新型コロナが企業にもたらす5つの脅威【後編】
コロナ禍で「AI規制」「ブロックチェーン停止」「クラウド停止」に注意すべき理由
企業が取り入れているさまざまな技術には脅威が潜んでいる。Citrix Systemsの調査で重要な脅威に挙がった「AI技術への規制」「ブロックチェーンの停止」「クラウドサービスの停止」と、それぞれの対策を説明する。
Citrix Systemsは未来の労働環境に関する調査「Work 2035」において、2019年から2020年にかけて欧米のビジネスリーダー500人以上を対象にアンケート調査を実施しました。その結果からは、企業が直面する重大な技術的脅威が5つあることが分かりました。2つの脅威を紹介した前編「コロナ禍で深刻化する『サイバー攻撃』『AIの誤作動』にどう備えればよいのか」に引き続き、本稿は残る3つの脅威を紹介します。
- サイバー攻撃とデータ侵害(前編で紹介)
- AI(人工知能)エンジンの誤作動(前編で紹介)
- 政府の規制とAI技術の偏り
- ブロックチェーンの停止
- クラウドサービスの停止
脅威3.政府の規制とAI技術の偏り
調査対象となったビジネスリーダーの91%が、2035年までに「政府の規制や法律が技術の発展を阻害する可能性がある」と回答しています。世界各国の政府がAI(人工知能)技術に関する法律や規制に対して様子見の姿勢を取り続ける一方で、AIエンジンから偏見(バイアス)を取り除くにはどうすればよいかといった、AI技術の倫理的かつ責任ある利用についての議論も続けています。世界各国の政府は、AI技術の倫理的利用に関連した法規制をほとんど整備できていません。ただし、いずれは法規制を整えると考えられます。ビジネスリーダーは、AI技術への投資と並行して、AI技術が法的規制を受けるリスクを考慮するのが賢明です。
脅威4.ブロックチェーンの停止
ブロックチェーンとは、ネットワークを介した取引に関する記録を分散させることにより、取引の改ざんを防止する技術およびそれを実装したシステムです。国際会計事務所/コンサルティング企業Deloitte Touche Tohmatsuは、「2020年代は企業がブロックチェーン技術を採用する10年になる」と予測し、戦略的優先事項のトップ5にブロックチェーン技術を挙げています。
技術が成熟するにつれ、ブロックチェーン技術を実験的に製品/サービスに取り入れるだけではなく、堅牢(けんろう)な企業向け製品/サービスの開発にも取り入れる動きが見られるようになり、投資額が増加していくと考えられます。ブロックチェーンのトレンドとして有望視されているものの一つが「BaaS」(Blockchain as a Service)です。BaaSは、ブロックチェーンと連携させてユーザー企業が独自のアプリケーションを開発できるクラウドサービスです。
今回の調査対象となったビジネスリーダーの88%が、ブロックチェーンを活用したサービスやシステムの停止を懸念しています。ブロックチェーンは暗号資産(仮想通貨)の実装に用いられる技術です。暗号資産サービスに障害が発生してサービスが停止した場合、暗号資産交換事業者などそれを利用している企業のビジネスもその間停止する危険性があります。
脅威5.クラウドサービスの停止
調査対象のビジネスリーダーの86%がクラウドサービスの停止を懸念しています。一方で企業は、クラウドサービスの停止を脅威としてさほど認識しない傾向もあり、注意が必要です。
COVID-19の流行は、人々の生活様式の変化や働き方の多様化をもたらしました。そうした変化に企業が順応する助けになったのがクラウドサービスでした。今後のテレワーク移行の推進においても、クラウドサービスは企業に大きく貢献するでしょう。
顧客に関するデータや、提供製品・サービスに関するデータなどのデータを大量に収集して分析し、ビジネスに役立てるデータ駆動型ビジネスは、ニーズに応じた製品・サービスを実現する上で重要です。このようなデータ駆動型ビジネスの支柱となるのがクラウドサービスです。クラウドストレージやデータベースのクラウドサービスを用いることで、企業はハードウェアの制約を気にすることなく膨大なデータを保管できるようになります。
特にセキュリティの観点から、2020年はクラウドサービスのメリットを実証する上で重要な意味を持ったと言えます。COVID-19の流行に伴って普及したテレワークにおいて、オフィス外からアクセスできるインフラとして企業はクラウドサービスを活用しています。クラウドサービスが安全なテレワークを支えているのです。
クラウドサービスを稼働させるシステムの障害は、クラウドサービスの停止を引き起こします。そうしたクラウドベンダー側の問題による影響を軽減するには、複数のクラウドサービスを採用するマルチクラウドや、グローバルにデータセンターを構えるクラウドサービスの導入を検討しなければなりません。こうすることで、特定のクラウドサービスやデータセンターが停止するなど不測の事態からデータを守り、企業活動を継続させる助けになります。
COVID-19の流行を受けて、企業は自社に取り入れている技術を短期間のうちに強化しました。それと同時に企業が直面する脅威も増大し、攻撃者が新たな脆弱(ぜいじゃく)性を利用する機会を生み出しました。ビジネスリーダーはこれまで以上に、直面している技術的脅威を継続的に確認し、業務やシステムを慎重に設計して、どのような混乱が生じてもビジネスを成長させられるようにすべきです。
Work 2035について
本調査は2部構成です。第1部でCitrix Systemsは、2035年における労働の将来像や、人と技術の関係性の変化について、ビジネスリーダーへの調査結果と組み合わせた未来のシナリオを立案しました。コンサルティング会社Oxford AnalyticaおよびMan Bites Dogによるシナリオ立案では、学界、シンクタンク、多国籍企業の役員会から招いたリーダーとの討論や、将来の労働に関する専門家を交えたインタビューと意見交換を実施しました。これらの結果を基に、「人手の代替となる労働力」対「技術による労働者の能力の拡張」、「集中型労働」対「分散型労働」という労働における2つの軸を推定しました。併せて2035年の労働に関する4つの異なるシナリオを作成しました。
第2部では企業のリーダーや従業員を対象に調査を実施し、仕事の将来像を明らかにしました。この調査は2019年と2020年に調査会社Coleman Parkes Researchが、大企業、老舗企業、中堅企業で働く500人以上のビジネスリーダーと1000人の従業員に対してインタビューしたものです。
2020年4月には、300人のビジネスリーダーを対象に、COVID-19のパンデミック(世界的流行)をどのように対処しているのか、パンデミックが仕事の将来に対する見解にどのような影響を与えているのかについて、追加調査を実施しました。
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新型コロナが企業にもたらす5つの脅威
技術の発展や業務形態の多様化に伴い、企業に迫る脅威も変化しつつある。Citrix Systemsが2020年に実施した調査結果を基に、気を付けるべき5つの脅威の危険性と対策を紹介する。
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