クラウドで再定義される組織の役割
システムの“障害と復旧”ばかりを考えているIT部門は本当に遅れてしまう
企業のクラウド化を成功させるためには、企業のITに対する考え方を変革する必要がある。どのような変わるべきなのか?
数十年前、最初のメインフレームを導入して以来、企業はクライアントPCのセットアップに要する時間を短くし、クライアントPCを利用できる時間を可能な限り伸ばそうとしてきた。ITの高度なオートメーション化を目指すクラウドコンピューティングは、そうした企業が目指す方向に合致する最新の技術革新だ。しかし、クラウド導入はITを長く支配してきたマインドセットの変革を意味する。それが今、多くの企業でトラブルを生みつつある。
歴史的に、IT部門は自分たちの時間の多くをコンピュータシステムの管理に費やしてきた。コマンドラインインタフェースに向かってコマンドと打ち、ストレージの割当やユーザー権限の設定などのタスクをしてきた。調査会社Forrester Researchの最近の調査によると、IT部門の作業時間の70~75%は単に「ランプがオンになっている状態を維持する」だけであり、言い換えれば、さまざまなシステム障害を切り分け、復旧するにすぎない。
しかし、仮想化への移行、また現在はクラウドに向かいつつある中、ITシステムはよりスマートになり、より世俗的な機能になりつつある。そうした変化はハードウェアからソフトウェアへと広がっている。これまで、IT部門はシステム仕様を書いたり、アプリケーション作成のために事業部門とやりとりしたりすることに多くの時間を費やしてきた。しかしクラウドの場合、IT部門の役割は変革をスタートさせることである。
クラウドへ移行するとともに、次の3つの局面で、ITの意識改革に乗り出す必要がある。
“障害と復旧”はもうない
旧来の“障害と復旧”モデルから離れることにより、IT担当者たちも技術的修理屋からリソース管理者になる必要がある。ベストプラクティスを確立し、事業部門との強固な連携を目指すべきだ。しかし、変化には常に困難が伴う。
「新しいITは非常に複雑な厄介事や多くのサポート問題をもたらす。IT担当者はそうしたことを受け入れようと努力している」と語るのは、コンサルティングファームEnterprise Applications Consultingの代表ジョシュア・グリーンバウム氏だ。
こうした困難に打ち勝つために、IT担当者は新しいスキルセットが求められる。従来型のMicrosoftの「Windows Server」やオンプレミスシステムを稼働させる一方で、新しいITのマインドセットとして、モバイルやクラウド、そして今後ますます重要になるIoTに目を向けなければならない。その結果、会社にはトレーニングへの投資が求められ、多くの人々がその必要性を認識している。オンラインITトレーニング会社の最近の調査によると、企業の61%は、従業員にもっとITトレーニングを提供する必要があると感じている。
統合化へのチャレンジ
旧来のマインドセットの場合、IT担当者は第一線の技術者としてサービスを提供することが要求されるのに対し、クラウドのセルフサービスの場合、二次的なヘルプに位置付けられる。IT担当者はコンサルタントのような存在になり、何かしら変更が必要なとき、実際に自分の手で実行するのではなく、ユーザーに助言をする立場となる。しかし、最先端のコーディングがあまり重要でなくなる一方で、統合化という新しい仕事が生まれる。
「システム接続性は今日かなり進展しつつあるが、ソリューションはいまだに自動的に認識し接続される『プラグアンドプレイ』には至っていない」と語るのは、調査会社Technology Business Researchの主任アナリストでプラクティスマネジャーのクリスチャン・ペリー氏。
IT部門は新しいクラウドアプリケーションを、データベースや管理システム、認証技術などのインフラを構成するコンポーネントと緊密に結び付ける必要がある。IT部門の役割は今や、消費を抑えることに加え、プライベートクラウドのものであれ、パブリッククラウドのものであれ、クラウドサービスを統合化することである。さまざまなケースが増えつつある中、IT部門はクラウドサービスのブローカー、あるいはモバイルアプリケーションストアのような立ち位置になった。事業部門に利用可能なクラウドサービスのチェックリストを渡して、各部門がそこから選択し、IT部門が必要な全ての要素を組み合わせることになる。
加えて、IT部門はこれまで以上に契約書の文面や確認に当てる時間が増える一方で、コーディングの時間は減るだろう。クラウドベンダーは全ての顧客に適応できる契約文例集を用意しているが、IT部門はその内容を精査し、サービスが各部門のニーズに合致するか確認することになる。
システムセキュリティの強化
最近、世間の耳目を集める侵入事件が相次いだことから、セキュリティは多くの組織にとって最優先課題となった。IT部門は各事業部がクラウド向けのしっかりとしたセキュリティプラクティスを構築し、順守することを支援し、アクセスや認証に関連する既知のセキュリティ問題に万全の対策を講じなければならない。
しかし、安全な通信を確保することはますます困難になっており、エンタープライズアプリケーションやエンドポイントを全て囲い込むことは困難だ。当然、組織のセキュリティの成否は、セキュリティリスクに対するユーザーの理解力と、厳格な手順に従う意思がユーザーにあるかどうかによって大きく左右される。
その結果、セキュリティを取り巻く新しいテクニック、そして新しいマインドセットが浮上してきた。例えば、グリーンバウム氏によると、一部の企業では従業員がフィッシングなどの詐欺に引っ掛かっていないかチェックするセキュリティテストを実施しているという。IT部門はそのテストの際に、潜在的なセキュリティリスクについて従業員を教育している。
コンピュータシステムは常に進化を繰り返してきた。それとともに、手作業を強いられる部分が少なくなっている。自動化やセルフサービスモデル、クラウドコンピューティングは、その概念を次のレベルに引き上げる。企業はクラウドからより多くの利益を生み出すことが可能になるが、そのためにもまずはマインドセットの変革が不可欠だ。
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