プライバシーか安全か、Microsoftと米国政府の全面対決の結果は?控訴裁判所が判決

米国外のサーバに保管されたメールデータに米国政府はアクセスできるべきか否か。米国政府の要求に対して控訴で対抗したMicrosoft。控訴裁判所は、Microsoftの主張を是とした。

2016年09月13日 08時00分 公開
[Warwick AshfordComputer Weekly]

 テクノロジー業界がMicrosoftの勝訴を歓迎している。Microsoftは、アイルランドのデータセンターに保管されている電子メールを提出するよう米国政府に要請され、これに異議を申し立てていた(訳注)。

訳注:3月16日号:Microsoftが米国政府と全面対決に、Microsoftのハウガー氏へ本件に関してインタビューした記事を掲載している。

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 第2巡回区合衆国控訴裁判所が下した待望の判決は、クラウドサービスのプライバシー保護に関する画期的な裁定と見なされ、人権擁護団体からも歓迎されている。

 米当局は、米国政府が麻薬取引に関係すると考える電子メールにアクセスするため、2013年12月に令状を発行した。対象の電子メールは、アイルランドのダブリンにあるMicrosoftのサーバに保管されていた。

 2014年7月、米連邦裁判所のロレッタ・プレスカ判事は、問題のデータを管理する米国企業として、Microsoftはデータへのアクセス要請に応じなければならないとする判決を下した。だが、Microsoftはこの判決を不服として控訴し、電子メールは顧客に帰属し、サーバも米国の管轄外にあると主張した。

 テクノロジーへの社会的信頼が失われると自社のビジネスに悪影響が及ぶという懸念から、複数の米国大手テクノロジー企業が監視活動の改革を求めている。Microsoftもその1社だ。

 「今回のケースにおける米国政府の立場はテクノロジーに対する社会的信頼の失墜を促すものであり、最終的には世界市場における米国のテクノロジー分野でのリーダーシップを危うくする」と、Microsoftは提出した控訴状の中で述べている。

 米当局による令状の発行から2年6カ月後、米国外に保管されるデータは米国の令状の対象にはならないという判決が満場一致で下された。この裁定を喜んで受け入れ、Microsoftは同社の控訴を支持していた企業や団体に感謝の意を表明した。

 今回の判決によって、「米国政府はもはや捜査令状を一方的に利用して他国に手を伸ばそうとすることも、他国のユーザーに帰属する電子メールを取得しようとすることも不可能であることが明確になった」と、Microsoftで社長兼最高法務責任者を務めるブラッド・スミス氏はBBCに語った。

 「この判決で、ユーザーが所有するデータをクラウドに移す際、テクノロジーに確かな信頼を置けることが示された」

 Microsoftを法廷助言者として支持していた企業と団体は、Open Rights Group、Center for Democracy & Technology(CDT)、BSA | The Software Alliance、米国商工会議所、全米製造業協会およびACT | The App Associationだ。

 英国を拠点とするOpen Rights Groupで法務部長を務めるマイルズ・ジャックマン氏は、今回の判決によって米国法執行機関は欧州市民のデジタルプライバシーの権利と個人情報保護を尊重しなければならなくなったと指摘する。

 「米国は、企業に対して無理を通すことができるだろうという理由だけで独断で国境を越えるべきではない」とジャックマン氏は述べる。

 「英国政府にも今回の判決に注目するように呼びかけている。同政府の『Investigatory Powers Bill』(調査権限法)もまた、外国企業に英国政府の要請を強制的に実行させる権限を作り出そうとする試みであるためだ」

 「世界各国の政府機関からの要請に対して個別に責任を負うのではなく、事業を展開している国の国内法を順守するという不動の原則を企業は確立する必要がある。法執行機関がデータを要請するための手段を定めるには条約が必要だ」

控訴裁判所の判決は「プライバシーを支持」

 CDTによると、今回の判決は同団体がMicrosoftを支持する意見書で展開した主張に近いという。

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