大きな手間や高度な能力を要求されるために達成できなかった業務も、人工知能(AI)技術のおかげで実現できる領域が広がっている。業務プロセスを未知の高みに引き上げる4つの分野を紹介する。
ビジネスのさまざまな場面で人工知能(AI)技術が活躍している。IT活用によってビジネスプロセスの自動化を図るとともに、ビジネスプロセスそのものも見直して改善を目指す「ビジネスプロセスマネジメント」(BPM:Business Process Management)もしかりだ。中編となる本稿は、AI技術によってBPMの在り方を劇的に変えた11個のユースケースのうち、5〜8つ目を紹介する。
AI技術はデータのインサイト(洞察)を充実させ、業務プロセスの成果を向上させるのにも役立つ。
ABBYY Development(ABBYYの名称で事業展開)はAI技術を用いて業務を自動化する「インテリジェントオートメーション」のツールや、OCR(光学文字認識)ツールを扱うベンダーだ。CMO(最高マーケティング責任者)を務めるブルース・オーカット氏によると、同社は顧客の文書やメール文などから抽出したデータを基に、資金調達や承認プロセスなどの意思決定を加速させる方法を模索している。「AI技術は、業務プロセスから収集したデータに文脈や意味を持たせて付加価値を高めるのに役立つ」とオーカット氏は説明する。
既存の業務フローを見直し、より効率的になるよう再設計する「BPR」(ビジネスプロセスリエンジニアリング)を進める際に、BPM分析ツールとローコード/ノーコード開発ツールを組み合わせて実装する場合がある。ここでも、AI技術の組み合わせが効率化に大きな影響を及ぼす。コンサルティング企業Lotis Blue Consultingのパートナーであるジョン・キング氏は、Microsoftのソースコード自動生成ツール「GitHub Copilot」によってローコード/ノーコード開発が可能になったことが「AI技術のたまものだ」と話す。こうした技術はアプリケーションの分散開発を助けたり、A/Bテストのサイクルを早めたりするのに役立ち、顧客のニーズを満たす成果物を完成させる期間を短縮できるようになった。重要な業務プロセスを自動化するアプリケーションを、IT部門の支援を得ながら内製化することも可能になる。
通信、生物、ソーシャルなど、ネットワークの各要素を調べる「ネットワーク分析」の手法では、「グラフ理論」を使って複雑なシステムの構造や機能を理解する。グラフ理論とは、ノード(点)の集合とエッジ(線)の集合で構成される「グラフ」を扱う数学の理論だ。
キング氏は、会議や電話、インスタントメッセージング、メールなどから醸成したデータを分析するのに「ネットワーク分析のアプローチが応用できる可能性がある」と説明する。従業員の振る舞いや業務プロセスを識別して、企業が期待する行動やベストプラクティスに沿っているかどうかを比較し、生産性の改善につなげる――このような用途でAI技術が役立つ可能性がある。
「デジタルツイン」は、現実の物体や物理現象をデータによってモデル化する技術や、仮想化モデルそのものを指す。IoT(モノのインターネット)やワークフローシステムからリアルタイムに収集したデータを分析し、適切なデジタルツインを作成するのにAI技術が役立つ。キング氏はこれを「時間とコストの節約になる」と評価する。デジタルツインとAI技術を組み合わせることで、発生確率にかかわらず、可能性がある全ての問題を発生する前にモデル化する。そうすれば「安全かつ客観的な環境でその影響を理解し、不測の事態に備えられるようになる」と同氏は説明する。
後編も引き続きBPMにおけるAI技術の応用を紹介するとともに、AI技術がもたらす価値や注意事項を説明する。
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