2020年09月01日 05時00分 公開
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「AI手術支援システム」に手術を任せられる日は来るか?規制は厳しく、市場は未成熟

手術支援に人工知能(AI)技術を導入する場面は、現時点ではごく一部に限られている。だが「AI手術支援システム」は、治療の質を向上してリスクを低減する大きな可能性を秘めている。

[Kathleen Walch,TechTarget]

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 人がより効率的にきめ細かい方法で作業できるように、人工知能(AI)技術を搭載したシステムが人を支援する機会が広がっている。AI技術を搭載した画像診断装置、診断支援ソフトウェアなどがその例だ。以前は人にしかできないと考えられていた作業が、AI技術の支援を受けられるようになってきた。こうした技術は「拡張知能」(Augmented Intelligence)として知られている。

 AI技術を使って手術を支援する「AI手術支援システム」は、拡張知能の注目すべき応用例だ。その名の通り、AI手術支援システムは外科医の第二の手や目となって手術を支援する。さらにロボット技術を活用した「手術支援ロボット」も医療機関に浸透し始めている。本稿は、手術の現場でAI手術支援システムや手術支援ロボットを使用するメリットと可能性を紹介する。

手術の可否を判断し、治療を簡略化し、手技をサポートする

 AI手術支援システムは、画像診断の際に異常所見を鑑別する場面で重宝されている。例えばリンパ節転移陽性のがんに関して、AI手術支援システムは検出率を向上させ、見逃しや見落としの件数を削減することで、人命救助に貢献する。AI手術支援システムを利用して最初の問題特定と手術部位を決定するプロセスは、治療を簡略化するだけでなく、そもそも手術が必要かどうかの判断を支援することもある。

 人体の3D(3次元)医用画像を作成する際に、AI手術支援システムを使う場合もある。3D医用画像は、外科医の手術準備や、実際の執刀の際に正確な参照物になる。

不安を減らし、治療をより低侵襲に

 切開に伴うリスクを低減する上で役立つのが、手術支援ロボットだ。手術支援ロボットは、高い正確性と高度な技能を実現する。手術支援ロボットを手術室に配備すれば、的確で高精度な技術を要求する術式も可能になる。その結果、医療ミスや合併症の低減につながる可能性がある。

 手術支援ロボットが切開部位の縫合をしてくれることは、外科のパフォーマンス向上にもつながる。こうしたロボット手術は傷口を小さくでき、患者のダメージを少なくできる。切開部位が小さければ患部周囲の炎症も抑えられ、回復も早くなる。つまり、患者が回復するまでに病院と自宅で費やす時間が短くなる。

手術時の疲労を抑制

 手術時の疲労は、処置が長時間にわたり複雑になるほど、全ての関係者にとって大きなリスクになり得る。手術支援ロボットを手術室に投入し、AI手術支援システムを組み合わせることで、外科医の負担を下げられる。その結果、医療従事者は元気を取り戻し、医療ミスも少なくなるだろう。

 手術の際には、手術部位だけでなく他の臓器に負担が掛かることもある。AI手術支援システムがあれば、手術中の不慮の切開や交差汚染といった事故によって術者が他の臓器に損傷を与えるリスクを低減するのにも役立つ可能性がある。

 AI手術支援システムを利用した手術は、大きな可能性を秘めている。だが多くの医療機関は、手術のリスクを重く見て慎重な判断をしようとしているために、AI支援システムの使用を厳しく規制している。このような規制から、AI手術支援システムの成熟度はまだ初期段階にあるのが実情だ。

 現時点において、認可された「自律型のAI手術システム」は存在しない。認可を受けている一部のAI手術支援システムは、いずれも人に逐一情報を提供することが必須になっている。今後の数年で、AI技術は医療現場にさまざまな改善をもたらすだろう。高度な訓練を受けた医療従事者の「頼れる助手」という役割を果たすだけでなく、自律的に機能するAI手術支援システムの用途が増える状況を目にするのも夢ではないはずだ。

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