ゼンソースの製品などで注目の「準仮想化」について、リセラー向けにその潜在顧客や提供手段について解説する。
最近のIT関連のニュースでは、仮想コンピューティングの爆発的な普及について書かれた記事が驚くほど多い。仮想化の一種に「準仮想化」(PV:ParaVirtualization)と呼ばれる手法がある。PVは最近、技術として、またリセラーにとってのビジネスチャンスとして注目を集めている。
PVは、VMwareやMicrosoft Virtual Serverなどの一般的な仮想コンピューティングシステムとはやや異なる仕組みで動作する。任意のハードウェア構成を備えた仮想コンピュータを作成するのではなく、任意のマシンのハードウェアを複数のOSで同時に共有することを可能にするのだ。この手法は、従来のVM(仮想マシン)で可能な柔軟性を必ずしも提供しないが、はるかに少ないオーバーヘッドで動作し、準仮想化されたOSによってハードウェアを極めて効率的に利用できる。最新のプロセッサ構成であれば、PVソリューションは任意の既存OSを修正なしで利用することができる。
仮想化はかつて、非常にニッチな市場向けの技術であったが、成熟化が進み、徹底した研究が行われた結果、サーバ統合、テスト/配備、ハードウェアの再プロビジョニングといった重要なITタスクを実現するための数多くの強力な手法の1つとして受け入れられるようになった。リセラーの顧客に関して言えば、潜在市場は以下の3つのグループに大きく分類することができる。
仮想化が自社にもたらすメリットを理解しているITマネジャーは関心を示す一方で、導入と実装に伴う困難を避けたいと思うだろう。彼らは、自分たちの手を煩わせないできちんと仕事をしてくれる製品を求めているのだ。
ISP(インターネットサービスプロバイダー)やホスティング企業などがこのグループに含まれる。すなわち、リセラーが用意する環境で仮想化を直接利用するユーザーである。彼らは、導入してすぐに使える仮想マシンを求めるだけでなく、仮想化システム全体をできるだけ簡単に構成/プロビジョニングできることを望んでいる。このグループで重視されるのは管理のしやすさである。
仮想化ソリューション(あるいはそれに対応した製品)を開発あるいはテストするユーザー。このグループの場合も、彼らの苦労を軽減し、余計な手間を省いてくれるものが歓迎されるが、きめ細かなコントロールと詳細な情報を提供するようなものが求められるだろう。
これらのグループの間に明確な境界線は存在せず、各グループのユーザーの規模もさまざまである。従業員が100人いる企業に勤める開発者もいれば、社員が5人という企業の開発者もいるかもしれない。どの市場をターゲットにするのであれ、PVに求められる絶対条件は、きちんと機能することである。
ゼンソースでマーケティングを担当するジョン・バラ副社長は、次のように説明する。「顧客が求めるのは、パフォーマンスが高くて機能が豊富であると同時に、使いやすくて導入が簡単で、しかもIBMやヒューレット・パッカードなどの大手が提供する管理ソフトをベースとした既存の管理パラダイムに適合する仮想化ソリューションだ。彼らは、仮想化があらゆるサーバの機能として『ただそこにある』だけの目立たない技術であることを望んでいるのだ」。
PVをエンドユーザーに提供する手段は幾つか存在し、リセラーやチャネルベンダーにとってのビジネスチャンスもそこにある。
PVソリューションを、複数の任意のOSを動作させるプラットフォームとして販売できる。これはある意味で、コンピュータベンダーがOSを搭載していないシステムを提供するのにやや似ている――ユーザー側がそのシステム上で動作させるOSを既に持っているか、OSを別途購入するつもりであるのなら、OSが組み込まれたマシンを購入しない方が理にかなっている。同様に、PVプラットフォームを備えたシステムは、各種のOS構成を幾つでもエンドユーザーの裁量で組み込むことができる。
こういった構成を「PVスターターキット」として販売することもできるだろう。これは、既存のOS環境をほかのマシンから移行するための手段にもなれば、新たにOSをインストールするプラットフォームにもなる。経験豊富なユーザーや、単に何でも好きなようにやりたいというユーザーであれば、このような場合に時間を節約するためにPVソリューションがプリインストールされたシステムを求める可能性がある。
このような形態で販売されるシステムは、シームレスな移行プロセスを実現するために、高度に統合され、OSに依存しないツール(サードパーティー製もしくは専用に開発したもの)を多数バンドルすることで付加価値が高まるだろう。その好例が、デルのPowerEdgeサーバにバンドルされた「OpenManage」CDである(ほかにも多くのツールがバンドルされている)。このサーバを起動すると、ユーザーはサポートされた各種のOS構成を選択することができる。そしてサーバは、これらのOSのインストール用メディアを受け入れ、ハードウェア用ドライバを自動的に構成し、ディスクパーティショニングを行い、「ユーザーの介在なしに」OSをインストールしてくれる。ベンダーがPVユーザーのためにこういった作業を簡素化してくれるツールが提供するのはいい考えだが、PV開発者自身が既に提供しているツールと干渉しないことが条件だ。
ここで言う「組み込みソリューション」とは、スタンドアロン型ハードウェアに搭載されている組み込み型OSとは違う。ここでは、任意のホストOSに組み込まれたPVを意味する。
例えば、ノベルのSUSE Linux Enterprise Server 10(SELS 10)には「Xen」というPVソリューションが組み込まれている。SLES 10をコンピュータにインストールすることにより、ほかのOSを準仮想化することができる。このため、SLES 10を準仮想化ソリューションとしてバンドルすることも可能だ。その場合、ほかのOSも顧客の要望に応じてプリインストールするのもいいだろう。
また、移行を手助けするサポートオプションを提供することも検討する必要がある。すなわち、サポート技術者が既存の物理マシンから仮想環境への移行――いわゆる「P2V」(Physical-to-Virtual)マイグレーション――を支援あるいは実施するのである。これは、既存のサポートパッケージの一部として提供できるかもしれないが、顧客が従来のサポートプランの対象外のマシンも移行するためのオプションを求める可能性もある。こういった移行に対しては、マシン単位で追加料金を設定したり、期間を限定した定額料金を設定したり(例えば、1年間で50台のコンピュータまでとか、コンピュータ台数に制限なしで半年間など)することで対応できるだろう。
現在出回っているPVソリューションのうち2つは、リセラーにとって非常に魅力的なオプションを用意している。1つは、Xen PVパッケージの商用ディストリビューション「XenEnterprise」である。おそらくXenは現在、無償インプリメンテーション版と商用版ともに最も広範に認知およびサポートされているPVシステムであると思われる。XenEnterpriseには専用のP2Vマイグレーションツールが付属するため、XenEnterpriseを自社のPVシステムとして提供するベンダーは、すべて自前で用意しなくても付属のツールセットをそのまま利用することができる。XenEnterpriseを開発しているメーカーのゼンソースでは、リセラーがXenEnterpriseソリューションを独自に提供するためのパートナープログラムも用意している。
もう1つのソリューションは「Virtual Iron」である。それ自体は準仮想化ソリューションではなく、異なる技術を使用するのだが、準仮想化とほぼ同じ機能を提供し、各種のインプリメンテーション(ならびに無償の試用版)が用意されている。
本稿筆者のサーダー・イェグラルプ氏は、Windowsネットワーク管理者向けのアドバイスやコラムを掲載したWebサイト「Windows Power Users Newsletter」の編集者である。
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