「邪悪になるな」「正しいことをやれ」を行動規範に掲げてきたGoogleが、AI技術を軍事目的で利用しないとする誓約を撤回した。Googleの方針転換には何が影響しているのか。
Googleの親会社Alphabetが、人工知能(AI)技術を兵器に使用しないという誓約を撤回した。これまでGoogleは「邪悪になるな」(Don't be Evil)や「正しいことをやれ」(Do the right thing)という行動規範を掲げてきた。そのようなGoogleが方針を転換した背景には何があるのか。
GoogleとAlphabetのCEO、スンダー・ピチャイ氏は2018年6月のブログエントリ(投稿)で、以下の分野におけるAI技術の開発と導入を「追求しない」と約束していた。
しかしGoogleは2025年2月4日(現地時間)、AI技術を兵器や監視ツールの開発に使用しないとする誓約の文言を削除。同日、AI研究開発機関Google DeepMindのCEO兼共同創業者のデミス・ハサビス氏とGoogleのテクノロジーおよび社会担当上級副社長ジェームズ・マニイカ氏が共同執筆したブログエントリで、この決定の正当性を主張した。
ハサビス氏とマニイカ氏はブログエントリで以下のように主張している。
「地政学的な状況がますます複雑化する中、AI技術のリーダーシップを巡るグローバルな競争が起きている。私たちは、自由、平等、人権の尊重といった基本的な価値観に従って、民主主義国がAI開発を主導すべきだと考えている。これらの価値観を共有する企業、政府、組織が協力して、人々を保護し、世界的な成長を促進し、国家安全保障を支援するAI技術を創造すべきだと考えている」
ハサビス氏とマニイカ氏によると、GoogleのAI原則は、3つの方針に焦点を当てるという。
「Googleがすでに米軍(イスラエル国防軍とも報じられている)にクラウドサービスを提供していたことを考えると、Googleの方針転換は全く驚くべきことではない」。ロンドン大学クイーンメアリー校(Queen Mary University of London)政治理論教授で『Death machines: The ethics of violent technologies』(死の機械:暴力的技術の倫理)の著者であるエルケ・シュワルツ氏はこう説明する。
一方、シュワルツ氏は、Googleをはじめとした大手IT企業の姿勢に懸念を示す。一部の大手IT企業は、軍事用AI技術の開発に関与しないことを「非倫理的だ」と主張するようになっている。
「Googleが反発や影響を恐れることなく、このような方針転換を公表できるということは、『暴力を利用して利益を追求する』ことを社会が甘んじて受け入れたことを示唆するものだ」。シュワルツ氏は英Computer Weeklyの取材に対してこう話す。「Googleの方針転換は、グローバルなIT産業が今や軍事産業としての側面を強めていることを明確に示している」とシュワルツ氏は強調する。
「このことは、さまざまな物事の軍事化が進んでいることを示唆している」。シュワルツ氏はこう指摘する。同氏によると、軍事用AI技術の市場は拡大しつつあり、大手IT企業がシェアを競い合っている。
OpenAIやAnthropic、Meta PlatformsをはじめとしたGoogleの競合他社は、自社のAI技術の使用方針を改め、米国の情報機関や防衛機関によるAIシステムの使用を許可した。一方、自社が開発したAI技術が人間に害を与えることは許さないと主張している。
Computer WeeklyはGoogleに対し、国家安全保障の文脈でAI技術開発に責任を持って取り組む方法や、AIシステムを使用するアプリケーションの種類に制限を設けるかどうかについて問い合わせたが、回答は得られていない。
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