サイバーセキュリティ保険導入ガイド【第1回】
「サイバーセキュリティ保険」は何を補償するのか? 範囲と内容
セキュリティインシデントによる被害を抑えるためにはサイバーセキュリティ保険が有効だ。何が可能で何が不可能なのかを理解しよう。
「企業には2種類しかない。サイバー攻撃を受けた経験がある企業と、未経験の企業だ」。2012年開催のセキュリティカンファレンス「RSA Conference 2012」でそう語ったのは、当時米連邦捜査局(FBI)長官だったロバート・モラー氏だ。火災や洪水といった自然災害と同様に、サイバーセキュリティ事故が企業を襲えば、財務上の損失、企業評判への影響、業務停止などが起こり得る。
「サイバーセキュリティ保険」は、企業が第三者にリスクを移し、サイバーセキュリティ事故発生時に確実なインシデント対処を可能にするための重要な手段だ。リスクを軽減するセキュリティ対策を無料または割引料金で利用できるサイバーセキュリティ保険もある。
全てのサイバーセキュリティ保険が均一な体系を持つわけではない。本連載は、サイバーセキュリティ保険の種類、補償範囲の選び方、サイバーセキュリティ保険の導入後に取るべき重要な手順を説明する。
併せて読みたいお薦め記事
サイバーセキュリティ保険について知る
- いまさら聞けない「サイバーセキュリティ保険」とは? メリットと課題を解説
- 「サイバーセキュリティ保険」の落とし穴と、契約時の8大チェック項目とは?
- 今更聞けない「サイバーセキュリティ保険」の真実、何をどう補償するのか?
さまざまなインシデント対処方法
補償範囲の詳細
サイバーセキュリティ保険には標準形式がない。保険会社は、補償範囲が異なる多様なメニューを用意している。一般的なサイバーセキュリティ保険のメニューには次のものがある。
事故対処サービス
データの漏えいや破壊といった侵害の対処コストを補償するのが「事故対処サービス」だ。補償対象にはフォレンジック(流出に関する経路や原因の調査)やコンサルティング、弁護、コールセンター、広報、クレジット監視などのコストがある。
保険会社によっては、コストを補償するのではなく、実際に対処チームを派遣する場合もある。事故対処サービスは、特に専属サイバーセキュリティチームのない小規模企業にとって有益だと考えられる。
セキュリティおよびプライバシーに関する賠償責任補償
サイバーセキュリティ事故に起因する損害賠償請求から契約企業を守るのが「セキュリティおよびプライバシーに関する賠償責任補償」だ。具体的にはセキュリティ/プライバシー関連の法律違反で支払うべき損害賠償金や法的防御コスト、調査コストの補償を含む。
規制に関する防御コストおよび罰金補償
「規制に関する防御コストおよび罰金補償」は、罰金、制裁金、裁判コスト、調査コストなど、規制措置に関するコストを補償する。
事業利益保険
サイバーセキュリティ事故が原因で業務が停止した場合に、収益減などの影響を最小限に抑えるためのコストや、業務を復旧させるサービスの料金を補償するのが「事業利益保険」だ。通常、収益減の補償適用までには待機期間が発生することに注意する必要がある。
一般的に事業利益保険は、契約企業所有のインフラが影響を受けた場合に補償を受けることが可能だ。ただしクラウドベンダーなど自社以外の原因で業務が停止した場合は補償対象にならない可能性がある。
メディア賠償責任補償
「メディア賠償責任補償」は、著作権侵害、盗用、中傷、名誉毀損(きそん)など、コンテンツに関する過失行為に関わる賠償を補償する。
サイバー恐喝対策費用補償
ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)や情報の暴露による恐喝が発生した際の身代金交渉と支払いに加え、データの暗号化解除、復旧、調査などのコストを補償するのが「サイバー恐喝対策費用補償」だ。
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