“炎上”“風評”が変える企業のリスク管理【第2回】
もう放置できない「従業員のSNS発言」 店舗閉鎖の実害も
インターネットでの従業員の投稿が、ストライキ騒動や店舗閉鎖といった“実害”を招き始めた。この状況に、企業はどう対処すべきか。現状と対策を整理する。
2014年5月29日の「肉の日」に、一斉にストライキをしよう――。大手牛丼チェーンの従業員に対してこう呼び掛ける書き込みが、ソーシャルメディアの「Twitter」や掲示板の「2ちゃんねる」を介して、インターネットで拡散した騒動がありました。
Twitterではストライキ決行日に閉店中の店舗の画像が投稿され、「一部店舗がストライキをしている」といった真偽不明の情報が流れたりしました。同牛丼チェーンはこの騒動の影響を否定しているものの、「人材不足」や「リニューアル」を理由に、約1割の店舗が閉店したようです。
今までも企業規模を問わず、インターネットで否定的なうわさが飛び交った企業は一定数存在しました。ただし、今まではあくまでもインターネットの中での出来事にとどまり、実際の会社に大きな影響が起こることはまれでした。その状況が大きく変化しているのです。現状と背景を整理していきましょう。
連載:“炎上”“風評”が変える企業のリスク管理
実害を招き始めたインターネットの投稿
インターネットの投稿が、実際の店舗の営業に影響を及ぼす事例は、既に現れています。2013年の夏、ある大手コンビニエンスストアの店舗で、アイスクリーム用の冷蔵ケースに従業員が入った写真をTwitterに投稿する“事件”が発生。インターネットで炎上し、その店舗は謝罪だけではなく、閉店にまで追い込まれました。
ただし、あくまでも影響があったのは特定の店舗のみであり、炎上が起きている間も別の店舗は通常営業を続けていたので、実際の経営に与える影響は軽微だったと推定されます。仮に冒頭の牛丼チェーンの閉店にインターネットの炎上が影響していたとなると、実際の経営への影響は、過去の同様の騒動と比べてもかなり大きいと考えられます。
ソーシャルやスマートフォンが影響を拡大
インターネットの情報が、ここまで大きな影響力を持ち始めたのはなぜでしょうか。その原因としてまず考えられるのは、ソーシャルメディアやスマートフォンの普及により、アルバイト同士など、近しい環境の人が簡単につながることができるようになったのが大きいと考えます。
今までは、もし誰かが「仕事に行きたくない」とインターネットで発言しても、「私も行かない」と同調する動きが広まることはなかなかありませんでした。でも牛丼チェーンの騒動のように、実際に閉店している店舗の写真がアップされたりすると、「デマじゃないかもしれない」と情報の“信ぴょう性”が少しずつ高まり、複数の従業員が「休んで(辞めて)も大丈夫なのでは」と考えてしまう可能性は否定できません。
出回った情報は完全には消せない
牛丼チェーンでの騒動のように、急に自社の風評がインターネットに書き込まれるといった事態が起こると、「書き込みを全て監視してほしい」「全て消してほしい」といった相談がイー・ガーディアンにもよく寄せられます。ただ残念ながら、そもそもインターネットに拡散した全ての書き込みを消すことはできません。投稿を探すだけでも、莫大な労力が掛かってしまいます。
ほとんどのソーシャルメディアは、投稿の削除依頼窓口を設けています。削除依頼がなされた場合、各ソーシャルメディアの事業者は、独自に定めた基準に従って削除などの判断をします。つまり、投稿が削除されるかどうかは、ソーシャルメディア事業者側の判断次第、ということになります。企業が全てをコントロールできるわけではないのです。
仮に投稿を削除できたとしても、該当ページに「この記事は削除されました」といった記述が表示される場合があり、それが新たな炎上を招くことにもなりかねません。
「ネガティブ情報」の内部からの発信に対処する
インターネットの投稿が、ビジネスそのものに影響を与える可能性が否定できなくなってきた現在。どのような対策を施せばよいのでしょうか。
「火の無いところに煙は立たぬ」といいますが、社内の対策をまず整える以外に根本的な対策は無いと考えてよいでしょう。インターネットにあるうわさを削除したり隠したりする手法を考えるのではなく、ユーザーや従業員からネガティブな情報が発信されないよう、真剣に向き合うことが大切です。
牛丼チェーンの騒動でも見られるように、炎上の火種になり得る情報は、既に社外に出ていることがほとんどです。出回っている情報が虚偽であったとしても、なぜ虚偽の情報が外部に出回っているのかを無視せずに考えることが大切です。
“ネットの声の収集”が対策の第一歩
インターネットのさまざまな投稿を収集する「ソーシャルリスニング」に取り組むことは、有効な対策の1つです。ソーシャルリスニングは、従業員からの不満やそれにつながる情報を効率的に素早く収集し、監視できるという利点があります。
ただし、ソーシャルリスニングで幅広く情報を集めることができたとしても、投稿の意味を読み取り、どういった課題につながるのかを判断するのは骨が折れます。投稿が数件や数十件であれば目視でも何とか対処できますが、数千件以上ともなると自社の担当者だけでカバーするのは不可能です。
こうした課題を解決するには、イー・ガーディアンなどが提供するインターネット監視サービスを利用するという手もあります。投稿の収集や監視だけでなく、それらを分かりやすく可視化したリポートを提供する監視サービスもあり、効果的かつ効率的なリスク管理に役立つはずです。
ソーシャルメディアに潜むビジネスへの影響への芽を早期につみ取るために、まずは現状を把握し、必要な対策を取ることが大切です。
執筆者紹介
中川祥太(なかがわ しょうた) イー・ガーディアン株式会社
2012年、イー・ガーディアンにソーシャルサポートユニット営業として入社。顧客の依頼に基づくソーシャルメディアの監視、運用業務を主に担当している。企業でのソーシャルメディアポリシーの作成から炎上対策の体制構築、炎上時の緊急対応まで、さまざまな業務経験を持つ。2013年夏の第23回参議院議員通常選挙の際には、警視庁サイバー犯罪対策課、東京都選挙管理委員会などで「ソーシャルメディアにおけるリスク」のセミナーなどを開催した。複数のテレビ番組にソーシャルリスク専門家として出演。
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