複数のクラウドを併用する「マルチクラウド」に対して、AWSは積極的ではない。自社サービスのみでユーザー企業のニーズを満たそうとするAWSの戦略は、長く続かない可能性がある。それはなぜなのか。
MicrosoftやGoogleが「Azure Arc」や「Anthos」といった、複数のクラウドを併用する「マルチクラウド」を想定した管理ツールをいち早く提供する一方で、Amazon Web Services(AWS)はこうした動きに出遅れている。前編「なぜ“AWS縛り”ではなく『マルチクラウド』が選ばれるのか」に続く本稿は、その背景を探る。
「『ユーザー企業がAWSだけを利用するように仕向けたい』とAWSが考えることは、現在の市場リーダーとしては当然のことだ」。こう語るのは同社のパートナーであり、クラウドストレージをファイルサーバとして利用するためのゲートウェイ製品を提供するPanzuraのCEO、パトリック・ハー氏だ。
ハー氏によると、AWSは必ずしもマルチクラウドに反対しているわけではない。「AWSは、自社サービスがユーザー企業のあらゆるニーズに応えられると考えているだけだ」と同氏は話す。AWSは既に、クラウドサービスと、ユーザー企業がオンプレミスのインフラに構築したプライベートクラウドを組み合わせる「ハイブリッドクラウド」に取り組んでいる。そのため同氏は「AWSはマルチクラウドでも大きな後れは取っていない」と考察する。
「急いでマルチクラウド戦略を推し進めないもう一つの理由は、AWSがMicrosoftのようにオンプレミス向け製品からライセンス収益を得ることができず、クラウドサービス市場での高い占有率に頼らざるを得ない点にある」。そう語るのは、ITコンサルティング企業Sparkhoundでクラウドインフラのコンサルタントを務めるブライアン・ブロック氏だ。
AWSは当然ながら、ユーザー企業が同社のクラウドサービスを使用することで利益を得ている。そのためマルチクラウドの普及によって、AWSのクラウドサービスから他社のクラウドサービスに移行する道筋をユーザー企業に提供することは、収益の減少を意味する。「自社サービスの革新と改良に時間を費やすことは、AWSが市場で有利な状態を維持するための最も効果的な方法だ」とブロック氏は指摘する。
だが長い目で見ると、AWSはこれらの戦略を維持できない恐れがある。
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