アンケートなどで「経営にITをある程度生かしている」と答える企業。しかし、それは本当なのだろうか? 中小企業が情報システムを真にビジネスに役立てるためのヒントを、「組織」の面から提示していく。
ITを生かせない企業が意外に多い。
せっかく膨大な金額を投資する、あるいはしたのだから、ITを生かさなければならない。特に中小企業は、昨今の厳しい経営環境下でIT投資の効果をできるだけ早く出して経営に生かしたいはずだし、何よりも苦労してITに投じた資金を無駄にしたくないだろう。
では、ITをビジネスの成功に生かせる企業像とはどんなものだろうか? ITを生かせる組織・人材・仕事のやり方とは? 本連載では、成功・失敗事例を引用しながら、ITを生かせない企業・生かせた企業を分析し、ITシステムを生かす組織作りに参考になる議論を提供したい。なお、最初にお断りさせていただくが、本連載では一見美しく見える「建前」は避けて、現場の実態に立脚した「本音」の議論をしていく。
さて、ITを生かせない企業が、見かけ以上に多数存在するのが実態だ。「見かけ以上」としたのは、「ITを生かしている」とアンケート調査で企業が回答したり外見上そう見えたりするが、実際は生かされていないケースが多いからである。当事者が意識しているか否かは別として、ITが生かされていないことが隠ぺいされているのだ。
ここに、ITが生かされているかを見ることのできる1つの調査結果がある。
回答 | 比率 |
---|---|
結び付いていると思う | 20.4% |
ある程度結び付いていると思う | 59.0% |
あまり結び付いていないと思う | 19.7% |
まったく結び付いていないと思う | 0.9% |
この調査で、「結び付いている」と「ある程度」を合わせると80%近くになる。しかし「ある程度」というのは、2つの点から問題と思われる。1つは、同じ調査リポートの「IT投資効果の測定状況」によると、投資効果測定を「すべてまたは一部のIT投資にのみ実施している」が54.5%、「まったく実施していない」が45.5%と、IT投資効果の測定について大半が「一部のみ実施」、または「まったく実施していない」状況だった。客観的な効果がどれほど把握されているのか、極めて疑問であるといえる。
もう1つは、IT投資が効果に結び付いているとされる実態が、本当に見極められているかという点だ。すなわち、ITを導入した後でシステムが全然、あるいは部分的にしか生かされていないにもかかわらず、そのことがごく限られた関係者によって隠ぺいされていて、公にはシステムが生かされているという建前がまかり通っているケースが多いのである(この場合は、陰でレガシーやローカルシステムが稼働しているものだ)。
さらに、ITを適用する業務範囲が当初予定よりはるかに狭められたにもかかわらず、あるいはIT導入の時期が当初より大幅に遅延したにもかかわらず、公にはIT導入が成功してシステムが生かされていると認識されているケースはないだろうか(この場合は、IT非適用業務や遅延した期間の部分が投資に見合っていない)。
要するに、「ITが業務に生かされている」という建前が大手を振って歩き、実質的に企業経営にダメージを与えている事例が、実態として少なくないのではないかということだ。そこで、特に昨今の閉塞状態の経営環境において、トップや経営者は自社の虚飾を見破り、本音の視点で手を打たなければならない。そのためには、IT投資効果を測定する手間をいとわず、さらに稼働中のITシステムを疑ってみる必要がある。
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