サービスカタログの作成や利用者視点での機能変更など、ITILをIT以外の分野にも応用するCERNの支援業務責任者の取り組みを紹介する。
あの大型ハドロン衝突型加速器で有名なCERN(欧州原子核研究機構)は、IT以外の業務運営支援にITサービス管理(ITSM:IT Service Management)を利用している。
CERNの支援業務責任者、レイナウド・マルテンス氏は、ITSMの「IT」にとらわれず、サービス管理のベストプラクティスを、この素粒子物理学研究のメッカCERNにおけるごみ処理、防災、人、運輸、緑地管理などの分野に応用している。
「ITIL(Information Technology Infrastructure Library)はIT以外にも使える。IT以外の分野には、ITILに匹敵するガイドラインがない」とマルテンス氏は話す。
本記事は、プレミアムコンテンツ「Computer Weekly日本語版 2013年7月24日号」(PDF)掲載記事の抄訳版です。本記事の全文は、同プレミアムコンテンツで読むことができます。
なお、同コンテンツのEPUB版およびKindle(MOBI)版も提供しています。
マルテンス氏は、CERNの新所長が就任して以来、ITSMを応用したファシリティ管理の陣頭指揮を執っている。
「これは、ITSMのベストプラクティスを確立している最中に思い付いた。だが、ITSMの(ファシリティ管理への)利用を同僚に検討してもらえるようになるまで半年かかった。まず、利用可能なサービスを説明するサービスカタログを用意することにした」とマルテンス氏は語る。
マルテンス氏は、利用者向けのサービス目録の役割を果たすビジネスサービスカタログを作成した。「ITのサービスデスクと似ていてITILを参考にしているが、SLA(サービス品質保証)の内容はクリーニングについてだ。ユーザーはこのSLAを基に“ゴミ箱がいっぱいなので、空にしてほしい”といったリクエストができる」(マルテンス氏)。このように、サポートデスクと同じ概念が、サービスデスクに応用されている。
2010年、CERNはIT機能の一部をサービスデスクに統合した。このとき、ITのサービス記述方法を変更するための追加作業が必要になった。
「IT(の記述方法)は、観点を機能から利用者に切り替える必要があった。例えばOracleはサービスではなく機能だ。OracleをMySQLに変更したとしても、利用者にとってはデータベースサービスであることに変わりはない。これは、配車サービスと似ている。車をリクエストした場合、BMWが手配されることも、フィアットが手配されることもある」(マルテンス氏)
2011年2月までに、CERNでは300項目からなるファシリティ管理用のサービスカタログが完成し、ヘルプデスクポータルでの運用が開始された。このポータルは、SaaS(Software as a Service)型のITサービス管理ツール「ServiceNow」を基盤とし、CERNでの利用者の一元的な窓口となっている。
マルテンス氏によると、ServiceNowによって、ファシリティ管理ヘルプデスクへのリクエスト処理のプロセスを統一できているという。
CERNのこのサービスポータルはインタラクティブなインタフェースを備え、職員や客員研究員がファシリティ管理サービスをリクエストできる。オフィスおよび研究室のインフラ、医療や消防などの安全・救急サービス、コンピューティングインフラ関連のサービスがカバーされている。
CERNのサービスデスクが扱う範囲が広いことから、コールセンターのスタッフはエキスパートではなく、案件を割り分けるコーディネーターになる。マルテンス氏によると、ファシリティ管理用のサービスカタログのおかげで、コールセンターの全員が正しい機能を特定できているという。「とてもうまくいっている。(別の部門に誤って)サービスチケットが回されるケースは少ない」
このようにファシリティ管理を変えていくために、マルテンス氏は以下のようなアプローチを使った。
本記事は抄訳版です。全文は、以下でダウンロード(無料)できます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
デザイン性も機能性も“インカム越え”? 進化した接客用連絡ツールの特徴は? (2025/4/14)
「PoCをした企業」がほぼ導入するアプリケーション監視の新たな解決策 (2025/4/8)
DX推進に向かうにはまず守りの業務の改善から (2025/3/6)
企業のIDを内外から狙う攻撃が急増 ID漏えいを前提とした対策が必要な時代に (2025/3/3)
カスハラから従業員も映像も守る ボディーカメラはあのカメラとどう違う? (2025/1/24)
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。