クラウドプロバイダーの競争力に貢献
VMwareが仕掛ける自動化されたデータセンターとは?
物理リソースを抽象化してソフトウェアで機能を定義するアプローチが注目されている。中でも、データセンターインフラ向けのアプローチは、クラウドプロバイダーの作業負荷やユーザーのコスト削減などに有効だ。
可用性と拡張性に優れたクラウドサービスをライバル製品よりも安価に、しかもユーザーが自社で配備するよりも低いコストで提供するのは、プロバイダーにとって容易なことではない。
米VMwareによると、ソフトウェア定義型データセンター(SDD:Software-Defined Datacenter)は新しいアーキテクチャ手法であり、これにより「プロバイダーおよびデータセンター運用者は、ハードウェアインフラだけでなく、ネットワークリソースや可用性関連のリソースも統合できる」という。VMwareで「vCloud Suite」を担当する上席クラウド戦略担当者のニーラ・ジャック氏は「データセンターインフラ向けのソフトウェア定義型アプローチは、プロバイダーにとっては柔軟性とコスト削減につながり、ユーザーにとってはより良いサービスを意味する」と説明する。
――サービスプロバイダーの視点から見た場合、従来のデータセンターとSDDの最大の違いはどこにあるのですか?
ジャック氏 資本コストの観点から見れば、データセンターの管理は依然として非常に高い費用が掛かります。また、管理担当者が同じ管理業務を繰り返し行っていることにも高コストの一因があり、これは無駄な出費といえるでしょう。この業界のプロバイダーは、リソースの抽象化およびコンピューティング能力とメモリの配分の自動化という面では大きく進歩したものの、ネットワーク、ストレージ、セキュリティ、可用性を軽視してきたと反省しています。ユーザーがデータセンター環境で新しいワークロードを展開したり、既存のワークロードを拡大しようとしても、ネットワーク、ストレージ、セキュリティおよび可用性が物理デバイスに大きく依存しているのが現状です。
SDDは、手作業で行われている多くの作業を自動化することによってプロバイダーの負担を軽減することを狙ったアーキテクチャ手法です。プロバイダーはこれにより、データセンターの管理を大幅に効率化することができます。こういった自動化を実現するには、コンピューティング、ストレージ、ネットワーク、セキュリティなどあらゆるリソースをデータセンターのレベルで抽象化し、それをVMwareがいうところの「論理データセンター」にプールする必要があります。これは、バックエンド上で可能な限り自動化を進めることを意味します。
――プロバイダーにとって、SDDというアーキテクチャ手法を採用するメリットは何ですか?
ジャック氏 SDDという手法は、コストという面でプロバイダーに非常に大きなメリットがあります。プロバイダーは何台の機器が必要になるかを推測したり、需要に対応するのに過剰な見積もりをしたりしなくても済むようになるのです。このアプローチは、管理という観点でもメリットがあります。SDDでは、システムがインテリジェントに自動化の判断を行うので、データセンターの管理者は他の業務に専念できるようになります。1人の管理者が管理できるシステムの数が飛躍的に増えるため、プロバイダーはより大規模な環境をサポートし、顧客企業のニーズの増大に対応することが可能になります。
――SDDというアプローチを採用することで、プロバイダーの競争力が高まるのですか?
ジャック氏 現在のサービスプロバイダーを見ると、彼らは2つの手ごわいグループと競争しています。自社環境でインフラを運用しているユーザー、そしてAmazon EC2です。多くのユーザーは、高度に仮想化されたSDN(Software Defined Network)タイプの環境を効率的に構築できるようになってきました。その一方で、米Amazonのサービスの普及が進んでいます。より多くのサービスを低価格で提供しなくてはならないというプレッシャーは、非常に大きくなっています。サービスプロバイダーに対するユーザーの関心も、ユーザーの環境を低コストで管理できるかどうかだけでなく、俊敏性や革新性といった部分にも向けられています。インフラを提供できるというだけでは、もはや不十分なのです。
ソフトウェア定義型環境では、プロバイダーは信頼性の高いサービスを提供できるようになります。さらに、プロバイダーの従業員はワークロードを展開する作業に時間を取られるという状態から解放され、高度なSLA(Service Level Agreement:サービスレベル契約)を提供するための業務に専念できるようになります。このアプローチを採用すれば、プロバイダーはコストを20%削減できます。これはプロバイダーにとって利益が増えることを意味するだけでなく、他のサービスプロバイダーとの競争力を高めるための資金としても活用できるのです。
――SDDの構成要素を教えてください。
ジャック氏 構成要素は大きく2つに分類できます。1つは「インフラ」です。プロバイダーに必要なのは優れたインフラです。プール化と自動化はインフラレイヤーで行われるからです。ストレージとネットワークリソースの抽象化、さらにコンピューティングの抽象化も必要です。
インフラレイヤーでは、「VMware vSphere」などの仮想化プラットフォームが進化して強力になったことで、広範な利用形態に対応できるようになってきました。プロバイダーにとってその次に必要なのは、ネットワークを仮想化する機能です。この分野では「vCloud Networking and Security」などがあります。これは、分散仮想スイッチを設定することによって本格的な仮想ネットワークを実現するツールです。ストレージとネットワークの可用性の面でも、目覚しいイノベーションが数年内に登場すると予想しています。例えば、データの保存場所として、従来のストレージアレイだけでなく、分散ストレージシステム、内蔵HDD、仮想SAN(Storage Area Network)方式などさまざまな選択肢が利用できるようになるでしょう。
もう1つは「管理」です。プロバイダーがあらゆるリソースを高いレベルにプールする場合、従来とは異なる管理手法が必要となります。基盤となるハードウェアや仮想マシンの状況を全て1人で把握することはできないからです。このため、プロバイダーにはデータセンターの状況(平均パフォーマンスやスイッチのスループットなど)を把握する機能や、調査を必要とするような大きな変化を通知する機能を備えたシステムやツールが必要になるのです。
――SDDに移行するには、大きな初期投資が必要なのですか?
ジャック氏 その答えは「イエス」でもあり「ノー」でもあります。プロバイダーは現在でもハードウェアを購入しているということを考えれば、SDDを立ち上げるための初期費用は、ハードウェア主体型のインフラを構築するよりも少なくて済むかもしれません。購入と構築の両面で効率化できるからです。投資収益を確保するためにバックエンドへの初期投資が必要となるケースもあるでしょうが、それでもクラウドプロバイダーがSDN導入以前に採用していたやり方と比べれば、安くつくことは間違いないと思います。仮想化によって削減したコストは他の投資に回せるため、プロバイダーはより大きな付加価値、より良いサービスをエンドユーザーに提供できるようになります(関連記事:成熟化に向かうクラウドストレージのエコシステム)。
――データセンターでソフトウェア定義型のアーキテクチャ手法を採用することで、サービスプロバイダーの顧客にはどんなメリットがあるのですか?
ジャック氏 サービスプロバイダーは、顧客のニーズに迅速に対応できるようになります。今日のプロバイダーは、ハードウェアを追加しなくても、即座にインフラのプロビジョニングを行えなければなりません。また、ユーザー環境で起きた不具合を検知するためにアナリティクスベースの手法を用いることもできます。プロバイダーはインフラを構築するだけでなく、例えば、トラフィックが増大したら、それをユーザーに伝え、この変化に対応するためのサービスを提供できなくてはなりません。多くの場合、SDDは安価であるだけでなく、サービスプロバイダーがより高い付加価値をエンドユーザーに提供することを可能にするのです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[日本オラクル株式会社] ピンチをチャンスに変えたEPR製品は? 先行企業の導入事例3選 -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] 無自覚なリスク 秘伝Excelファイルが監査の壁、不正・ミスの温床となる理由 -
製品資料
[日本オラクル株式会社] 戦略的経理の第一歩 失敗のない「脱Excel」を実現する秘訣とは? -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] いまさら聞けないオンプレERPとクラウドERPの違い 最適な製品をどう見極める? -
事例
[株式会社ビザスク] 連結売上高が約2倍に成長、富士フイルムが実践した新規事業創出の戦略とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
3
「ノートPC派」は損をしている? Dellと考える“自作PC”のメリット
-
4
LINEヤフーはなぜ「社内の管理者」すら信用しないインフラを作ったのか
-
5
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
-
6
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
7
IT製品の導入に関するアンケート「PC&デバイス」編
-
8
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
-
9
「SIEMの利用」に関するアンケート
-
10
「0.3秒のスピード顔認証」の入退室管理が社員に好評 事例に学ぶオフィス改革
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
2
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
バックアップは“取っているから大丈夫”なのか? ランサムウェア時代の備え方
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
5分で分かる Microsoft 365のデータ損失に備えるためのバックアップの仕組み
-
9
ネットワーク遅延の原因、「パケットロス」の基礎知識と効果的な解決策
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー