Column
内部統制に欠かせないロール管理を成功させるには
社内のロール管理は、慎重に策定・実施しなければならない。ここでは、ロール管理プロジェクトの4段階プロセスを提案する。
厳格な権限管理はコンプライアンスの重要な要素であり、このプロセスでは全社を通じて従業員の役割(ロール)に基づいてアクセス権を与えるシステム(ロールベースのアクセス管理)が必要とされる。このため、コンプライアンス問題が、投資効果の原則だけでは割に合わない個人認証プロジェクトを推進する原動力になっているというのも驚くにあたらない。
コンプライアンスをめぐる課題に対処する上で、ロール管理は必要な内部統制を策定するためのベストプラクティスとして広く認識されている。問題は、ユーザーの役割が変化し、新たなシステムにアクセスするようになった場合である。企業は一般に、こういったユーザーに必要なものを与えるのは得意だが、必要でなくなったものを回収するのは不得手である。この問題が、ロール管理の普及を促す要因となっている。
コンプライアンス問題
業界では、ロール管理のためのコンプライアンス指向のベストプラクティスを幾つか開発した。それらは以下の目的にフォーカスしたものである。
- 企業のITリソースへのアクセスは、組織内での役割に応じて厳密に規定された従業員のニーズに対して許可すべきである
- 企業は、権限のあるユーザーだけがセンシティブな情報にアクセスできることを確認しなければならない
- 業務プロセスにおける一般的な制約(役割分担など)を適用しなければならない
- アクセス権限の定期的評価を実施しなければならない
ロール管理は、組織内での従業員の役割に基づいて、センシティブなデータへのアクセスを効率的に管理するのに必要なフレームワークを提供する。このためロール管理は、コンプライアンス指針に対応する上で効果的なツールとなる。
ロール管理のプロセス
社内のロール管理は、慎重に策定・実施しなければならない。筆者は、以下の4段階プロセスを提案する。
1. 調査
- 既存のITプラットフォームにおける権限を分析する。既存のアクセス権の質を特定し、数値化する
- ロールを定義する。これは、全員のアカウントを割り当てるのに次いで2番目に困難なタスクである
- すべての部門長と会い、あらゆる職務のロールを定義する。同じロールであっても、部署によってその定義が異なることに気付くだろう
- ロールベースのアクセスをサポートしないアプリケーションを探し出す
- 起こりうる混乱を予測する
- 潜在的なコンプライアンス違反を探し出す
2. 計画
- ロール管理の準備をする。各種のロール管理やIAM(Identity and Access Management)ソリューションの計画・評価を行う
- 緊急性とデータの機密性に基づいてシステムとプロジェクトタスクの優先順位を決める
- 個々のプラットフォーム上での権限の審査・整理を行い、その構造を簡素化する
- ロールとビジネスプロセスルールとのバランスを図る(職務の分割など)
3. 導入
- ビジネスプロセス指向でロールベースのプロビジョニングポリシーを策定・導入する
- プロビジョニングシステムに導入する最初のビジネスロールセットを作成する
4. 監査
- プロビジョニングポリシーの監査を定期的に実施する
- 業務の変化に合わせてロール定義の修正・最適化・適合化を行う
- 業務マネジャーとともにロール権限の更新を審査する
- 権限のテストを自動化する
- コンプライアンスを確認する
各ビジネスプロセスとそれに関連したロールを評価する期間として、それぞれ2~3カ月見込んでおくこと。既存のアプリケーション、システム用のコネクタを作成するのに、さらに1カ月ほど必要になるだろう。データリポジトリとそれにアクセスする必要があるロールを関連付けるのに6カ月かかったという企業もある。これは退屈な作業のように思えるかもしれないが、この調査はプロジェクトの成功に不可欠なのだ。「計画を立てないことは、失敗を計画することと同じである」という格言は、まさにロール管理プロジェクトに当てはまる。
ロール管理プロジェクトでは、技術が障害になる可能性は低い。むしろ障害になるのは、企業のビジネスプロセスの方だ。とはいえ、ロール管理製品はまだ複雑で使いにくい。市場は未熟で、ベンダー各社も自社自身のビジネスプロセスを改良しているような段階だ。
ロール管理製品を導入する取り組みは、コンプライアンス指針に対応する上で不可欠である。それゆえ、コンプライアンス指針に対応するための作業は、ビジネス効率の改善にもつながるのである。
結論
この種のプロジェクトでは一般に、ロールの作成は時間のかかるプロセスとなる。しかし、この作業を自動化するのに役立つツールも出回っている。ロール管理プロジェクトを成功させるポイントは、慎重に作業を進めること、常に業務部門と話し合うこと、プロジェクトの目的と成功の条件をエンドユーザーと経営陣に伝えること、そして技術だけでなくビジネスプロセスにもフォーカスすることである。このプロジェクトが従業員の仕事のやり方を変えるものであることを決して忘れてはならない。プロジェクトの目標を従業員に示し、彼らの期待に応えなければならないのである。
本稿筆者のトム・バウアーズ氏は、CISSP(公認情報システムセキュリティプロフェッショナル)、PMP(プロジェクトマネジメントプロフェッショナル)、Certified Ethical Hacker(公認倫理的ハッカー)の資格を持ち、データ漏えい防止、グローバル企業の情報セキュリティアーキテクチャおよび倫理的ハッキングなどの分野で有名な専門家である。バウアーズ氏は、独立系シンクタンクで業界アナリストグループであるSecurity Constructsの業務執行ディレクターという肩書も持つ。同氏の専門分野は、ビジネスニーズとセキュリティアーキテクチャの連携、リスク評価、グローバル規模のプロジェクト管理など。
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