企業は生成AIを今後のビジネスでどのように活用する方針なのか。IT部門や事業部門の意思決定者670人を対象にした調査から、企業が計画している生成AIの活用方針や導入の意向などが具体的になった。
テキストや画像などを自動生成するAI(人工知能)技術「生成AI」(ジェネレーティブAI)。企業は生成AIをビジネスでどのように使う方針で、どの段階まで進んでいるのか。米TechTarget傘下のアナリストグループEnterprise Strategy Group(ESG)が2023年8月に公開した調査レポート「Beyond the GenAI Hype: Real-world Investments, Use Cases, and Concerns」を基に解説する。
調査は2023年5月〜7月にESGが実施したもので、IT部門と事業部門の意思決定者670人を対象とした。回答地域の内訳は、欧州・中東・アフリカ地域(EMEA)が約18%、北米が65%、アジア太平洋が16%、中南米が2%だ。
ビジネス戦略における優先事項として「生成AIの使用」を挙げた企業は9%となり、「クラウド」(8%)と「持続可能性(サステナビリティ)」(7%)を上回った。
上位5つの項目は「レジリエンス(障害発生時の回復力)」(19%)、「デジタルトランスフォーメーション」(19%)、「コスト削減」(16%)、「自動化」(11%)、「アプリケーションモダナイゼーション(最新化)」(11%)だった。いずれも生成AIの使用が影響を与えると考えられる分野だ。
生成AIが役に立つ分野としては、「カスタマーサービス」(48%)、「マーケティング」(45%)、「ソフトウェア開発」(43%)、「システム運用」(38%)、「製品開発」(37%)などが挙がった。
企業は生成AI 活用によるデジタルトランスフォーメーション推進にも期待を寄せていた。具体的な活用分野は、ワークフロー自動化やデータ分析、従業員の生産性向上などだ。
レポートが紹介したある組織は、セキュリティ対策強化やSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を活用したマーケティング、SNS・Webサイト向けの記事制作や画像作成などに生成AIを活用していた。
調査対象の組織の42%は既に生成AIをビジネス用途に使用しており、43%は使用の計画段階もしくは検討段階にあった。生成AIを全社で積極的に使用しているという回答は4%、導入する計画は一切ないという回答は15%にとどまった。
ESGで主席アナリストを務めるマイク・レオン氏は、「生成AIは誇大宣伝の段階を過ぎており、組織は導入を急いでいる」と話す。導入に向けた具体的な取り組みは、チーム編成や予算の確保、技術開発などだ。
レポートは組織が生成AIを導入するに当たっての課題として、スキルギャップ(仕事に必要なスキルと、従業員が持つスキルの差)や倫理的および法的問題、データの質などに関する事項を取り上げた。例えば以下は、さまざまな組織が直面する可能性のある課題だ。
51%の組織は、自社の生成AI戦略において、プロプライエタリ(ソースコード非公開)あるいはオープンソースの「大規模言語モデル」(LLM)を提供するサードパーティーベンダーとの提携を望んでいる。半数以上の組織は、生成AI機能を製品やサービスに取り入れているベンダーを優先的に採用する方針だと答えた。
組織は、生成AI導入に大幅な追加コストを支払うことに前向きではない。調査対象の組織のうち、「生成AI関連の製品やサービスに、現在の10%以上の追加コストを支払っても構わない」と答えたのは10%にとどまった。ある回答者は、「生成AIがビジネスの助けになることは分かっているが、依然としてコストに関する不安は抱えており、製品ごとに費用対効果の分析が必要だ」とコメントした。
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