「5年後に自社のデータセンター施設はどうなっていると思うか」とCIOに尋ねれば、必ずクラウドの話になるだろう。ただしそれは、データセンターを全く所有しなくなるという意味ではない。
CIOが描く将来のデータセンター像は、さまざまな戦略が混合するハイブリッドなものだ。データセンターの容量をレンタルしたり、一部のアプリケーションをSaaS(Software as a Service)ベンダーに委ね、ディザスタリカバリ(DR)にIaaS(Infrastructure as a Service)プロバイダーを利用したり、自社のデータセンターインフラの最新化と仮想化を続ける一方で、インターナルクラウドの開発を進めるなど、その戦略は多岐にわたる。
一見ごちゃ混ぜのこうした将来のデータセンター像は、複数企業の戦略を集めたものではなく、1つの企業内の戦略を集約したものだ。
ヘルスケアシステムのプロバイダー2600社と40万人の医師で構成されるネットワークのメンバーにヘルスケアデータを提供している米Premierには、1500人のスタッフが勤務している。同社は、2つあるデータセンターの1つに患者関連の情報を保存している。このデータセンターは、同社が物理的に所有し、2011年に再構築され、完全に仮想化されている。もう1つのデータセンター施設は、DR用にレンタルしている柵で仕切られたスペースで、ホスティング施設内のそのスペースに入れるのはPremierのITスタッフだけだ。人事部システムや賃金台帳システムなど、それほど機密性の高くないデータはSaaSプロバイダーに委ねられている。ただし、PremierのCIO兼上級副社長のジョセフ・プレザント氏は依然として、こうしたアプリケーションを自身のスタッフに管理させている。
同氏は、いずれPremierの患者データもパブリッククラウドに置くことになると考えているのだろうか? 恐らく、そうではないだろう。ただし、絶対にないとも言い切れない。「ホスティング形式のデータセンターのセキュリティが改善されれば、そのときには、企業は自社でデータセンターを持つことの費用効率について、コスト評価を始めるだろう」とプレザント氏は語る。
「新規事業を立ち上げるのであれば、完全なクラウド化を進めていただろう。間接費を抑えられるからだ」と語るのは、包装製品などを扱う米パッケージング企業FP Internationalでインフラシステム担当ディレクターを務めるクリフ・オルソン氏だ。同社は米国と欧州に拠点を持ち、500人の従業員が勤務している。「1カ月当たりの支払い額は若干増えるかもしれないが、インフラ管理に伴う面倒の多くを解消できる」とさらに同氏は続けている。
だが、従業員が数千人の中規模から大規模の企業に関しては、この計算はそれほど魅力的ではない。「1万人かそれ以上の従業員のデータニーズに対応する必要がある場合は、クラウドプロバイダーに支払う月額のサービス料金の方が、自社でデータを管理するためのインフラやスタッフに掛かる経費よりも高くつく。運用スタッフのコストとハードウェアの減価償却を計算に入れても、年間の費用は自社で管理する方がクラウドを利用するより低く抑えられるはずだ」とオルソン氏は言う。
BYOD(私物端末の業務利用)の動きに関しては、コスト要因はもはや問題にならないのかもしれない。BYODの流れが強まるなか、CIOにはプラットフォームにとらわれないインフラへの移行が求められる。「ユーザーは、自分が持つあらゆるデータに、どのデバイスからでも自由にアクセスできることを望んでいる。そうした要望を満たし、必要なスタッフを配置し、管理するためには、IT部門に技術的に多くの難題が降りかかる。それを相殺するには、クラウドに移行する必要があるだろう」とオルソン氏は語る。
世界のトップ50やトップ100に入る企業であれば、今のところ、自社でデータセンター施設を持つ方がコストを低く抑えられる。だが、そうした状況は各社が思うほど長くは続かないかもしれない、と大企業向けのビジネスIT戦略アドバイザー会社である米Corporate Executive Board(CEB)の業務執行社員、アンドリュー・ホーン氏は指摘する。「最近では非常に大規模な企業がクラウド戦略を検討するようになってきている。『会社の規模が非常に大きいため、クラウドは向いていない』という考え方をしなくなってきているからだ」と同氏は語る。
同氏によれば、向こう2年間で、大規模な企業でさえもクラウドに向かわせる2つの変化が起こるという。1つは、パブリッククラウドのセキュリティとプライバシーの諸問題が解消されるという変化。もう1つは、クラウドプロバイダーの成長に伴い、経済的な魅力が増すという変化だ。
こうした見通しは、CEBがデータセンターインフラの管理者やディレクターから話を聞いた上で導き出したものだ。ホーン氏によれば、そうした人たちは、「クラウドの問題点がいかに迅速に解消され、経済的な側面がどう変化するかについて、非常に楽観的」だという。
経済の観点から見ると、クラウドプロバイダーが達成する規模は、いかに大規模な企業であろうとも、企業が自社で実現できるレベルを上回ることになるだろう。クラウドプロバイダーの顧客は増え、技術コストはますます下がることになるからだ。クラウドプロバイダーは増築により、コスト面でより早く優位に立てるだけでなく、データセンターの開設についても、電力料金や人件費が安い場所を選べるため、より高い柔軟性を享受できる、とホーン氏は指摘する。
「2年前に聞かれていたのなら、クラウドへの移行は決して予測できなかっただろう」と語るのは、樹木販売業を手掛ける米Bell Nurseryのシステム技術担当副社長、ジョー・ペレット氏だ。同氏は、オンプレミスの「Microsoft Exchange」をクラウドベースの「Office 365」に移行したところだという。
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