ロボティックプロセスオートメーション(RPA)をソフトウェアおよびデータ管理スタックにどう取り入れるかが、2019年のトレンドの一つだった。(続きはページの末尾にあります)
「RPA」製品によってビジネスプロセスの大部分を自動化すると、どこかで必ず「意思決定の自動化」という難所にぶつかる。「AI」システムはこの壁を突破する鍵になる。ただしその効果を引き出すのは容易ではない。
Adobeのシンシア・ストッダード氏は、同社のCIOとしてRPAやAI技術の導入などさまざまな施策を統括している。その取り組みをどのように進めているのか。ストッダード氏に聞いた。
「顧客と直接応対する業務が膨大にある企業ほど、RPAの導入効果が期待できる」とRPAベンダーは口をそろえる。RPAの導入が大きな影響を及ぼした業界の例を紹介する。
RPA導入に失敗する企業もある一方で、多くの従業員に歓迎され、コストダウンに成功する企業もある。成功企業の事例をぜひ参考にしてほしい。そこには他社でもマネできる何かがあるはずだ。
RPAは有力な業務自動化ツールだが、導入や管理、運用のハードルが高く、費用対効果を感じられないという声も上がっている。解決手段の一つに、高機能な「RPAプラットフォーム」の管理・運用を包括的に提供するサービスがある。
PCのキッティングや故障対応で消耗している情シスは多いが、それは本来担うべき業務なのか。中小企業のPC運用に関する課題と解決策を久松 剛氏に聞いた。
帳票やレポートの作成業務やシステム実装は、さまざまな企業が抱える課題だ。レポート作成業務は時間を要し、システムへの帳票実装は想像以上の時間とコストが掛かる。このような課題を解決し、開発効率と生産性を高める方法とは。
ビジネスプロセスマネジメント(BPM)と人工知能(AI)技術の組み合わせによって得られる価値は幾つもある。しかし運用に際しては注意が必要だ。リスクを正しく理解し、メリットを最大化するヒントを探る。
大きな手間や高度な能力を要求されるために達成できなかった業務も、人工知能(AI)技術のおかげで実現できる領域が広がっている。業務プロセスを未知の高みに引き上げる4つの分野を紹介する。
IT活用と業務プロセス改善を組み合わせた手法「ビジネスプロセスマネジメント」(BPM)が、人工知能(AI)技術によって新たな展開を見せつつある。AI技術のおかげで劇的な変化が起きている分野とは。
人種差別に起因する問題は、単純ではない。例えば黒人とアジア系人種が直面する壁は異なる。多様な人材を採用するのであれば、企業は何に留意すべきなのか。
コンプライアンスに人工知能(AI)技術を生かすことで、金融機関が改善できることに「スピード」と「セキュリティ」があるという。それぞれどのような効果があるのか。
16進法は、10進法とどのような点が異なるのか。10進法の数値を16進法に換算する場合は、どうすればよいのか。10進法の数値と16進法の数値の対応表を基に考える。
新人スタッフの受け入れ時、人事部門にはさまざまな手作業のプロセスが発生する。中にはRPAで自動化できる工程もある。RPAが活用する5つの利用シーンを紹介する。
RPAによる業務の自動化は、結果として従業員と顧客の両方に良い心理効果を与える可能性がある。それはどういうことなのか。RPAがもたらすメリットを整理する。
「RPA」(ロボティックプロセスオートメーション)は、近い将来に“オワコン”化する運命にある――。こうした見方があるのは、なぜなのか。RPAが宿命的に抱える“限界”とは。
「経営とIT」「中堅・中小企業とIT」「医療IT」「教育IT」に関するTechTargetジャパンのブックレットのうち、2023年に新規会員の関心を集めたものは何だったのでしょうか。ランキングで紹介します。
主要ツール群「Automation Success Platform」で利用するLLMを選択可能にした、RPAベンダーのAutomation Anywhere。この判断を専門家が「現実的だ」と判断するのはなぜなのか。
RPAはインテリジェンスを意味する小文字の「i」と組み合わされることもあり、主にユーザーの動作、さらにはコンピュータの動作の記録と構築、実行、モニターにフォーカスしている。
Avanadeの新興技術、製品、エンジニアリング責任者クリス・ロイドジョーンズ氏によると、RPAのフォーカスはITの最適化からビジネス機能の効率化へと切り替わっている。Avanadeから見ると、ビジネス機能は多くの組織で似通っている。会計や人事といった分野はRPAによる効率化が期待できる。
RPAはアプリケーションやデータベース操作に存在するワークフローを通過しながら、観察可能な動作の分類、記録、さらにはモニターを行う。続いてそうした動作を予測可能な方法で自動化する。
この予測可能なプログラミングの要素があるために複雑なスクリプトを必要とせず、APIを使わなくてもワークフローを連携させることができる。よって、RPAはAPIを使うことなくITシステムを統合するノーコード/ローコードの手段と見なすことが可能だ。
RPAの効率性は、人とのやりとりができる会話botやマシン対マシンのインタフェース、データベース対データベースのインタフェースの形で表れている。
Blue Prismの最高顧客責任者、ジョン・テアーコーフ氏は、ビジネスプロセスオートメーションの主な目標を、大規模な価値を長期的にもたらすための手段と位置付ける。自動化を戦略的な目標に関連した明確な展望で下支えして、ビジネスユーザーがそれを促進し、IT部門がサポートし、他の主要ステークホルダーが支持しなければならない。
その後、念入りに計画を立て、モデルを作成し、設計し、再利用のため中央にプールすることをテアーコーフ氏は勧めている。
「自動化の前にプロセスの効率性を高めるか、設計段階で再設計するのが最善だ。そうすれば全社を横断するもっと革新的でインパクトのあるRPAの用途について、プロセスと組織的な構造を再創造できる」とテアーコーフ氏は言う。
同氏によるとこのアプローチは、インサイトによって初期の取り組みをよりインテリジェントかつ戦略的に拡張することによって自動化し、質を高めたプロセスオートメーションをもっと早く、もっと簡単に長期にわたって構築・運用することによって自動化の向上を図ることにつながる。
英仏海峡トンネルやテムズ川の堤防を手掛けたスマートインフラソリューション企業のCostain Groupは、ABBYYとUiPathの技術を組み合わせて調達から決済までの業務を転換させた。会計チームをスキルアップさせることで、請求書から必要なデータを取得し、特定して抽出するプロセスを自動化できた。同システムはRPAを使って請求書をERPに登録する。
ABBYYの主張によると、このシステムのおかげでCostainは仕入れ送り状の処理に必要な人的介入の量を80%削減できた。
RPAは手早く導入して本番環境に展開することができるが、それでも効率的な構築、開発、導入にはコストがかかる。
NICE Systemsの製品ディレクター、アイテイ・ライナー氏が指摘する通り、もしも組織が自動化すべき適切なプロセスの選定に失敗すれば、具体的な投資利益率(ROI)目標の達成に関する限り、そのプロジェクトは失敗して想定通りの成果が出せない公算が高い。
ライナー氏が例に挙げた大手エネルギー会社の場合、通貨為替レートに沿った会計モデルの刷新のために、非常に複雑な形でRPAを利用した。
ライナー氏によると、この複雑なシナリオを自動化することには成功したが、ROIは達成できなかった。その原因は、これが1人の担当者によって月に1回のみ、短時間で行われていた作業だったことによる。プロセスを自動化することはできたが、これが1カ月にたった1日のマンパワーしか必要としない仕事だったことから、自動化する価値はほとんどなかった。
自動化が可能なだけでなくビジネスにとって価値のあるプロセスを見極めることに加えて、RPAは仕事の機能と仕事の役割がどう表現されるかについても再考が求められる。
Enateのキット・コックスCEOは言う。「IT部門を越えて、プロセスについての考え方を変える必要がある。人の能力と技術のリソースプールを横断する中核的なスキルに沿って作業が割り当てられる中で、『仕事』という概念そのものにも変化が求められる」
Computer Weeklyが話を聞いた専門家は、組織のデジタルトランスフォーメーション戦略を支援するツールとしてRPAを位置付けていた。botを利用すれば自動的にデジタルトランスフォーメーションが実現できるわけではない。だが少なくとも顧客を相手にする観点からは、まとまりのある一貫した組織に見せることができる。
「APIによる接続が限られる、あるいは存在しないレガシープラットフォームが幅を利かせる中で、エンタープライズアプリケーションインテグレーション(EAI)の要素としてのRPAの重要性が増している」。Appianの主席ソリューションアーキテクト、サスヤ・スリニバサン氏はそう話す。
レガシープラットフォームを接続するためにRPAを利用できる一例として、ユーザーが医療機関に関する詳細をチェックして医療免許などの情報を入手できる医療記録確認サイトが挙げられる。
「インテグレーションを簡単に成功させることのできるシステム対システムのAPIは存在しない」とスリニバサン氏は言う。「botに人の動作をまねさせて情報を抽出する用例として、これは理想的だ」
Digital Workforceのトレーニング責任者、ニコ・レフトネン氏によると、RPAは古いレガシーITシステムに入れ替わるのではなく、人間の従業員のように動作して、2つの切り離されたITシステムのコミュニケーションを橋渡しできる。「ソフトウェアbotはわずか数日で単純なプロセスを学習できる。従って、組織はすぐにインテグレーションの恩恵を受けることができる」
ただしRPAは、コストがかさむインテグレーションを避けるための必然的な選択肢と見なすことはできない。レフトネン氏の経験では、微妙で複雑なシステムの統合には限界があり、APIの方が適していることもある。
RPAはデジタルトランスフォーメーションと並行して語られることがある。RPAは、シームレスに連携していないアプリケーションのために人があるシステムから別のシステムへと情報を入力し直さなければならない状況を避ける方法を提供する。
Avanadeのロイドジョーンズ氏が指摘する通り、botは一般的に従来人間が行っていた作業の一部を置き換える。時にはアプリケーションが必要とする入力をbotで行うことにより、その作業が自動化されることがある。厳密に言うと、これは必ずしも根本的なビジネスプロセスのデジタルトランスフォーメーションを意味しない。
ロイドジョーンズ氏によると、RPAがデジタル化に即した場面では、RPAが人間の時間を解放して、価値を高める仕事に専念できるようにするためのエンジンとなる。ITの観点からは、RPAを使うことでそのビジネスプロセスが現在どう使われているかを反映した形で記述できるようになる。これは、後日更新できることを意味する。「これでモダナイズに専念できる。まずbotを使ってプロセスを自動化することから始め、それからAPIを使ってbotを呼び出す」
RPAが接続していたレガシーコードは、いずれモダンなアプリケーションとして書き直すことができる。このアプローチの素晴らしい点は、botを呼び出すために使われるAPIは変わらないという点だ。そのアプリケーションがモダナイズされれば、IT部門はレガシーアプリケーションのもっと長期的なモダナイズに取り組みながら、RPAを通じてすぐにもビジネスに価値をもたらすことができる。
RPAは固定されたレベルのロジックしか持つことができない。組織はディープなインテグレーションに踏み込むことなく、RPAを使ってビジネスプロセスを連携させることにより、どの程度のビジネスプロセスが自動化できるかを検討しなければならない。ロイドジョーンズ氏が言う通り、それはデジタルトランスフォーメーションに向けた道のりにおける足掛かりとして役に立つ。