セルフサービスを成功させる秘訣とはComputer Weekly製品ガイド

セルフサービスITを模索する組織が増えている。この技術を有効活用するには何が必要なのか。

2016年04月25日 08時00分 公開
[Jim MortlemanComputer Weekly]
Computer Weekly

 組織の規模の大小を問わず、セルフサービスITの人気が高まっている。入念に計画を立てて戦略的に実行すれば、従業員セルフサービスシステムは組織の社内プロセス合理化や管理負荷の軽減、従業員の効率と生産性の向上に役立つ。それだけでなく、従業員の満足感と貢献度を高めることもできる。だが、やり方がまずく、システムが使われなければ、生産性は向上せず、従業員はやる気を失ってコスト削減の犠牲になったと感じるかもしれない。

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 本稿ではこの技術を導入した3つの組織の実例を紹介し、導入を確実に成功させる方法を解説する。

セブンオークス郡:ソフトに、ソフトに

 ほとんどの地方自治体がそうであるように、英セブンオークス郡も予算の縮小に直面している。給与管理者のデビー・ホードリー氏によれば、同郡は管理コストやITコストを削減し、紙の書類が基本だった業務プロセスをモダナイズする目的で「Employee Self Service」(ESS)に目を向けた。給与や人事はESSで最も普及かつ成熟した分野であり、出発点としては理想的と考えた。

 2014年9月、セブンオークス郡のIT責任者は、給与・人事・人材管理のためにMidlandHRのクラウドESSシステム「iTrent」を導入した近隣の郡を訪れた。

 ホードリー氏はこのシステムについて、「理想的に思えた。とてもユーザーフレンドリーで、コンピュータがあまり好きではない職員でさえ、難なくその機能を活用できるだろうと思えた」と振り返る。

 導入はホードリー氏自らが主導し、「Microsoft Excel」で構築した古い「Selima HR」システムから全データを抽出し、フォーマットして手作業でiTrentに入力した。このやり方を大企業で行うのは明らかに無理があるが、職員が約400人のセブンオークス郡は半年かけて移行。2月から3月にかけては新旧のシステムを並行稼働させて、4月に切り替えを行った。

 ごみ収集担当者など、十数人の職員はコンピュータを利用していないものの、セルフサービスと電子給与明細の利用率は85%に上った。効率性は職員1人につき週に約2時間向上し、書類に掛かっていた年間1万ポンドのコストに加えて、電子給与明細への移行に伴い6000ポンドのコストを削減できた。それまでほとんどの時間を管理業務に費やしていたホードリー氏は、もっと高いレベルの付加価値プロジェクトに集中できるようになった。セブンオークス郡のIT部門も、庁内システムのサポート負担から解放された。

 ホードリー氏によると、最大の課題はカルチャーショックへの対応だった。「ちょっとしたことにも手を抜けない。職員にとっては大きな変化であり、『ソフトに、ソフトに』というアプローチを心掛ける必要があった。切り替え前には大量のメールを職員に送って今後の手順を説明した。内部マニュアルを作ってイントラネットに掲載し、IT部門は個々の業務のやり方について具体的に解説するビデオクリップを作成した」(同氏)

 多くの変化が同時に進行して職員が圧倒される事態を防ぐため、システムの機能は段階的に流れに乗せた。「まずは基本的なセルフサービス機能として細部の変更と休暇の申請から着手した。先月からはチーム内でカレンダーを共有できる機能を追加し、次の段階として人材採用と職種をシステムにリンクさせる」

 それ以外には、データを簡単に引き出せるシステムを選定し、将来的にクラウド事業者を変更する選択肢を残しておくことも大切だという。「予算は今も縮小している。この契約が切れるときにもっと料金が安くて同じようにうまく機能する選択肢があれば、切り替えることもできる」とホードリー氏は話す。

Graydon:準備に手を抜かない

 データの量とデータソースが増え続ける中で、クラウドベースのビジネスインテリジェンス(BI)プロバイダーの人気が高まり、セルフサービスはその製品に共通するコンポーネントになっている。Graydonは信用照会、債務回収、ビジネス情報サービスを英国とオランダ、ベルギーで展開し、約500人の従業員を擁する。2015年、同社はセルフサービスクラウドBIシステム「Birst」の導入プロジェクトに着手した。これは同社のマーケティングチームと会計チームが、データの可視性を高め、有効活用するために連携したことを受けて実現した。

 Birstプロジェクトを最初に始めたのは、SAP用の優れたレポーティングツールを探していた会計部門だった。しかし、間もなくマーケティングチームが先導するようになった。GraydonのグループCRM&インテリジェンスマネジャー、バート・レダー氏は言う。「われわれはBirstのセルフサービス機能に魅了され、全顧客のデータを包括的に把握したいと考えた。そこで同社のSAPシステムのデータだけでなく、会社の中核システム、CRMシステム、Google Analyticsなど、多様なデータソースをBirstのクラウドデータウェアハウスに取り入れた。システムは後に拡張され、人事やGraydonの一部子会社も使うようになった」

 「Birstを使って読みやすいダッシュボードを設計し、全部門が戦略的、全社的な観点から正確なデータを参照できるようにした。同システムではまた、ユーザーが自分自身に関する分析を即座に生成することも可能になった。例えば、営業担当者は月間の進捗(しんちょく)状況と目標をチェックでき、データを切り貼りしてビジネスの助けになる新鮮な視点を打ち出せる。

データの品質保持

 ここに到達するまでには、1年間にわたる複雑な作業が必要だった。

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