Power再興とクラウド強化で利害が一致
IBMとGoogleのOSSハードウェア開発に寄せられる期待と心配の声
IBMやGoogleなどが加盟する企業連合「OpenPOWER Consortium」が2013年8月に結成された。Powerプロセッサを中心とするクラウド基盤に必要なハードウェアの開発を目指す同連合だが、市場には批判的な見方もある。その理由とは?
英ARM Holdingsの知的財産と同社のRISCリファレンスデザインの改良に向けた取り組みでは、オープンソース方式によるコラボレーションが大きな威力を発揮した。米IBMはこの成功を受け、「Power」プロセッサアーキテクチャに新たな活力を吹き込むために「OpenPOWER Consortium」を通じて業界大手各社と協力関係を結ぶ方針だ。
OpenPOWER Consortiumは2013年8月に結成された企業連合で、IBMのPowerプロセッサを中心としてオープンソースのサーバ、ネットワークストレージおよびストレージの分野での協力を目指す。具体的な協力形態やガバナンスの問題をどうするかなどは不明だが、新規加盟への呼びかけは現在も行われている。
オープンソースのデータセンターシステムでPowerプロセッサの復活なるか?
業界関係者の中には「このオープンソース路線は、落ち目の製品を延命させてユーザーに犠牲を強いるようなものだ」と批判的な見方をする人もいる。
「製品やソリューションが瀕死状態にあり、その技術を保有する企業が開発にこれ以上リソースを注ぎ込みたくないという段階になって、オープンソースを採用したというにすぎない。『ユーザーの皆さま、後は自分で何とかしてください』というわけだ」と話すのは、執筆、トレーニング、コンサルティングの分野で活躍するサンダー・バンビュット氏だ。同氏は米TechTargetの寄稿編集者である。
米Cloud Technology Partnersで製品とソフトウェアの責任者を務め、米TechTargetの寄稿編集者でもあるジョン・トレッドウェイ氏によると、特に物理ハードウェアの世界では、オープンソースプロジェクトの道のりは厳しいという。
「このコンソーシアムのような取り組みによって、落ち目のプラットフォームが奈落の底から救われることはめったにない」とトレッドウェイ氏は指摘する。「他のRISCベースシステムと同様、IBMのPowerアーキテクチャも何年も前から活躍の場がなくなりつつある。オープンソース方式を採用したところで、目立った反応は得られないだろう。コア技術に対するオープンなガバナンスモデルが欠如しているOpenPOWERの場合はなおさらそうだ」
しかし企業のIT部門の間では、特定のタスクやアプライアンス用としてのRISCベースのシステムの人気が高い。また、米GoogleがOpenPOWER Consortiumに参画していることは、Powerアーキテクチャに関するIBMのロードマップが、米Intelや米AMDなどのプロセッサで動作するx86サーバに共同で対抗することを狙ったものであることを示している。
OpenPOWER Consortiumの役割と制約
OpenPOWER Consortiumでは、IBMがPowerアーキテクチャとPower命令セットを全面的に管理する。これはARM Holdingsのモデルに近い。このため、コンソーシアムの加盟企業が独自の命令を追加したり削除したりすることはなさそうだ。
統一的なアーキテクチャと命令セットはプロセッサのコアを形成するものであり、これによりメンバー間の摩擦や厄介な特殊化を防ぐことができる。加盟各社が追加できるのは、GPUなどのデバイスや各種の専用コントローラーなどだ。このため、デザインの同質性と相互運用性が維持される一方で、プロセッサとOS間の相互作用やパッチが制限される。
同コンソーシアムが目指すのは、企業ユーザーにとってx86プラットフォームや、ARMの「Cortex-A57」デザインをベースとするRISCプラットフォームよりも魅力的なシステムを開発することだ。なお、Cortex-A57を採用した米AMDのRISCプロセッサ「Seattle」は2014年に出荷の予定だ。
同コンソーシアムは手始めとして、IBMが2013年末または2014年初頭に「Power8」チップをリリースするのに協力する。また、一部のベンダーはIBMの各種プロセッサおよびファームウェアの改良に取り組む。Power8は12個のコア(8スレッド/コア)と96MバイトのL3キャッシュを搭載し、4GHzで動作する。「Coherently Allocated Processor Interface」と呼ばれる拡張バスでグラフィックプロセッサや各種専用デバイスと接続する。
OpenPOWER Consortiumのメンバーである米NvidiaはGPUを提供し、米Mellanoxはネットワーキングコンポーネントを提供する。台湾のTYANはシステムマザーボードの開発と製造を担当する他、新たに開発したコンポーネントをサーバなどのシステム用のハードウェアプラットフォームに移植する予定だ。これらのシステムはLinuxなどのオープンソースOSで動作する。
データセンターが求めるサーバの開発
コンソーシアムのメンバーの中では唯一、サーバとシステムを大量に使用する企業である米Googleにとっては、従来のx86サーバよりもエネルギー消費とパフォーマンスに優れたオープンソースデザインは非常に魅力的だ。少なくとも当初の間、Googleはコンソーシアムのデザイン目標を後押しすることも予想される。
従来のプロセッサは、メモリ内容へのアクセスやプロセッサの命令パイプライン内で命令を移動するといったコアタスクに主眼を置いていたため、パフォーマンスの改善やシステムレベルのサーバ機能の実装はマザーボードのレベルで行われてきた。グラフィック処理の高速化、ディスクやPCIeバスへのアクセスといった補助的な機能についても同様だ。
チップレベルのトランジスタの高密度化やオンチップ統合化が進むのに伴い、GPU、ペリフェラルバスコントローラー(PCIeやUSBなど)、ネットワークインターコネクトといった機能をプロセッサに実装することが可能になる。このような「システム・オン・チップ」(SoC)デザインは、サーバメーカーにとってシンプルで低価格という魅力がある。マザーボード上で接続、テストするチップの数が少なくて済むからだ。
「しかしサーバベンダーが開発するシステムと、データセンター管理者が望むシステムとの間には溝がある」と話すのは、人材派遣会社の米24 Sevenでシステムとアプリケーションを担当するディレクターのダグ・フェルトマン氏だ。同社はニューヨークとカリフォルニアにデータセンターを保有する。
「サーバベンダーは、何がうまくいくかを試すのが目的で多くの新機能を投入しているのではないか」と同氏は語る。「ハードウェア製品の新バージョンが登場すると、前バージョンの製品で最も気に入っていた機能がなくなっていることも多い」
データセンター管理者たちはオープンソースのサーバに何を求めているのだろうか(関連記事:CIOに聞いたデータセンターの理想像とは?)。
「われわれにとっての新たな関心事は消費電力だ。これは、以前はそれほど問題にはならなかったのだが」とフェルトマン氏は話す。「また、新しいサーバを検討する際には、利用価値の高い機能があるかどうかもチェックするようにしている。USBからサーバを起動する機能などは、障害を減らすのに非常に有効だ」
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