テープとディスクは、バックアップの要件によってそれぞれ向き・不向きがある。そこで、それぞれの長所をうまく組み合わせて構成したバックアップ方式が「D2D2T」(Disk to Disk to Tape)だ。
前回「“テープバックアップ”はもう時代遅れなのか?」では、データのバックアップを行う際に使用する代表的なメディアとしてテープとディスクの2つを取り上げ、それぞれの長所と短所を説明した。テープは低コストであること、そして古くから利用され「こなれた」技術であることから、これまでバックアップとアーカイブの分野で広く一般的に利用されてきた。一方、ディスクはテープよりパフォーマンスも信頼性も高いが、その分導入コストも高くなる。
今回は、具体的にバックアップシステムの導入を検討する際にキーとなる判断基準を幾つか取り上げ、今回のキーワードである「D2D2T」(Disk to Disk to Tape)バックアップがどのように適用できるかを整理してみたい。
バックアップ対象のデータが大量の連続データなのか、それとも通常のファイルサーバに保管されるような非連続データなのかによって、テープとディスクの使い分けを行う。大量の連続データだけをバックアップするのであれば、テープでも問題ない。しかし、一般的に企業の社内システムではファイルデータを中心にさまざまなタイプのデータが存在するため、ディスクバックアップの方が適しているといえよう。
例えば、ファイルサーバ上にあった個人のファイルを誤って消去してしまい、そのファイルだけをリストアしたいというケースを考えてみよう。テープバックアップの場合は、そのファイルをバックアップしたテープをドライブにマウントする必要があり、またそのファイルが記録されたポジションまでテープを巻き取るなどの手間が発生してしまう。一方、ディスクの場合はそのような手間は発生せず、すぐに欲しいファイルをリストアすることができる。差分・増分・重複除外などのバックアップを頻繁に行う場合もディスクの方が手間が少なく、リストアも容易である。
バックアップ対象のデータが、どれだけ重要なものなのかを見直してみよう。もちろん、データごとに重要度は異なり、それぞれに適したバックアップ要件がある。
重要度が高い場合は、単にデータをバックアップするだけではなく、別途コピーを保管するなどして、障害から起こるデータの消失を防がなくてはならない。この場合、システムから一度メディアにバックアップするだけでは事足りない。また、別途バックアップ環境の信頼性を上げることも重要である。ディスクであればRAID構成、冗長コンポーネント、ミラーリングなどのテクノロジーを使用して、テープでは実現できない信頼性を確保することが可能である。
一方テープの利点は、メディアに可搬性があるため比較的容易に遠隔地にデータを保存できる点にある。ディスクのみでバックアップを行った後に、遠隔地へデータをコピーするには、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、システム構築/運用などのコストが掛かるが、その点テープなら、メディアの運搬と保管設備のコストで済む。ひとまず安価に災害対策に備えたい場合には、テープは有力な選択肢となるだろう。
そのほか、万が一問題が発生した際のデータ消失の影響度合いを考慮し、バックアップを取る頻度も検討が必要だ。ディスクを使うとバックアップ時間の短縮が期待できるので、頻度を上げるのに有効である。もちろん、バックアップの頻度を上げれば、万が一の際に失われるデータの量を少なくすることができる。
重要度とは別に、障害やデータ消失の際にどれぐらい早くデータを元に戻さなければならないかを考えよう。
個人が作成した文書ファイルの中には、確かに大変重要なものもあるだろうが、もしそれらのデータが消失したとしても、バックアップさえ取ってあれば元に戻すタイミングはそれほど急を要しないことがほとんどだ。そのようなたぐいのデータであれば、テープに保存して倉庫などに保管することでも対応できる。
一方、オンラインシステムのデータは即時性が求められるので、障害発生時には緊急に復旧させる必要がある。そのような場合、ディスクバックアップはある程度高い要求に応えることができる。しかしテープバックアップの場合、データを復旧する際に複数のテープにまたがったデータをまとめなければならなかったり、場合によっては遠隔地の保管倉庫にあるテープが必要になる可能性もあるなど、ディスクと比較して復旧時間を多く必要とする。
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