マカフィーの2018年脅威レポート
ランサムウェアが新聞配達を止めた サイバー犯罪によるビジネス被害が現実に
McAfeeは2018年第3四半期における脅威レポートを発表した。企業団体のビジネスを阻害する大規模なサイバー犯罪が後を絶たず、そうした事件が日本で起こることも十分考えられる。
「ビジネスの停止を狙ったサイバー犯罪が日本で起こる可能性は十分ある」。McAfeeでシニアセキュリティアドバイザーであるスコット・ジャーカフ氏はこう語る。同氏は2018年の重大なサイバー犯罪の中に、ビジネスに深刻な被害をもたらしたものが複数あったと指摘する。IoT(モノのインターネット)デバイスへの攻撃検出数が急増していることも、最近の特徴的な動きだという。
併せて読みたいお薦め記事
企業はサイバー犯罪とどう向き合うか
日本の企業団体とセキュリティ
複数新聞社が印刷と配達を止められる事態に
McAfeeが2018年12月に発表した2018年第3四半期(7~9月)の脅威レポートによると、新たなランサムウェア(身代金要求型マルウェア)は2017年の第4四半期に最も多く検出されて以降、落ち着いてはいるものの(写真1)、依然として猛威を振るっている。データや情報を盗み出すのではなく、重要なデータを「人質」に取り、高額な身代金を要求するこの手法は、2018年12月に大きな事件を起こした。
被害者となったのはLos Angeles Times、New York Timesなど複数の米新聞社だ。これらの新聞社が共有する印刷システムがサイバー攻撃を受け、新聞の印刷・配達機能の停止にまで発展した。攻撃起点となったとみられるランサムウェア「Ryuk」は、ネットワークのエンドポイントにあるシャドーコピー(一時的な自動バックアップファイル)を削除するだけでなく、ドライブの暗号化も可能。Windowsのシステム復元機能も無効にできる。外部ストレージのバックアップがない限り、データを復旧できない状況に陥れることが可能だ。
「対岸の火事」ではない
2018年の平昌オリンピックでは、ITインフラがサイバー攻撃の対象になった。開会式直後の同年2月に、大会の公式Webサイトなどが被害を受けたと大会組織委員会が発表した。開会式のチケット発行に支障が出るなど、観客への実害を及ぼしたという。攻撃者はロシアのハッカーではないかという臆測が飛び交った。同大会ではロシア選手団のドーピング問題が発覚し、出場を禁じられたという経緯があったためだ。
このようなビジネスを停止に追い込む攻撃の事例は、海外だけの話ではない。日本国内で同様の被害が発生する可能性は十分ある。「ビジネスに影響が生じるようなサイバー攻撃に対して、企業は常に注意を払い、対策を講じる必要がある」とジャーカフ氏は念押しする。
ビジネスの停止だけでなく、情報漏えいを狙ったサイバー犯罪も衰えを見せない。ホテル事業を展開するMarriott Internationalはホテルの予約システムにサイバー攻撃を受けた。判明したのは2018年11月で、最大3億8300万人の顧客が個人情報流出の被害者となったと同社は推定する(2019年1月時点)。氏名や住所、メールアドレスなど基本的な個人情報だけでなく、旅程・ホテル予約情報、パスポート番号といった詳細情報が流出した顧客もいるとみられる。同社の見積もりでは、暗号化されていないパスポート番号の流出件数は2030万件に上るという。「この攻撃は、政府高官が出張した際のホテルの利用情報を入手し、移動先や行動を突き止めることを目的にした可能性がある」とジャーカフ氏は説明する。
「質より量」のIoTデバイスハッキング
検出数の伸びが目立つのは、IoTデバイスを狙った攻撃だという。乗っ取ったデバイスを使った仮想通貨マイニング(クリプトジャッキング)が目的だ。McAfeeの調査部門であるMcAfee Labsが2018年に検出したクリプトジャッキングマルウェアの合計サンプル数は、2017年と比較して4467%増加し、およそ389万件に上った。
「IoTデバイスはPCと比べてセキュリティの強度が低く、外部からの侵入を許しやすい。個々のマシンパワーは低いが、数量の多さでそれをカバーできるため、クリプトジャッキングに悪用されるケースが増えている」とマカフィーの櫻井秀光氏は説明する。さらに同氏は次のような懸念を示す。「IoTデバイスのセキュリティは未熟であり、例えばパスワードを初期設定から変更することを強要しないデバイスもある。そのようなデバイスは、マニュアルを参照して初期パスワードを入力すれば簡単にハッキングできてしまう」
IoT化が進み、今後ますますITと現実世界が密な関係になるにつれて、サイバー犯罪による被害の危険性も増していく。サイバー犯罪はもはや仮想的な、どこか遠い世界の存在ではなく、日常を脅かし得るものだということを念頭に置き、対策を練る必要がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[ファインディ株式会社] AI利用率だけでは説明できない成果 開発組織の競争力を生む「開発資本」とは? -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] AI活用を成功へ導く、シンプルで費用対効果に優れたクラウド基盤とは? -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] マネージドKubernetesには限界も――メリットをフル活用する新たな選択肢とは? -
技術文書・技術解説
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] 決断の日が迫る「vSphere 8」サポート終了問題 考慮すべきリスクと選択肢は? -
製品資料
[サイバーソリューションズ株式会社] メール誤送信対策のルールが肥大化 苦しむ情シスはどうすれば救われるのか?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
3
Copilot導入で陥る“目的化”の落とし穴 定着の鍵は「作り込まない」こと
-
4
「アップグレードできないJava」をどう守る IBMとRed HatがAIで400件超修正
-
5
パッチなしで「今すぐサーバを落とせ」 Kiteworks異例警告の波紋
-
6
IT製品の導入に関するアンケート「セキュリティ」編
-
7
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
10
LINEヤフーはなぜ「社内の管理者」すら信用しないインフラを作ったのか
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
2
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
3
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
4
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
5
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
6
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
7
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
8
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
9
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
10
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー