DeepSeekショックが影響? “OpenAI買収”をぶち上げたイーロン・マスク氏の企みアルトマン氏は「お断りします」と応戦

実業家イーロン・マスク氏らがOpenAIに970億ドルの買収提案を表明した。マスク氏が買収の意向を示した背景には、中国のAIベンダーDeepSeekの台頭があるとみられる。

2025年02月17日 06時00分 公開
[Cliff SaranTechTarget]

関連キーワード

人工知能


 AI(人工知能)技術ベンダーOpenAIの共同創業者でありながら一度解任され、Microsoftに雇用された後にOpenAIのCEOに復帰したサム・アルトマン氏が、再び危機に直面している。実業家のイーロン・マスク氏との対立は新たな展開を迎え、マスク氏と志を同じくする投資家グループがOpenAIの買収に970億ドルを投じる意向を表明した。

 マスク氏の買収提案に対し、アルトマン氏は2025年2月11日(現地時間)、短文投稿サイト「X」に「お断りします」と投稿。「ご希望であればTwitter社を97.4億ドルで買収させていただきます」と応戦した。

マスク氏がOpenAI買収をぶち上げた理由

 2024年6月、マスク氏は、OpenAIとアルトマンCEOが「設立時の合意に違反した」として米サンフランシスコ上級裁判所に提訴した。OpenAIは当初、非営利組織として設立されたが、AIワークロード(AI技術に関連する計算処理などの一連のタスク)の処理に必要なインフラを確保するため、営利企業として再編された。OpenAIはMicrosoftから100億ドルの支援に加え、大規模言語モデル(LLM)を実行するためのクラウドサービスの提供も受けた。

 2025年1月、ドナルド・トランプ米大統領は「Stargate Project」を発表した。大手ベンダーOracleなどが今後4年間で5000億ドルを投資し、OpenAIのインフラを構築する計画だ。

 同年2月10日のブログエントリ(投稿)で、アルトマン氏は「AIが人間と同等の認知タスクを処理できる時代への適応」について触れ、Microsoftとの提携について「Microsoftとの関係を見直す意図はない。長期的な提携を継続する」と確約した。

 しかしOpenAIのLLM開発における地位は、中国のAIベンダーDeepSeekの登場によって脅かされている。DeepSeekはユーザー企業に対し、OpenAIの料金を大幅に下回る価格を提示しているためだ。

 米国の議員らは、米国民のデータが中国政府に共有される可能性があるとして、DeepSeekの規制を試みている。しかしDeepSeekのAIモデルはオープンソースであり、任意のパブリッククラウドで実行可能だ。実際にAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloudは、DeepSeekのAIモデル「DeepSeek-R1」を提供している。

 AIモデルの実行にかかるコストは、必要なGPU(グラフィックス処理装置)によって異なるが、経済的な方法の一つは、DeepSeekのクラウド向けLLMに接続できるAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を利用することだ。

 OpenAIのLLM「GPT-4」の場合、API料金は100万入力トークン当たり2.50ドルかかる。一方、DeepSeekのAPI料金は、100万入力トークン当たり0.55ドルだ。さらにプロンプトキャッシュ(以前入力したトークンを再利用する機能)を使用する場合は、100万入力トークン当たり0.14ドルとなる。

 OpenAIよりも安価に実行できるAIモデルの登場は、投資家の不安を煽る可能性がある。実際にDeepSeekの発表後、GPUベンダーNVIDIAの株価は下落した。DeepSeekの新しいLLMの登場から数週間後、マスク氏は株式市場の混乱に乗じ、OpenAIに買収の提案を持ち掛けたとみられる。

 一方、マスク氏が創業したAI技術ベンダー「X.AI」と同社が開発するAIチャットbot「Grok」をどのようにするか疑問は残る。同社は2024年11月、シリーズC(成長拡大段階)投資ラウンドで60億ドルを調達したが、マスク氏と投資家グループはOpenAIの買収を目指している。ただ、買収が成功すれば、マスク氏が米国のAI戦略とStargate Projectの主導権を握ることは明らかだ。

TechTarget.AIとは

TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国Informa TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

鬯ョ�ォ�ス�エ�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ー鬯ッ�ィ�ス�セ�ス�ス�ス�ケ�ス�ス邵コ�、�つ€鬯ゥ蟷「�ス�「髫エ蜿門セ暦ソス�ス�ス�ク髯キ�エ�ス�・�ス�ス�ス�。鬯ゥ蟷「�ス�「�ス�ス�ス�ァ�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ス�、鬯ゥ蟷「�ス�「髫エ荳サ�ス隶捺サゑスソ�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ス鬯ゥ蟷「�ス�「髫エ雜」�ス�「�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ス�シ鬯ゥ蟷「�ス�「髫エ荵暦ソス�ス�ス�ス�サ�ス�ス�ス�」�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ス

技術文書・技術解説 Snowflake合同会社

AIエージェント実践ガイド:基本概念からユースケース、克服すべき課題まで

意思決定や計画、行動を自律的にこなす「AIエージェント」に対する関心が高まる一方、実装に向けては、データの正確性やアクセスの制御など、多くの課題が立ちはだかる。その解決策や、代表的なユースケースなどについて、詳しく解説する。

製品資料 エス・アンド・アイ株式会社

コンタクトセンターで導入が急拡大する「生成AI」 実際に何ができるのか?

ビジネスにおける生成AI活用が広がる中、コンタクトセンターでも生成AIを使って業務改善につなげる動きが加速している。オペレーターと顧客とのやりとりに生成AIを活用することで、どのような成果が生まれるのか。本資料で解説する。

市場調査・トレンド Exabeam Japan株式会社

サイバーセキュリティ専門職1000人への調査で分かった、AI導入の現状と課題

サイバーセキュリティの領域でもAIの活用が進む中、経営層と現場には、大きなギャップが生まれているという。本資料では、サイバーセキュリティの専門職1000人を対象にした調査の結果から、AI導入の現状と課題を解説する。

製品資料 ServiceNow Japan合同会社

生成AIでカスタマーエクスペリエンスを変革するために取るべきステップとは

生成AIの登場以降、多くの企業が、生成AIの活用によって顧客と従業員の満足度を向上させる方法を模索している。本資料では、生成AIでカスタマーエクスペリエンスを変革するために取るべき重要なステップを解説する。

製品資料 DeepLジャパン合同会社

自動車業界に今、言語AIが必要な理由

自動車業界は、多数の国・地域にまたがるサプライチェーンで構成される。それだけに、正確なコミュニケーションは重要な課題の1つだ。その解決策として注目される、DeepLが提供する言語特化型AIはどのように自動車業界を支えるのか。

アイティメディアからのお知らせ

鬩幢ス「隴主�蜃ス�ス雜」�ス�ヲ鬩幢ス「隰ィ魑エツ€鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�シ鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�ウ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�ウ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ソ�ス�ス�ス雜」�ス�ヲ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ソ�ス�スPR

From Informa TechTarget

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ
ネットワークの問題は「帯域幅を増やせば解決する」と考えてはいないだろうか。こうした誤解をしているIT担当者は珍しくない。ネットワークを快適に利用するために、持つべき視点とは。

DeepSeekショックが影響? “OpenAI買収”をぶち上げたイーロン・マスク氏の企み:アルトマン氏は「お断りします」と応戦 - TechTargetジャパン エンタープライズAI 髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€鬮ォ�ェ陋滂ソス�ス�コ�ス�ス

TechTarget驛「�ァ�ス�ク驛「譎「�ス�」驛「譏懶スサ�」�趣スヲ 髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€鬮ォ�ェ陋滂ソス�ス�コ�ス�ス

鬯ゥ蟷「�ス�「髫エ蜿門セ暦ソス�ス�ス�ク髯キ�エ�ス�・�ス�ス�ス�。鬯ゥ蟷「�ス�「�ス�ス�ス�ァ�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ス�、鬯ゥ蟷「�ス�「髫エ荳サ�ス隶捺サゑスソ�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ス鬯ゥ蟷「�ス�「髫エ雜」�ス�「�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ス�シ鬯ゥ蟷「�ス�「髫エ荵暦ソス�ス�ス�ス�サ�ス�ス�ス�」�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ス鬯ゥ蟷「�ス�「髫エ雜」�ス�「�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ゥ鬯ゥ蟷「�ス�「髫エ雜」�ス�「�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ウ鬯ゥ蟷「�ス�「�ス�ス�ス�ァ�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ュ鬯ゥ蟷「�ス�「髫エ雜」�ス�「�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ウ鬯ゥ蟷「�ス�「�ス�ス�ス�ァ�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ス�ー

2025/07/11 UPDATE

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...