創立4年目で存在感 “人工知能大学”とはどんな大学なのかアラブ首長国連邦の新しい「成長の原動力」【前編】

アラブ首長国連邦はAI技術の活用を国家戦略に据え、新興大学の発展に力を入れている。同大学は国内の人材育成、シンクタンクとしての役割を担い、存在感を見せ始めている。どのような大学なのか。

2024年02月07日 08時00分 公開
[Pat BransTechTarget]

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 アラブ首長国連邦(UAE)が成長の原動力として、人工知能(AI)技術の活用にどれほど熱心なのかを示す1つの例がある。国家戦略の一環で2019年に設立した大学「Mohamed bin Zayed University of Artificial Intelligence」(MBZUAI)だ。同大学はアブダビのマスダールシティーにキャンパスを構えている。どのような特色があるのか。

どのような大学なのか

 MBZUAIはAI技術に特化した研究大学(学術研究と研究者育成を主目的とする大学)の一つだ。世界中の大学と比較するとMBZUAIの学生数は多くはないが、創立4年目の学校としては健闘している。在籍する学生数は283人(2024年1月時点)で、このうち約20%がUAE出身だ。残りは40カ国以上から集まっている。MBZUAIは2023年度までに111人の卒業生を輩出し、そのうち約90%がUAEに残り、産業界で働くか、大学院で研究を継続中だ。

 まだ歴史が浅い大学であり、過剰な宣伝が見受けられるものの、MBZUAIはUAE国内の人材育成機関とシンクタンクとしての使命を果たし始めている。同大学は、コンピュータビジョン(画像処理を通じて対象の内容を認識して理解するAI技術)、機械学習、自然言語処理、ロボット工学など、複数のカリキュラムでエグゼクティブ教育(社会人教育)や大学院学位を提供している。将来の方向性を示す「ソートリーダー」としての地位も、これらの領域で確立した。

世界トップクラスの研究者が集まるMBZUIA

 MBZUAIは、分散型AI計算(複数マシンでAIモデルのトレーニングや推論を実行する手法)に最適化した施設「Campus Super Computing Center」(CSCC)を設計、建設した。同大学はCSCCに、Hewlett Packard Enterprise(HPE)が開発中の新しいスーパーコンピュータを設置する計画だ。基礎研究だけではなく、企業活動を支援するためにもCSCCを活用する。

 コンピュータビジョン、機械学習、自然言語処理の分野で、MBZUAIは世界トップクラスの研究者を集めている。MBZUAIの初代学長であるエリック・シン氏もその一人だ。シン氏はこの役職に就く前は、カーネギーメロン大学(Carnegie Mellon University)でコンピュータサイエンス学部の教授を務めていた。


 後編は、シン氏が学長として取り組む内容とその狙いを解説する。

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