前回「中堅・中小企業にもできるIT投資対効果の算出法とは?」では、中堅・中小企業にも実践が可能な投資対効果の考え方を取り上げた。2回目となる今回は「レンタル/リース」の基本について説明しよう。
「所有から利用へ」という流れが話題となる昨今だが、目の前にあるPCがなくなってしまうわけではない。また、業務システムやファイル共有で利用するサーバが社内から1台もなくなってしまうという状況もすぐにやってくるわけではないだろう。従って、レンタルやリースを含めたハードウェアの調達方法に関する知識は、IT投資を考える上で必須といってもよい。
当初の予定では、今回「中堅・中小企業向けの支援制度の活用方法」を取り上げることになっていたが、順番を入れ替えて第3回の内容を先に掲載することにした。2010年3月に期限を迎える「中小企業投資促進税制」や「情報基盤強化税制」は中堅・中小企業のIT投資を支援する代表的な施策である。経産省などはこの継続を求めていたが、政府の税制調査会は延長を認めないという方針を取っている。まだ結果が確定したわけではないため、これらの優遇措置が今後も延長されるのかどうかが明らかになった後、「中堅・中小企業向けの支援制度の活用方法」を取り上げることにしたい。ご了承いただきたい。
また本稿は、ユーザー企業がレンタルやリースを活用する上での基本的な知識を整理することを目的としており、契約上の詳細な留意点にまで踏み込むものではない。実際にレンタルやリースの契約を検討する際には業者から十分な説明を受け、個別の契約内容をしっかりと把握することが大切である。
まずはレンタルとリースの違いを見てみる。一括購入の場合と比べて初期費用負担が少ないという点、また割賦購入(分割払いでの購入)と違ってユーザー企業が物件の所有権を持たないといった点はどちらにも共通している。そのため、両者の区別があいまいになっている方も多いのではないだろうか? レンタルとリースの一般的な違いを列挙すると、以下のようになる。
1. 選択可能な物件
リースでは、ユーザー企業が望む物件をリース業者が代わりに購入し、貸し出すものである。一方レンタルでは、レンタル業者があらかじめ取りそろえる物件の中からユーザー企業が選択をする。つまり、選択可能な物件の幅広さという点では、一般的にリースの方が広くなる。

2. 物件の共有
リースでは、ユーザー企業に貸し出す物件は原則新規にリース業者が調達する。一方レンタルでは、同一物件を繰り返し複数のユーザー企業に対して貸し出す。PCやサーバに以前利用したユーザー企業のデータが残ると情報漏えいの危険があるため、レンタル業者側で毎回初期化作業を行うのが一般的である。
3. 契約期間
一般的にはリースは比較的長期、レンタルは短期という傾向がある。リースはユーザー企業が物件の購入に代わる手段として比較的長期での物件利用を想定していることが多いのに対し、レンタルは当初から物件を限られた期間だけ利用することを前提とすることが多いためである。
4. 保守/修繕の義務
レンタルの場合は物件に対する保守/修繕の義務をレンタル業者が負うため、レンタルしたPCが故障した場合などはレンタル業者側が各種手配を行ってくれる。一方リースでは、ユーザー企業自身が保守/修繕を行う業者と保守関連の契約を別途結ぶ必要がある。
5. 瑕疵(かし)担保責任
レンタルでは物件に対する瑕疵担保責任をレンタル業者が負う。そのため、「レンタルしたPCに不備があり、動作しない」といった場合の対処はレンタル業者が行うことになる。一方、リース業者の瑕疵担保責任が免責となっており、ユーザー企業がメーカーに対して損害賠償を請求するなどの対処を行う。
6. 物件の滅失/破損に対する責任
リースの場合は物件が滅失/破損(借り受けたノートPCを紛失した、あるいは落下して壊してしまったなど)した際、ユーザー企業が損害および残存するリース料を負担しなければならない。一方レンタルの場合は、損害を負担するのはレンタル業者となる。
| リースの場合 | レンタルの場合 | |
|---|---|---|
| 選択可能な物件 | ユーザー企業が指定可能 | レンタル業者の取りそろえから選択 |
| 物件の共有 | なし | あり |
| 契約期間 | 一般的に長期 | 一般的に短期 |
| 保守/修繕の義務 | ユーザー企業が負う | レンタル業者が負う |
| 瑕疵担保責任 | リース業者は免責 | レンタル業者が負う |
| 物件の滅失/破損に対する責任 | ユーザー企業が負う | レンタル業者が負う |
このようにレンタルとリースは一長一短があり、どちらか一方が常に有利というわけではない。また、最近ではリース業者が保守契約をリース料と併せて代理回収する「メンテナンスリース」といったものもあり、上記の差を埋める付加価値を提供する業者も増えてきている。今後のリースとレンタルの選択においては
といった点が主なチェックポイントとなってくるだろう。
ここまでレンタルとリースの違いを見てきたが、実はリースにも2つの種類がある。それが「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」である。
「ノンキャンセラブル」(中途解約ができない)と「フルペイアウト」(物件を購入した場合に相当するコストをユーザー企業がすべて支払う)の2つの条件を満たすものを、ファイナンスリースと呼ぶ。物件を購入した場合と同等金額をユーザー企業が支払うという点から金融的な側面が強い。従って、売買取引ではなく賃貸取引とするためには税法上の規定に従う必要がある。具体的には、リースの契約期間については、以下のような「適正期間(最短で設定可能な期間)」が定められている。
| 最短適正リース期間 | |
|---|---|
| 法定耐用年数が10年未満の物件 | 法定耐用年数の70% |
| 法定耐用年数が13年未満の物件 | 法定耐用年数の60% |
法定耐用年数はサーバが5年、PCが4年、ネットワーク機器が10年、複写機が5年なので、それぞれの適正リース期間は以下のようになる。
| 最短適正リース期間 | |
|---|---|
| サーバ | 3年(5年×0.7=3.5 切り下げ) |
| PC | 2年(4年×0.7=2.8 切り下げ) |
| ネットワーク機器 | 6年(10年×0.6=6.0) |
| 複写機 | 3年(5年×0.7=3.5 切り下げ) |
| ※以前は「最長適正リース期間」というものもあったが、法人税法改正により2008年4月1日以降の契約では最長適正リース期間の規定はなくなっている | |
リース期間を法定耐用年数より短く設定できることで得られるメリットとは何だろうか? それは、「IT機器の陳腐化を防止できること」だ。特にIT機器は進歩が早く、償却期間を待たずに利用中のIT機器が時代遅れになってしまうリスクが高い。そのため、リースのこうしたメリットをうまく活用することも重要なポイントとなってくる。
さらにファイナンスリースは、契約満了後に物件の所有権がユーザー企業に移る「所有権移転ファイナンスリース」と、移転しない「所有権移転外ファイナンスリース」に分けられる。所有権移転ファイナンスリースは、最終的にユーザーが物件を所有するという観点からも金融的性格が強く、ユーザー企業が会計処理をする際は売買処理として扱う必要がある。つまり、会計上は貸借対照表に計上(オンバランス処理)するのが原則となる。一方、所有権移転外ファイナンスリースについては、賃貸借処理として扱い、貸借対照表には計上しない(オフバランス処理)ということが従来は認められてきた。ところが、2007年3月のリース取引に関する会計基準改正により、2008年4月以降は所有権移転外ファイナンスリースであっても売買処理として扱い、オンバランス処理をしなければならなくなった。
| 2008年3月31日まで | 2008年4月1日以降 | |
|---|---|---|
| 所有権移転ファイナンスリース | 売買処理(オフバランス不可) | 売買処理(オフバランス不可) |
| 所有権移転外ファイナンスリース | 賃貸借処理(オフバランス可) | 売買処理(オフバランス不可)※例外あり |
こうした経緯を受けて、「法改正でリースをしづらくなった」というユーザーの声を聞くこともある。しかし、所有権移転外ファイナンスリースを活用する場合でも、以下のいずれかを満たせば賃貸借処理が認められている。
中小企業が活用するリースでは、上記に当てはまるものも少なくない。「必ずオンバランス処理をしなければならない」と誤解されているケースもあるので、上記の条件を満たしているかどうかを再度確認してみるといいだろう。
ファイナンスリースの条件を満たさないリースを、オペレーティングリースと呼ぶ。つまり、「ノンキャンセラブル」でもなく「フルペイアウト」でもないリースがオペレーティングリースということになる。ファイナンスリースとの主な相違点は以下の通りだ。
1. 途中解約の可否
ファイナンスリースでは途中解約ができないが、オペレーティングリースは可能であることが多い。つまり、「ノンキャンセラブル」ではない。
2. 物件に対してユーザー企業が支払うコスト
ファイナンスリースでは物件購入金額と同等のコストをユーザー企業が支払う。一方オペレーティングリースでは、物件に対する「残価」が設定されており、リース業者はリース期間終了後に中古市場などに物件を売却することが多い。そのため、ユーザー企業は物件購入金額と同等のコストを支払う必要がなく、「フルペイアウト」ではなくなるのである。
3. 契約期間の制約
既に述べたように、ファイナンスリースでは最短適正リース期間が物件種別ごとに定められている。一方、オペレーティングリースはそうした制約がなく、契約期間を自由に設定することができる。
4. 契約延長時における違い
ファイナンスリース/オペレーティングリース共にリース期間終了後に同一物件を再度リースすることが可能であり、前者は「再リース」、後者は「二次リース」と呼ばれる。
5. 会計処理における違い
ファイナンスリースでは、先述のように一部の例外を除いては売買処理扱いとする必要がある。一方オペレーティングリースは、賃貸借処理扱いでオフバランス処理することが可能だ。
| ファイナンスリース | オペレーティングリース | |
|---|---|---|
| 途中解約の可否 | 不可 | 可 |
| ユーザー企業が支払う物件対価 | 全額 | 一部 |
| 契約延長の方法 | 再リース | 二次リース |
| 会計処理 | 売買処理(オフバランス不可)※例外あり | 賃貸借処理(オフバランス可) |
一見すると、途中解約が可能であり、支払うコストが少なく(フルペイアウトでないため)オフバランス処理もできるといった点で、オペレーティングリースの方が有利であるように感じられるかもしれない。だが、オペレーティングリースにおける二次リースは残価設定相当分をユーザー企業が負担する形となるため、ファイナンスリースにおける再リースと比べると一般的にリース料は高くなる。つまり、「契約延長の可能性があるか」という点も考慮に入れて、どちらを選ぶか慎重に検討する必要がある。
ここまで、レンタルとリースの基本知識について解説してきた。それぞれ長所と短所があり、どのサービスが最も優れているかということは一概には言えない。先述したメンテナンスリースのようにレンタルの長所を併せ持つリースもあり、両者の細かい差異を埋める個別サービスも増えてきている。そのため、まずは検討しているサービス内容を詳しく確認することが大切である。
次に重要なのは、自社における物件の利用状況を考慮すること。もし自社の業務がPCに負荷を掛けるものであるならば、短期間でより高いスペックのものにどんどん替えることが可能で、保守/サポートも任せられる契約がいいだろう。逆に安定稼働している基幹系システム用サーバであれば、契約延長の可能性も加味しておいた方が安心だ。
最近では、レンタル業者もリース業者もさまざまな付加価値を提供している。レンタルやリースを実際に活用する場面においては、以上のような基礎知識を踏まえた上で、まず「自社の業務にとって理想的な契約形態」を書き出し、次に「理想に最も近いサービスを探す」というステップを踏むのがよいだろう。
ソフトウェアベンダー数社でソフトウェア製品の企画、設計、開発、コンサルティング、トレーニングなどに携わった後、ノークリサーチに入社。シニアアナリストとしてITのさまざまな領域の調査・分析に従事し、その成果を記事執筆やコンサルティング活動を通じて積極的に発信している。