先駆者として伝えたいこと
リクルート流 深層学習でビジネス成果を得るための方法論(1/2 ページ)
深層学習をどうやってビジネスの現場に適用させればいいのか。先駆者に学ぶ。
深層学習(ディープラーニング)をはじめとする機械学習への期待が高まる中、リクルートグループはリクルートテクノロジーズのリーダーシップの下、これらの技術をいち早く活用してきた。
データ解析に関する先端的技術を自社のビジネスに適用するために、計画から実装、運用に至るまでどんなことに留意すべきなのか。リクルートテクノロジーズの石川信行氏(ITエンジニアリング本部データテクノロジーラボ部シニアマネジャー)に話を聞いた。
扱いが難しい先端テクノロジーをどう現場へ提案するか
リクルートテクノロジーズはリクルートグループの機能会社であり、グループが展開している各事業の基盤となる技術を提供している。石川氏が所属するデータテクノロジーラボ部の重点領域は、ビッグデータの解析に関する技術だ。具体的には、Webサイトのレコメンドや検索結果の最適化、データ入稿における校閲・タグ付けといったコンテンツ制作支援、コールセンター内におけるチャットbotによるFAQ(よくある質問)対応などの業務を手掛けている。
同社がビッグデータ解析についての技術導入を始めた時期は、2009年にさかのぼる。分散処理技術の「Apache Hadoop」を用いてグループのデータを1カ所にに集約する基盤を作ろうとしたのだ。とはいえ、データをただ集めるだけでは何も生まれない。実際にビッグデータ基盤を導入し、事業に体制を含めた活用施策を提案し、ROI(投資対効果)を示し、実施してきた。
石川氏は「ディープラーニングをはじめとする機械学習は、ビッグデータ解析の延長線上にある技術として活用が始まった」と話す。中でもディープラーニングについては、人の作業を代替するような新しいニーズが出始めたこと、オープンソースのライブラリ群が利用可能になり用途が広がったことの2つの要因で活用が進んできたという。
ネイルデザインのカラー検索
リクルートグループにおけるディープラーニング活用の第一歩が、ヘアサロン検索サイト「ホットペッパービューティー」のアプリケーションに使用した「ネイルデザインのカラー検索(39色から選択)」と「ネイルの類似デザイン検索」である。これらの機能は、ディープラーニングによる画像解析とアクティブラーニング(注)による機械学習モデルの改善を組み合わせることによって、継続的に検索精度を向上させる仕組みを実現している。
※注:機械学習システムによる解析結果が間違っていた場合に、人が修正したデータを基に追加学習させること。
非構造データを教師データ(入力と正しい出力を組み合わせた訓練用データ)として正しく扱えるようにするには、さまざまな技術的課題を乗り越える必要がある。Webの行動履歴のように、扱える人が比較的多い分野は現場に任せることもできるが、データの扱いが難しい分野では石川氏らグループ内のスペシャリスト集団が、ディープラーニングをはじめとする機械学習を活用した施策を現場へ提案している。
人間と機械の「伴走」が重要
リクルートテクノロジーズがディープラーニングの活用に取り組む過程で得た知見の一つに、機械学習では、どんなにチューニングしてもその精度は100%にならないというものがある。
解析の仕組みを知らないビジネス部門側はここで「なぜ100%にならないか」と素朴な疑問を持つだろう。教師データは結局のところ、人の過去の判断を積み重ねてきた集合知であり、全てが正解とは限らない。人間は判断を誤ることもあれば、いいかげんな回答をすることもある。揺らぎのある教師データを用いる以上、100%正しい回答ができるモデルを作るのは困難というのが石川氏の見解だ。またテキストの場合は文脈の違いで解釈が変わることもあり、情報量の多い画像の場合はもっと解釈に幅が出てしまう。
「仮に100%になったとしたら、私たちはむしろ『過学習』を疑う」と石川氏は話す。機械が教師あり学習(教師データを使った機械学習)をやり過ぎると、教師データに対して過剰適合の状態に陥る危険性があるというのだ。これは逆にいうと、学習していない問いに対して答えを高い精度で予測するのは難しくなることを意味する。新しい問いに対して、立ち往生してしまうモデルでは困る。デザインの画像データも口コミのテキストデータも、常に新しいものが加わるのが確実である以上、精度100%はあり得ないことを前提にモデルを運用し続ける方が現実的なのだ。
100%が目標にならないとすると、モデル改善の落としどころはどうなるのか。石川氏の考えは、人間と機械の伴走がコストと工数の両面で最も効率的というものだ。具体的にはまず、機械で出せるチューニングの限界まで精度を高める。次に、人間が運用しながら精度を高め、最後に機械だけで精度を維持できるところまで運用を続ける。このやり方であれば、人間が誤りを訂正した教師データを使えるため、機械が再学習することもできる。業務の現場を踏まえた適切な精度を導き出すことができる格好だ。
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