マイクロソフトの今後のストレージ戦略を日米で追求する。第1回~3回は、米国よりの最新レポートである。
「Windows Storage Server」のメジャーアップグレードが進む中、マイクロソフトは本気でストレージ分野のメジャープレイヤーを目指し始めた。そこで、TechTargetジャパンではマイクロソフトの今後のストレージ戦略を日米で追求する。第1回~3回は米国よりの最新レポートであり、「ファイルサービングとNAS」「データ保護」「リモートオフィスのサポート」「SAN(Storage Area Network)」という4つのマイクロソフトの機能分野に沿って、同社の技術的進歩を把握していく。これら4つの分野におけるマイクロソフトの戦略を把握すれば、自社のストレージ環境において、いつ、どのような分野でマイクロソフトの製品を検討すべきかを適切に判断することができるようになるだろう。第3回はリモートオフィス管理用インフラとSAN、ストレージ管理の詳細をレポートする。
リモート/ブランチ(支店)オフィスのIT問題は、多くの企業にとって重大な関心事であり、企業のIT予算全体の30%以上を占めることも少なくない。中でも重要なのがストレージ関連の取り組みである。これには、複数サイトに渡るデータセットの統合、WAN経由でのデータレプリケーション、リモートオフィスへのファイルサービスの提供などが含まれる。
マイクロソフトは、支店オフィスのサポートについてしきりに宣伝してきたが、この問題に対処するための製品はあまりリリースしていない。Windows Serverの旧リリースでは、レプリケーション機能やWAN経由のデータ比較機能が不十分であるなど、リモートオフィス管理用の本格的なプラットフォームとして必要な機能が欠落していたのだ。
Windows Server 2003 R2では、これらの欠点の多くが解消されたほか、分散型エンタープライズにとってWindowsを魅力的なプラットフォームにする新機能が多数追加された。
特に注目されるのは、Microsoft Distributed File System(DFS)が大幅に改良されたことにより、地理的に分散した複数のファイルサーバ間で名前空間を一元的に管理することが可能になったことだ。
1つのインプリメンテーションにつき約1,000のコネクションに渡ってコンテンツを発行/収集/複製することが可能なユーザー定義ポリシーもサポートされた。名前空間管理機能も大幅に改善され、サーバ/サイトのフェイルバック、最寄りのサイトへの照会、管理権限の委譲、帯域幅制限、優先順位の設定といった機能が追加された。複数のサイトにまたがるWindows Server 2000/2003 DFSのインプリメンテーションの管理に苦労してきたITマネジャーは、新リリースを歓迎するだろう。エンタープライズクラスの分散コンテンツ管理ツールのようなルック&フィールを備えているからだ。
あまり役に立たなかったFile Replication Serviceエンジンが新しいDFS Replication Engineにリプレースされたことも、多くのユーザーにとって朗報だ。新エンジンでは、WAN経由でのサーバとクライアント間のWindowsデータ転送が最適化される。またDFS Replication Engineは、圧縮アルゴリズムを用いて転送データのサイズを縮小するため、エンタープライズレベルのワークロードの複製にも対応できる。
さらにマイクロソフトは、WindowsベースのWAFS(Wide Area File Service)技術のプロバイダであるタシット・ネットワークスとも提携している。WAFS製品の魅力が高まっているのは、リモートオフィスのストレージを削除し、WANを通じて一元的データストアにリンクするリモートゲートウェイによってそれをリプレースすることができるからである。
マイクロソフトがリモートオフィス分野への参入を狙っているのは明らかだが、シスコシステムズ、IBM、ノベルといった既存プレイヤーに対抗するのは容易ではない。マイクロソフトはWindowsプラットフォームをITマネジャーに親しみのあるものにすることによって、競合製品の侵入から自社のプラットフォームを守るという、同社にとって最大の目標を達成する考えだ。これをユーザーの立場から見ると、分散型Windowsデプロイメントの管理機能の柔軟性が向上し、各種のリモートオフィス管理方式を組み合わせることが可能になることを意味する。
現時点ではそのように見えないかもしれないが、マイクロソフトはエンタープライズSANに本気で取り組むつもりだ。マイクロソフトははっきりとは言わないが、いずれエントリーレベルのSAN市場とIP SAN市場の方向性を支配しなければならないと考えているようだ。(データの作成からアーカイビングまでの)ストレージデータの流れを支配することができなければ、Windowsプラットフォーム全体の支配が脅かされることにもなりかねないからだ。
マイクロソフトが見せた最も戦略的な動きの1つが、「Storage Manager for SANs」ソフトウェアをWindows Server 2003 R2リリースに組み込んだことである。Storage Manager for SANsでは、WindowsベースのSANのプロビジョニング/構成/配備という差し迫った課題に対処することに主眼が置かれたため、その機能はエンタープライズ標準からすれば、まだ基本的なものにとどまっている。しかしStorage Manager for SANsは通常のWindows製品のように動作し、そして最も重要なことは、SAN管理をサーバプラットフォームの標準機能として位置付けたことである。
同製品は、APIを通じてマイクロソフトのVirtual Disk Serviceを利用し、Fibre Channel、iSCSI、DASをサポートする。ストレージオブジェクトの自動検出、ウィザード方式のプロビジョニング、iSCSIのセキュリティ構成といった機能も備える。だが制約も多い。マイクロソフトはSMI-S/CIMのサポートについて口を閉ざしている。異種ホストのサポートも不十分であり(UNIX/Linuxのホストバスアダプタ検出のみ)、アレイベースのレプリケーションもサポートしていない。このため、Storage Manager for SANsは、エントリーレベルのSANや小規模企業のIP SANのユーザーにしか役に立たない。
もちろん、マイクロソフトがストレージ管理分野の取り組みで狙っているのもその市場である。SAN製品の主流がまだ形成されていない現状を考えれば、これは賢明な動きといえるだろう。
2006年を通じて、今後もマイクロソフトからSAN関連の発表が相次ぐものと予想される。iSCSIのリモートブートがサポートされるほか、イコールロジックやレフトハンドネットワークスなどのIP SANベンダーとの流通パートナー契約が発表されるだろう。また2007年には、マイクロソフトがフォーカスを拡大してiSCSIをターゲットに含めることも十分予想できる。
結論的に言えば、マイクロソフトのSANおよびストレージ技術が成熟し、エンタープライズクラスの製品として市場に進出するとしても、それは2009年以降になるだろう。マイクロソフトが大企業市場で成功するかどうかは、データセンターの異種混在ストレージインフラに対応するつもりがあるのか、Windows Serverプラットフォームに安住することなく、より高度なストレージリソース管理を実現できるのか、といったことがキーポイントになりそうだ。
本稿筆者のブラッド・オニール氏は、米タネジャグループ(マサチューセッツ州ホプキントン)の上席アナリストである。
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