ベンダーに惑わされない障害復旧計画の立案障害復旧の専門家に学ぶ

障害復旧の専門家、ジョン・トイゴ氏が、業界に広まっている通説を一刀両断。障害復旧の本質から導き出された、本当に必要な対策とは何か?

2013年10月29日 08時00分 公開
[Antony Adshead,Computer Weekly]
Computer Weekly

 障害復旧計画は、適切な対策を立てることが全てであり、製品の販売が主な目的で、計画外のシステム停止から復旧するために最もコスト効率が良く、バランスの取れたソリューションを提供することは二の次のベンダーに惑わされてはならない。

 それが、2013年9月半ばにロンドンで開催された「TechTarget Storage Decisions Advanced Disaster Recovery」でジョン・トイゴ氏が発したメッセージだ。

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 米Toigo Partners InternationalのCEO兼マネージング・プリンシパルであり、Data Management Instituteの会長を務めるトイゴ氏は、計画的に障害復旧計画に取り組むことの重要性を強調する。障害復旧計画においては、組織のキーパーソンが、障害発生時に取るべき行動の内容とタイミングを正確に把握している必要がある。

 「非常に不条理な状況において理性的に考えられるように、主要なスタッフを教育しなければならない。障害発生時にマネジャーが細かい指示を下している余地はない」と、トイゴ氏は話す。

 トイゴ氏は、この意識的かつ計画的な障害復旧への取り組みと対比させて、障害復旧の万能薬という触れ込みの製品を売り込むベンダーを次のようにやゆする。

 「ベンダーは、相手に自社製品を購入する見込みがあれば、“高可用性は障害復旧よりも有効ですよ”などと言うだろう。私なら、そんな言葉を信じるような相手には、ブルックリンにある橋でも売り付けたい」

 障害復旧の専門家のトイゴ氏によると、障害から復旧する際に取り組むべき3大領域は、

  • データの復元
  • アプリケーションの再ホスティング
  • ネットワーク接続の再確立

だという。

 トイゴ氏は、障害復旧に万能な対策はないとし、技術的な観点でレベルを設け、障害復旧対策の分類を示した。これは、「recovery spectrum(復旧レベル区分)」と呼ばれる。この区分の中で、最も費用が掛からず時間のかかる方法は、記憶媒体にテープを使った従来のバックアップだ。この方法では、データの復元、アプリケーションの再ホスティング、ネットワーク接続の再確立が必要になる。

 次は、WANのミラーリングとCDP(Continuous Data Protection:継続的データ保護)だ、これは費用はかさむが、(保護ポイントが頻繁にあるので)データを復元する必要はなくなる。ただし、アプリケーションの復元は依然として必要だ。

 最後の最も費用が掛かるオプションは、サイト間でほぼリアルタイムに処理されるWANのフェイルオーバーだ。この方法では、データやアプリケーションを復元する必要はないが、ネットワーク接続の再確立は必要になるだろう。

多層防御

 障害に備える際のトイゴ氏のキーコンセプトは「多層防御」だ。人、電力、水、ネットワークなどの確保を配慮して、プライマリサイトから十分距離のある場所にデータのコピーを保管する。

 またトイゴ氏は、ほとんどの障害は突発的なイベントではなく、対処方法が分かり、最新の状態のバックアップを取る、系統立ててシステムをシャットダウンする、キーパーソンに通知するなどの措置を取ることで、大惨事は防げるイベントであることも指摘した。

 データを保管する手法は、データの重要性と、再びデータを利用可能にするまでの時間の要件に応じて決まる。ここで重要なのは、テープバックアップであれ、デュアルホットサイトを使ったリアルタイムのフェイルオーバーであれ、保護対象のデータに適したテクノロジーを選ぶことだ。

 障害復旧の多層防御のコンセプトを説明する中で、トイゴ氏はストレージ仮想化やリニアテープファイルシステム(LTFS)など、ベンダー間では無視されがちだが、有用性が認められる幾つかのテクノロジーを紹介している。

ストレージ仮想化

 ストレージ仮想化は、ディスクアレイ、DAS、ノーブランドのJBOD(Just Bunch Of Disks)など、異種の記憶媒体の上に仮想化レイヤーをかぶせるハードウェア製品とソフトウェア製品によって実現される。そういったストレージ仮想化製品は、ストレージメディアを束ねてストレージプールを作成し、ボリュームを作成できるようにする。

 通常、レプリケーションやシンプロビジョニングなどの仮想化製品が付属するハイエンドのストレージサービスを利用すれば、特定のベンダーから機器を購入しなくても、機能的に同一である複数のデータセンターサイトをストレージ仮想化によって作成できるとトイゴ氏は考えている。

 ストレージ仮想化製品には、DataCoreやFalconStorのソフトウェア、IBM SANボリュームコントローラー、NetApp Vシリーズハードウェアなどがある。

 同時にトイゴ氏は、LTFSを運用レイヤーまたはニアラインとして使用することを勧める。LTFSは、比較的すぐにアクセスできるアーカイブで、非常に高速なデータストアを実現できる。LTFSは、NASと同様のヘッドを、ファイルシステムを構成するテープライブラリの前に用意するため、テープに保存されているデータに素早く(数秒程度で)アクセスできる。

 トイゴ氏は、このようなテクノロジーを使えば、障害発生時のデータ保護を妥当な費用で効果的に実現できるとし、極めて重要で時間要件の厳しいケースでない限り、多くのデータセンターで採用できると話す。

 障害復旧に関する自身の考えを述べる中で、トイゴ氏は以下のような現行のテクノロジーについて、慎重な、時には手厳しい評価を下している。

HDD vs. テープ

 トイゴ氏は、ITベンダーは好んで「テープは廃れた」と主張するとしつつ、HDDならではの問題を指摘する。

続きはComputer Weekly日本語版 2013年10月23日号にて

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