ヤクルトのオランダ法人は、データアナリティクスを活用して20%の売上増を実現した。分析の結果、購買者の行動や嗜好も明らかとなり、夏に売り上げが低下した原因も判明した。
プロバイオティクス(人体の健康を増進する細菌)飲料のメーカーである日本のヤクルト本社(以下、ヤクルト)は、アナリティクスとデータ可視化を行う洗練されたツールを利用して顧客の習慣的購買行動を把握し、オランダでの売り上げを15〜20%も伸ばした。
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同のオランダ法人は公開されているデータと非公開のデータを幅広く集めて分析し、オランダのスーパーマーケットにおける同社商品の売れ方を特定した。そして、ヤクルトオランダ法人の売り上げは、ただ1つの商品に支えられていることが分かった。その商品「ヤクルト」は発酵させた牛乳にバクテリアを加えたもので、健康志向が強いコンシューマーが好んで購入していた。この乳飲料は1930年代に日本で開発され、現在は33カ国で販売されている。販売を担当するのは、これまた同社独自の「ヤクルトレディ」だ。アジア地域では各家庭への配達、西欧ではスーパーマーケット店頭での販売という形式を取っている。
2015年度の全世界のヤクルトの売り上げは30億ドルを計上しているが、ライバル企業である仏Groupe Danoneも2004年からプロバイオティクス飲料を発売しており、ヤクルトは激しい競争に直面している。しかしライバルに市場シェアを奪われるどころか、競合商品の登場以来、両社ともに売り上げを伸ばし続けていることが分かり、ヤクルトはその理由を詳しく分析したいと考えていた。
「どうやら競合他社とのシナジー効果が表れているらしい」と本誌Computer Weeklyに語るのは、ヤクルトオランダ法人でマーケットアナリストを務めるエグバート・ヤン・フィアカント氏だ。
分析を開始するまで、ヤクルトは市場の変化を決定する要因は何なのか、情報を全く把握していなかった。データは社内に分散しており、従業員が個人的に作成したスプレッドシートだけに格納されている場合も珍しくなかった。
ヤクルトはこんな状況を変えるため調査活動に割り当てる予算を倍増し、マーケットアナリストを迎え入れて、市場のダイナミクスに対する理解を深めることに注力した。
こうして同社に入社したフィアカント氏には、ビジネスインテリジェンス(BI)ソフトウェアである「IBM Cognos」、統計ソフトとして広く普及している「IBM SPSS Statistics」、独SAPのアナリティクスパッケージ「BusinessObjects」などの利用経験があった。
同氏はある日、スウェーデンの新興企業(当時)、Spotfireの営業担当者からアナリティクスパッケージを提案された。複雑なプログラミングを行わなくても分析結果をグラフ形式で表示できる機能が気に入って、すぐに導入したくなったという。「直感的な分かりやすいUIだったので、自分が以前から慣れ親しんでいた環境を取り戻した気分になった」と、フィアカント氏は当時を振り返る。
「前もって戦略を考える必要はない。分析処理は高速で実行できるから、いきなり画面に向かってやってみればいい。米Microsoftの『Excel』に比べると、処理速度は500倍も速い。グラフの作成には数秒しかかからない」(フィアカント氏)
フィアカント氏は、「Spotfire」がクラウドサービスに移行するまで待つことを決断し、満を持して自社幹部に対するビジネスケースのデモを実施した。同氏が提示したのはビジネスケースというよりもシステムのデモであり、同社の経営陣はその場で質問し、フィアカント氏は操作を実演して回答して見せた。
同氏はそのときの様子を、オランダにもたくさんある日本の鉄板焼きレストランに例えた。
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