「情報系アプリ」(46.2%)と「社内で使うSaaSアプリ」(30.8%)が目立った。導入検討中の企業が管理したい対象としては「情報系アプリ」がトップ(60.0%)。プライベートクラウド上の社内アプリ(31.4%)も上位に入った。日常業務を支えているシステム運用への懸念とともに、クラウドへの対応が重視されつつある傾向がうかがえる。

ALT 図5 「APM製品の管理対象と、今後管理したい対象」《クリックで拡大》

 今後「APM製品に望む提供形態」としては、導入済み、検討中の企業ともに「パッケージ」がトップでありながら、「機能だけを使い、管理はしたくない」 「可能な限りコストを抑えたい」など、コストと人材の不足を反映してSaaSに対する期待も高まりつつあるようだ。

ALT 図6 「APM製品に望む提供形態」 導入している企業=14社 検討中の企業=34社

 調査では、この他「APM製品の導入で重視するポイント」「製品の満足度とその理由」などを聞いた。詳細な結果は、以下からダウンロードできる(TechTargetジャパン会員限定)。ぜひ参照されたい。

複雑化したシステムでもパフォーマンスの迅速な問題原因分析を可能にするとして注目を集めているアプリケーションパフォーマンス管理(APM)。本稿では読者アンケート調査から企業におけるAPMの取り組み実態をまとめた

調査結果リポートのダウンロードページへ (TechTargetジャパン)

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