【事例】かかりつけ医カードで患者情報を共有する地域医療連携システム「とねっと」地域連携事例:埼玉県利根保健医療圏

2012年7月、埼玉県で新しい地域医療連携システムが本格運用を開始した。地域完結型医療の実現を目指す取り組みを紹介する。

2012年07月13日 08時00分 公開
[翁長 潤,TechTargetジャパン]

 日本政府は地域のさまざまな医療課題の解決に向けて「地域医療再生臨時特例交付金」を2009年に設定し、都道府県が策定する「地域医療再生計画」に基づく事業を支援してきた。都道府県ごとに2つの医療圏に対してそれぞれ25億円の費用を助成している(関連記事:地域医療再生に向けた国家戦略とは?)。埼玉県の利根保健医療圏ではこの交付金を活用して、2010年からITによる地域医療連携ネットワークの構築に取り組んでいて、2012年7月1日に地域医療連携システム「とねっと」の本格運用を開始した。

極めて医療リソースが不足していた利根保健医療圏

 総務省の調査によると、埼玉県は人口10万人当たりの医療施設に従事する医師数が全国で最下位、看護師・准看護師数が全国で46位と低い水準にある(「統計でみる都道府県のすがた 2011」:総務省統計局)。県内に10ある2次医療圏の1つである利根保健医療圏は、県北東部地域の6市3町(行田市、加須市、羽生市、久喜市、蓮田市、幸手市、宮代町、白岡町、杉戸町)で構成され、10医療圏の中で最も医療施設に従事する医師数が少ない。また、圏内の人口約66万2800人のうち、65歳以上の高齢者が17.6%を占めるなど高齢者の割合も高く、医療リソースの不足が深刻な問題となっていた。

 そのため、限られた医療リソースを有効活用し、地域の診療所などのかかりつけ医と中核病院が役割を分担しながら連携する「地域完結型医療」の実現に向けて、医療情報連携システムの構築に着手した。

 2010年7月に圏域内の5つの医師会、中核病院の医師、9つの市町、埼玉県の加須・幸手保健所などで構成される「埼玉利根保健医療圏医療連携推進協議会」を設立し、システムの構築に向けた協議や検討を開始した。2011年には開発業者にNTTデータを選定して、システムを実装。2012年2月に参加医療機関を、3月に参加住民をそれぞれ募集し、4月から試験運用を行って7月に本格運用を開始した。現在、とねっとには圏内の病院・診療所93施設、県立病院・中核病院8施設、5つ臨床検査施設、1つの画像診断施設、地域住民3000人が参加している。

かかりつけ医カードをベースにした患者情報の共有

 とねっとでは各種情報をデータセンターで一元管理し、中核病院や画像診断センターなどの院内システムと連携する。医療機関同士の連携では、患者紹介や診療・検査予約などをオンラインで実施。さらに掲示板やチャットなどのグループウェア機能によってリアルタイムな情報交換を可能にしている。これにより、医療機関間の患者情報の連携や患者紹介、診察・検査予約、クリニカル連携パスなどの効率化を支援する。また、住民患者自らが診療情報の参照や登録が可能である点も特徴だ。

photo とねっとのシステム概要《クリックで拡大》

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